旅と暮らし
映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』から垣間見える
予期せぬハプニングを希望に変える心の在り方
[美しき映画ソムリエ]
2018.12.20
「男泣きした……!」とシリーズ1作目が公開当初、話題となったシュガー・ラッシュというディズニー映画をご存じですか?
日本でも興行収入30億円を超える大ヒットを記録しましたが、ビジュアルがあんまりにも愛らしいので、バリバリ働く世の男性たちは「オレたちの映画じゃない!」と鑑賞のチャンスを逃している方が少なくないかもしれません……。
でも実は、萌(も)え……とも言いたくなるようなカラフルで愛らしさ”全部のせ”的なビジュアルとは裏腹に超骨太な人間ドラマが展開される映画なのです。
早速、1を観てない方に、簡単に主要キャラクターの説明をさせていただきます。
まずヒーローに憧れながらもゲームの悪役キャラクターを務めなければならない心優しきラルフ、そしてレースゲームで仲間外れにされていた少女ヴァネロペ。
ふたりが主人公のゲームセンターに置かれたゲーム機の中の世界で生きるキャラクターたちの友情モノが1作目でしたが、今作ではゲームの世界での危機を救うため、そんな凸凹コンビがなんでも夢がかなうというインターネットの世界に飛び出していくのです。
さて、ここで質問。
自分の行動やミスが予想外の大きな事件に発展してしまったとき、あなたはどうしますか?
私は社会人経験を経たあと、映画ソムリエとして独立しました。
ひとりで知らない世界に飛び込んだせいで、ここには書けないような残念すぎるミスをたくさんしてしまったことも。
あのときこうしていればと、いまでもそのときのことを思い返すと胸がチクリと痛むわけですが……。
まあそんなトラブル発生後の人の対応には、決まった定形パターンがあるんですよね。
まず、第一に狼狽(うろた)える人。要は、慌てたり、パニクる人ですね、
続いて、謝るだけで何もできない人。
次に、自分の保身だけを必死に考える人。
最後に、自分の非を認め解決しようと努力する人。
大まかに言うとこんなパターンに分かれていると思います。
ちなみに私は、狼狽と謝罪、からのちょっとだけ人のせいにしようとしたり、その場をどうにかずる賢くやり過ごそうとしている、根本的な解決のできない人間だったりするのです……。
映画の後半、ラルフのちょっとした嫉妬から生まれる行動により、平和だったオンラインの世界において平和を揺るがすハプニングが起きてしまいます。このときのラルフが最終的に取る行動は、ピンチのシチュエーションをチャンスに変化させ、結果的に人間関係をいい方向に昇華させる秘訣(ひけつ)が隠れていて参考になりました。
それにしても「ピンチをチャンスに」の意味を含む名言や標語、多少言い方は違えどよく耳にする言葉ですが、実際なかなかそのように変換方向に持っていくのは難しいですよね。
でも映画から垣間見えるのは、ピンチをチャンスにする際に、同時に必要なマインドがあることを学ぶことができます。その心の持ち方とは、「過去と他人は変えることができない。変えれらるのは、自分自身と未来だ」と強く自分に言い聞かせて問題解決に挑むこと。
ピンチをチャンスに変えるためには、思考の合わせ技が重要だったりするんだとラルフの考え方から学びました。
また、人というのは、トラブルを乗り超えようとするときに、自分が持っている真の力が発揮されるものだったりします。
国民栄誉賞の授与が決まったアイススケートの羽生結弦選手も「トラブルだって、いいきっかけになるんですよ」とインタビューに答えていましたが、改めてトラブルのない人生が理想ではありますが、起きたときには焦らず、心のどこかでうまく処理できたら新しい扉を開くかもしれないなと、どんと構えているのもアリだと思えますよ。
それでは最後に映画のもうひとつの最大の見どころについても言及させてください!
それはズバリ、ディズニーアニメーションで描かれたインターネットの世界の映像化です。いま、あなたが見てるスマホやパソコンの中の世界、それを見事に作り上げているんですよね。
実在するインターネットの有名サイトAmazon、Twitter、Googleなどの看板が並ぶカラフルな街並みが延々と続く世界や実在するオークションサイトで商品を購入する流れをストーリーに取り入れている様子を見ていると、「スマホの中にはこんな世界が広がっているのか!」と驚きながらも、NHK「小さな旅」を見ていると、行ったことのない田舎の風景が知ってる場所のように思えてくる……あの感覚に通ずる何かを感じました。
語るまでもないほどのおおいなる利便性と同時にネットは知らないうちに誰かの心を傷つけていたりするというマイナス面もあったり。
私たちのすでに日常の当たり前になっているネットのあるあるや、魅力的で壮大な世界観をすべてに取り込み映像化された、この初めましての魅惑のワンダーランド。想像力も刺激されるので、一度のぞいてみる価値あると思います。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
公開日:12月21日(金) 全国公開
監督:リッチ・ムーア&フィル・ジョンストン
脚本:フィル・ジョンストン
製作:クラーク・スペンサー
声の出演:ジョン・C・ライリー サラ・シルヴァーマン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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