接待と手土産
すべて実食! 自慢の手土産。#18
「加島屋」のいくら醤油漬・さけ茶漬
2019.02.18
贈られた人が、次の贈り手になる。人から人へと伝えられる老舗の逸品
「加島屋」を初めて知ったのは、もう20年以上前になる。上司に同行した会食の手土産としていただいたのが「いくら醤油漬」と「さけ茶漬」の詰め合わせだった。それをきっかけにヘビーユーザーとなり、それは今も変わらない。会社を訪問する時は基本的に生ものを避けるため、先方が会社に戻る予定のない、主に会食の際の手土産に使っている。
加島屋の商品は、年齢を問わず、男女も問わず本当に喜ばれる。高級感があり、160年以上守り続けてきた老舗の安定感がある。中身もパッケージもどんどん進化し、モダンでおしゃれな商品が氾濫するなか、初めて手にした時からほとんど変わらないルックスもいい。風情のある紺と白の紙袋を見ただけで、にんまりする人もいるくらいだ。
何よりも感動なのが、そのおいしさ。冷蔵庫に加島屋のイクラやサケが入っているだけでうれしくなる。ご飯のお供にも、酒のつまみにも、どちらでもいける。いただいたその日から毎日の食卓が楽しくなる。
「たらこ茶漬」や「数の子べっ甲漬」、「貝柱のうま煮」など、他にも魅力的な商品がいくつもあるが、筆者は決まって「いくら醤油漬」と「さけ茶漬」の瓶詰めをセレクトする。つやつやとした大粒のイクラが口の中でプチプチとはじけ、うまみたっぷりのエキスが口いっぱいに広がる。しょうゆの味付けが濃すぎず、薄すぎず絶妙で、白いご飯にのせると何膳でもお代わりできてしまうのだ。
看板商品ともいえる「さけ茶漬」は、柔らかさとしっとり感が絶品。サケの王様といわれるキングサーモンのみを使用し、手作業で塩をすり込んだあと、紙に包んでじっくりと熟成させる。うまみが引き出されたサケを、強火の遠火で焦げ目がつくまでこんがりと焼く。それを熱々のうちに皮や骨を取り除き、ほぐした身だけをスプーンで瓶に詰める。ここまでが全てが手作業で行われるのだ。時間をかけ、手間暇を惜しまずに作り上げた、サケのおいしさがぎゅっと詰まったまさに逸品だ。
話は戻るが、会食で同席した方は、その後もずっと加島屋の「いくら醤油漬」と「さけ茶漬」を手土産に使い続けた。月日が流れ、その方と会う機会もなくなったが、加島屋のイクラとサケは、今でも筆者の定番の手土産のままだ。もらってうれしかった手土産を、別の相手に贈る。贈られたその人も気に入って、また他の人に贈る。そうやってずっと受け継がれていく名品なのだ。
加島屋 伊勢丹新宿店
東京都新宿区新宿3-14-1
営業時間/10:30〜20:00
定休日/百貨店の休業日
価格/さけ茶漬・いくら醤油漬ビン詰2本セット5,292円
問/03-3352-1111
※都内では他に、銀座三越、西武池袋本店、髙島屋日本橋店、東急百貨店東横店など。価格は税込み。
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Styling:Keiko Katanozaka
Edit & Text:Mayo Morino