旅と暮らし

ボージョレ・ヌーボーの概念を超える、エレガントなミネラル感
ボージョレ・プリムール・セレネ2018
[今週の家飲みワイン]

2018.12.07

写真・図版 小松宏子

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これまで5カ月にわたり、ワインの産地としてはまだその魅力があまり知られていない国の品を紹介してきたが、今月は時節柄、フランスのボージョレ産のワインを紹介しよう。
ボージョレは、日本においてはヌーボーが商業ベースで有名になりすぎ、大量生産によるワインが多く入ってきたために、本来のワイン産地としての魅力が伝わっていなかった。それは大変に残念なことである。実は、ボージョレは、ブルゴーニュ地方と切り離して語るべき、世界最高の赤ワインの産地のひとつ。自然派のワインの聖地とも呼ぶべきエリアで、新旧両方の世代に自然派ワインの素晴らしい造り手がいることが何よりの魅力だ。

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1本目はシルヴェール・トリシャールが造った今年のボージョレ・ヌーボー。ヌーボーはリリースの期限が厳格に決められていて、それを過ぎるとヌーボーを名乗れない。そのため大手メーカーのなかには、期限内に出荷するために、化学薬品などを使用して発酵を進めるところもあるそうだ。自然に任せたワイン造りでは、期日に間に合わない可能性もあるのだという。ところが、シルヴェールはそのリスクを負いながらも、頑なに自然な造り方にこだわっている。例えば、本格的な醸造の前に少量のワインを先に仕込んで、それを種酵母として、発酵を促進させる“ピエ・ド・キューヴ”という手法を実践している。こうして先人の知恵を大切にしながら、昔ながらのワイン造りに取り組んでいるのだ。

「醸造期間が短いということは、シンプルにフレッシュなぶどうの味わいが楽しめるということでもあるのです。なぜなら、熟成による変化が起こっていないから。ボージョレ・ヌーボーは本来そうあるべきなのに、化学的なワインが出回っていることはとても残念なことです。このプリムール・セレネは、ひと口飲むとぶどうのエキスが体中に染み渡るようです。フレッシュで軽やかな味わいのなかに、ピュアで心地よいミネラル感が残り、しっかりとした骨格があるのに、とてもエレガントです」と梁さん。

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造り手であるシルヴェール・トリシャールは叔父が醸造家で、子どもの頃からビオディナミでのぶどう造りを見て育ち、畑を譲り受けて自らのワインを造りはじめてからも、当然の流れでビオディナミでぶどうを栽培している。“セレネ”とはギリシャ神話に登場する「月の女神」のこと。日本の入れ墨が好きだというシルヴェールは、セレネをタトゥのように描いたラベルをトレードマークにしている。それはまた、昔ながらのおいしさのワインを造りたいという思いの表れでもあると言う。ボージョレ・ヌーボーのイメージを覆すためにもぜひ、味わってもらいたい一本だ。

<<ゲルヴェリ ハサン・デデ・キュップ

  レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュ2016>>

Photograph:Makiko Doi

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