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エストネーションのバイヤー、
MFW(ミラノ・ファッション・ウィーク)を行く。

2019.04.02

エストネーションのバイヤー、<br>MFW(ミラノ・ファッション・ウィーク)を行く。

ピッティ・ウォモに代表されるファッションの国際展示会は、各ブランドが新作を発表する華やかな舞台である一方、バイヤーにとってはハードなビジネスの最前線でもある。あまたある新作を取捨選択し、次なるトレンドの原石を見つける。自分たちの目利きがビジネスの命運を分けることにもなり、そのプレッシャーは計り知れない。そこで仕事の一端を知るため、エストネーションのバイヤーである生野健吾さんと中森博一さんにミラノで同行取材した。

現地だからこそ得られる皮膚感を大切にしたい

ミラノのホワイト会場にその姿はあった。ホワイトとは、ファッションウィークに合わせて開催される合同展示会で、ピッティに比べるとよりカジュアルでモード感が強く、若手デザイナーや新進ブランド発掘の場でもある。

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ホワイトではスニーカーやマウンテンブーツなどスポーティーカジュアルが全盛。さらにレコードや写真集といったカルチャーとファッションの結びつきも気になる。

二人は俯瞰(ふかん)するように会場を歩き、気になる展示には足を止め、話を交わす。その頭の中で意識するのは“違和感”という。

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エストネーション バイヤー 中森博一さん(左)、生野健吾さん(右)

「自己主張の強い会場でもどこか違和感を与えるブランドを探します。それは派手で目を引くというのではなく、私たちの枠組みをはずしてくれるような意外性や発見とでも言ったらいいでしょうか」

大切なのはトレンドを追うだけではなく、着る人のシーンを表現できるか。それはファッションの先に、顧客のライフスタイルを思い浮かべることでもある。

「そうした視点に立って選んだアイテムは、お店に並べても目を引くと思います。誰でもがではなく、私たちのお客さまにとっての“わかりやすさ”が重要なんです」

次に向かったのは、アイモネのショールーム。デビューは2015年と歴史は浅いが、ベーシックなスタイルに極上のレザーと丁寧な仕上げ、そしてイタリアのセンスを併せ持つ、ラグジュアリーな大人のレザーウエアだ。合同展示会だけでなく、こうしたブランドのショールームに直接訪れるのも独自の世界観に触れるため。

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オーナーデザイナーのプライベートルームのようなスペースに、キース・リチャードのポートレートが飾られ、アイモネ独自の男っぽい世界観が漂う。

「作り手に直接会って、じっくり話を聞くことも大切です。ただ商品を扱うだけでなく、互いに信頼できるパートナーになり得るか。そうした関係がないと長く続けることはできません」

促され、バイカーズジャケットに袖を通すと軽快感に驚かされた。

「最近はシックな傾向が好まれ、力強さや男らしさのなかにも上品さが求められます。たとえカジュアルなシーンでも崩しすぎない。そうした私たちのお客さまのテイストにとても合っていますね」

名門のイタリアンブランドでもその魅力を自分たちの感性から見直し、新たな提案をするケースがある。訪れたのはベルヴェストのショールーム。サンプルを試着し、細部まで確認する。

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いま注目するベルヴェストではジャケットに袖を通し、仕上がりやサイズ感をチェックする。オーダー内容は生地の種類や仕様など細部に及ぶ。

「ベルヴェストは“ジャケット・イン・ザ・ボックス”で知られ、旅にも重宝な軽快さや実用性は現代的なスタイルのパイオニアです。その先進性をかつてのクラシコファンだけでなく、より幅広い世代におすすめしたいですね」

多忙を極める海外出張中でも、街並みを眺め、行き交う人のスタイルや色使いに目を配るという。

「普通の人たちの感性を肌感覚で得ること。それが必ずしも東京の風景に似合うとは限りませんが、東京を離れることで、ミラノとの違いを相対比較して考えられます。さらに時代感や社会の動向であったり。普段考えている課題を確信にしていくことでもあります」

それは自分たちにとってのオーセンティックを確立すること。

「“デイリーウエア”という在り方や価値を再定義することかもしれませんね。自然体でいて、着る人らしさを表現するような」

そんなエストネーションの次なる提案が楽しみになる。

世界各国からエストネーションに届いた2019年春夏の新作 はこちら>>

Photograph:Mitsuya T-Max Sada[Report],Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling:Takahisa Igarashi
Text:Mitsuru Shibata

※アエラスタイルマガジンVol.42からの転載です

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