腕時計
SIHH2019 ジュネーブサロン・リポート
A.ランゲ&ゾーネ
2019.03.05

高級時計の新作がいち早く出そろう、毎年恒例の国際展示会・SIHH(ジュネーブサロン)がスイスで1月14日から17日まで開催された。ラグジュアリー感あふれる落ち着いた雰囲気の会場に、約2万3000人が来訪したという(主催者発表)。このSIHH2019から、主要ブランドの動向と、魅力的な新作をピックアップして紹介する。
「ランゲ1」25周年。記念モデルに加えて限定モデルも毎月リリース!
時計ファンも瞠目(どうもく)する画期的な複雑時計を毎年発表。SIHHの話題をリードしてきたドイツの名門ブランド、A.ランゲ&ゾーネの新作は、「25」「10」そして「1」をキーワードとしている。
まず「25」は、ブランド復興後の第1号コレクションのひとつ「ランゲ1」が今年で誕生25周年。これを記念した「ランゲ1“25thアニバーサリー”」を意味する。アウトサイズデイト(大型分割式日付表示)やオフセンターのダイヤルなど、のちの時計づくりに大きな影響を与えたモデルであり、2015年には日付表示を瞬転式にするなど大幅に改良した新ムーブメントを搭載したが、ダイヤルフェイスはほとんど変わっていない。
世界250本限定の記念モデルはシルバーカラーとブルーのコンビネーションが特徴。一段低くすることで境界を明確にした時分計に、ディープブルーでローマ数字とインデックスをプリント。アウトサイズデイトの日付も同色で合わせているほか、針も高級時計のシンボルともいえるブルースチール。さらに、1873年に完成したランゲの時計工房が彫り込まれた裏側のカバーを開ければ、サファイアクリスタル越しに25日を示すアウトサイズデイトを小さく彫り込み、特別にブルーに着色したテンプ受けが見られる。
それだけでなく、今年10月まで毎月それぞれ異なった記念限定モデルを追加する予定であり、すでに2月に第2弾としてムーンフェイズ搭載モデルが発表された。前代未聞のアニーバサリー・シリーズと言うほかないが、そんな驚きを可能にする高度な技術力を有するブランドなのである。

機械式にもかかわらず、数字のディスクで時間と分を表示するモデルが初めて発表されたのは2009年。それから「10」周年を迎えたことから、新開発の自社製キャリバーを搭載した「ツァイトヴェルク・デイト」がデビューした。ダイヤル外周にガラス製の日付リングがあり、その日の数字が赤色で表示される。針はダイヤル上部のパワーリザーブ表示と下部のスモールセコンドの2本だけ。時間と分と日付がデジタル表示になっていながら、格調高い古典主義を貫いたデザインが魅力だ。

そのほか、A.ランゲ&ゾーネが専用使用権を持ち、硬度が高く耐久性に優れたハニーゴールドケースに永久カレンダーを搭載した「ランゲマティック・パーペチュアル・ハニーゴールド」と、トゥールビヨンにフライバック・クロノグラフと永久カレンダーを搭載したグランドコンプリケーション「ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン」がそれぞれ100本限定で製作される。これは「25」と「10」にならえば「100」と言えるだろうか。
では「1」とは何か。ランゲでは年内にまったく新しいコレクションを発表する予定であり、これが数え年で「1」になるという。果たしてどんなモデルがベールを脱ぐのか、夏過ぎの動きにも大いに期待したい。

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問/A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。