腕時計
SIHH2019 ジュネーブサロン・リポート
ヴァシュロン・コンスタンタン
2019.02.08
高級時計の新作がいち早く出そろう、毎年恒例の国際展示会・SIHH(ジュネーブサロン)がスイスで1月14日から17日まで開催された。ラグジュアリー感あふれる落ち着いた雰囲気の会場に、約2万3000人が来訪したという(主催者発表)。このSIHH2019から、主要ブランドの動向と、魅力的な新作をピックアップして紹介する。
超複雑時計とブルーダイヤルの華麗なる共演
ヴァシュロン・コンスタンタンの最高峰に位置する「レ・キャビノティエ」コレクションが、今年のSIHHで一気に大輪の花を咲かせた。顧客のビスポーク(特別注文)に応える部門では、2015年に「史上最も複雑な機械式時計」を開発して世界的な話題となったが、メゾン主導のユニークピースも手がけており、今回の3本の超絶的な複雑モデルが発表されたのである。
音で時刻を知らせるミニッツリピーターにトゥールビヨンと天空図を搭載した「ミニットリピーター・トゥールビヨン・スカイチャート」、ミニッツリピーターに永久カレンダーの「ミニットリピーター・パーペチュアルカレンダー」、そして15種類もの複雑機構を備えた「グランド・コンプリケーション・フェニックス」。
さらに、虎とパンダを浮き彫りやマルケトリー(木材の象嵌[ぞうがん]技法)などで表現した「メカニック・ソヴァージュ(機械式&野生動物)」もラインアップ。いずれも世界1本限定で(色違いもあり)、価格も「要問い合わせ」だ。
レギュラーモデルにおいても、この高度な技術力を発揮した独創的な複雑時計「トラディショナル・ツインビート・パーペチュアルカレンダー」が登場した。一般的な機械式時計のテンプは毎秒3~4Hzで往復振動するが、このモデルはロービートとハイビートの2つのテンプを搭載(タイトル写真)。
腕に着用しない場合は1.2Hz(毎時8640振動)のロービートを選ぶことで、一杯に巻いた状態で放置しても65日間以上動きつづける。「スタンバイ・モード」とも呼ばれることから、いわば最少限のエネルギー代謝で生きつづける熊の冬眠のような状態と言えるかもしれない。
腕に着用する場合は、8時位置のケースサイドにあるボタンで瞬時に切り替えられる5Hz(毎時3万6000振動)のハイビートを選択する。高速で回るコマが倒れにくいように、姿勢の変化などによる外的な影響を受けにくいので、アクティブに使い込んでも高精度を維持できる。この仕組みは、ゼンマイを巻き忘れて止めてしまうと自動送りの日付などの調整が面倒なパーペチュアルカレンダーのために考案されたのだが、まさに「パーペチュアル=永久」の語義に近づけた、実用性の高い世界初の新機構ではないだろうか。
2016年にリニューアルされて高い人気を誇る“旅行者のための時計”「オーヴァーシーズ」にも、高度な複雑機構であるトゥールビヨンを初めて搭載。今年のヴァシュロン・コンスタンタンはコンプリケーション満開の印象を受けるが、ブルーダイヤルが急増したことも際立った特徴だ。前述の「オーヴァーシーズ・トゥールビヨン」がブルーなら、「オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」にも初のブルーダイヤルを追加。
昨年に登場した新コレクションの「フィフティーシックス」でも、自動巻きセンター3針とコンプリートカレンダーの2タイプでグレーがかった濃いめの“ペトロールブルー”ダイヤルが採用された。メタリックな輝きのケースと18Kホワイトゴールドのインデックスと針によって、クールな気品を感じさせる。
1950年代のモデルに着想を得て、完璧なラウンドシェイプにミニマルな機能美を究めた「パトリモニー」3タイプにも“マジェスティックブルー(ミッドナイトブルー)”を追加。ダイヤルに放射状の微細な線条を施したサンバースト仕上げによって、鮮やかな印象を与える。
ブルーはダークスーツにも違和感なくフィットするだけでなく、華やかさも加えてくれるカラーだが、このように色みや彩度はモデルによってかなり異なる。店頭で服装と合わせながら、お気に入りのブルーを選択していただきたい。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
問/ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。