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FASHION VIEW
2019 AW PITTI IMMAGINE UOMO 95
イタリアン トラッドの現在。【コート編】
2019.04.01
第95回〝ピッティ・イマージネ・ウォモ〞(以下ピッティ)が、1月8日から11日にかけてイタリアのフィレンツェで開催された。会場であらためて感じたのは、イタリアファッションの豊饒さだ。同じ国であっても北と南ではスタイルが大きく異なる。どうして地域ごとの違いが生まれ、収斂(しゅうれん)することなく、共存共栄するのか。そうした多様性にこそ人々を惹きつけるイタリアファッションの魅力があるのではないか。
<NORTH>
HERNO(ヘルノ)
昨年、創業70周年を祝したヘルノは、いよいよ次のステージに向おうとしている。そんな熱気を感じさせたのが、ラミナーコレクションを独立展示した特設ブースだ。テーマに掲げたのは“サルトリア・エンジニアリング”。高機能アウターであるラミナーのハイパフォーマンスに、洗練されたサルトリアのスタイルを組み合わせた。
「伝統とテクノロジーの融合はファッションでも時代の潮流であり、私たちはそのパイオニアとしてこれまで以上に強化していきます」とヘルノCEOのクラウディオ・マレンツィ氏。
発祥地を流れるエルノ川にブランド名が由来するヘルノのモノづくりには、地元の自然や文化が根差す。こうした地域によって異なるイタリアのファッションの多様性についてこう語る。
「南はサルトリア文化であり、伝統的で昔ながらの技術を大切にします。一方、北は50~60年代以降のインダストリアルな技術が中心という違いがあります。でも独立したふたつの存在がうまくミックスしているのがイタリアファッションの強さの秘密でしょう」
国内の業界団体でも要職に就くマレンツィ氏の慧眼であり、それはサルトリア・エンジニアリングというキーワードからも見てとれるのだ。
<SOUTH>
HEVO(イーヴォ)
イタリアファッションの多様性を象徴するのは、いまプーリアかもしれない。伝統的な南イタリアとは異なるスタイルが生まれ、ブランドによってそれぞれ独自の個性を競う。そんな新進ブランドのひとつがコートやアウターを専業にするイーヴォだ。CEOのマウロ・ジャンフラテ氏に話を伺った。
「ファクトリーとしては70年の歴史があり、これまで培った技術やノウハウを生かし、2010年にオリジナルブランドを立ち上げました。ブランド名も進化や発展を意味するエヴォリューションと、感性や感情を呼び覚ますエヴォケーションからの造語です」
その名のとおり、トレンドを採り入れたオーバーサイズは、ゆったりと着心地も優れる。印象はモードに近いが、一過性のトレンドを追う気負いはない。
「サルトリアの歴史をもつナポリに対し、プーリアはコンテンポラリーな職人気質があり、モードへの関心も高いんです。私たちが大切にするのは地域から得るインスピレーションであり、そこから発想する。たとえばプーリアには白壁が多く、その風景に映え、生活環境や日常生活に溶け込むような自然体のファッションなんです」
いまや確実に南イタリアのファッションも進化を遂げている。
Photograph:Yoshihiro Kawaguchi(STOIQUE)[Studio], Mitsuya T-Max Sada[Report]
Styling:Yoichi Onishi(RESPECT)
Hair & Make-up:Yurie Taniguchi
Text:Mitsuru Shibata
Coordinate:Shiho Sakai
※アエラスタイルマガジンVol.42からの転載です