特別インタビュー
“モノ消費からコト消費へ”
アソビュー株式会社 山野智久代表取締役社長インタビュー[後編]
2019.01.23
![“モノ消費からコト消費へ”<br>アソビュー株式会社 山野智久代表取締役社長インタビュー[後編]](http://p.potaufeu.asahi.com/3b75-p/picture/14857980/fd0a19e407a5262c6cc7a0e18b0d7726.jpg)
2011年、山野は27歳でアソビューの前身となる株式会社カタリズムを設立した。メンバーは自身を含めて3人。だが、1年も経たず創業メンバーは空中分解してしまう。
「方向性の違いで2人とも辞めてしまいました。余暇の遊びや体験を紹介する『アソビュー』の構想はできていましたけど、その時点ではサイトはない。世の中にないビジネスでしたので営業する際の説明も難しい。ないない尽くしで怪しさしかないという状態です(笑)。電話を掛けても途中で切られてしまったり」
そこで現地に出向くことにした。ドアノックすれば話だけは聞いてもらえた。しかし、「掲載させてほしい」と言えば「なんか怖い」と返ってくる。いったんは辞去したが山野は一升瓶を抱え、再びその会社を訪れた。
「一緒に飲んで、僕を信用できると思ったら申込書を書いてもらえませんか?」。面白い奴が来たと評判になり、ほかの会社も集まってきた。そうやって一件、一件。その積み重ねが、現在の約6500事業主との提携へとつながっていく。
世界中の誰もが楽しく遊べる仕組みを
![_DSF7121](http://p.potaufeu.asahi.com/492b-p/picture/14857982/88b19345445683c4af6bdf574b1ecbb9.jpg)
2012年の夏に予約サイトを立ち上げた。2013年の秋を迎えるころには山野自身、手応えを感じるようになっていた。サイトで紹介するプランの数は倍々速で伸び、ユーザーの申込件数も2年間で35倍にもなった。2014年3月にはグロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコから2億円の増資が決定。さらに1年後にはJTBとの資本業務提携を発表するなど社会的な認知度を高めていった。アソビューに社名を変更したのもその前後のことだ。
「遊びのカテゴリーで事業というと、ふざけていると思われるかもしれません。だけど、僕たちはすごくマジメにやっているんですよ」
山野は言う。会社のミッションは「ワクワクをすべての人に。」それをさらに広げるために、いまは内外にも目が向いている。
「事業の半分は旅行業界に属しています。旅行業界には航空券などの移動分野、ホテルなどの宿泊分野、そして、僕らが手掛けるようなツアー&アクティビティーと呼ばれる第三の分野があります。移動と宿泊はEC化率が50%に迫る勢いですが、ツアー&アクティビティーの分野はたったの5%です。要はいまが勃興期なんですね。これから、さまざまな企業の参入があり、レジャー施設側のITリテラシーの向上と相まって市場も大きくなっていきます。インバウンドの外国人ニーズも予測されるなか、クロスボーダー化は会社の使命ですね。国や地域を問わず、全世界の誰でもどこでも楽しく遊べる仕組みを作っていきたいんです」
![_DSF7091](http://p.potaufeu.asahi.com/be99-p/picture/14857981/63e80638cffb9d2c2f1d41614111189f.jpg)
“モノ消費からコト消費へ”と言われるなか、2017年には体験や思い出を贈る「asoview! GIFT」もスタートした。昨年末は「SHIBUYA TSUTAYA」と提携し、同サービスの販売および店頭でのワークショップ開催を行った。
「ギフト市場は10兆円とも言われています。けれど、消費者目線で考えるとワンパターンになっている気もします。結婚式ではお皿をもらって、母の日になるといったい何回目になるかわからないカーネーションを贈ったり。花は枯れるし、モノはもう要らないとなったとき、思い出だとか何か記憶に残るものをあげるのもいいんじゃないかと。恋人からバッグをプレゼントされるより、記憶に残るような体験を一緒にしたい女性もいるはず。モノやスペックを買う時代からストーリーを買う時代に変わるなか、僕らが演出できることはたくさんあるのではないかと。その意味でも非常に期待している分野です」
人生ワクワクするのが勝ち、楽しんだほうが勝ち
![_DSF7136](http://p.potaufeu.asahi.com/7bc7-p/picture/14857983/8f5361cd7fb72bd1ef30d708ad7e9639.jpg)
昨年、35歳になった。
「いい歳になってきたなと。この年代って自分の得意な分野であったり、何が心地いいのか、自分らしくいられるのかとか自分なりに定義できるようになる頃合いじゃないですか」
私生活での楽しみは、4歳になる娘と週末に出かけること。自社サイトをチェックしながら、スパ施設に出かけたり、カヌーに乗ったり。プライベートの憩いのひと時だという。
「経済合理性のなかで仕事をしていると『こうでなければならない』みたいな観念にはまりがちです。でもそんな観念どおりに生きていくより、人生は一度きりですし、自分の才能を見つけ、そしてそれを伸ばして生きていくことが大事なんだって最近すごく思うんですよ」
ベンチャー企業で言えば「上場後の時価総額はいくらか?」で物事を語られる。「好きなことで起業をする」と言えば成長意欲がないとされたり。そんな社会の在り方にずっと疑問を感じてきたとも。
「大事なのはそこじゃないんですよね。やっぱりワクワクするのが勝ち、楽しんで勝ちだと思うんです。アソビューという会社を通して社会に伝えたいことのひとつでもある。自分らしい働き方を選んでいい、もっと自分の好きなことをしていい。僕らの会社が社会的に活躍すればするほど、変えられることでもあると考えています。大きな声で『楽しんでいいんだよ!』と伝えていきたいですね」
![_DSF7141](http://p.potaufeu.asahi.com/d0e1-p/picture/14857984/83b25563a017770008ed81ad29a883a4.jpg)
プロフィル
山野智久(やまの・ともひさ)
1983年生まれ。明治大学法学部卒業。学生時代に千葉県柏市の地域情報を発信するフリーペーパーを創刊。累計30万部を発刊した。2007年株式会社リクルート入社。コンサルティングや新規事業の立ち上げを経験した後、2011年に独立。アソビューの前身となるカタリズム株式会社を設立。日本最大の遊びのマーケットプレイス「asoview!(アソビュー)」を運営する。
Photograph:Kentaro Kase
Text:Mariko Terashima
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