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コレクター垂涎(すいぜん)。入手困難なカルトワイン
ブーケンハーツクルーフ シラー 2016
【今週の家飲みワイン】

2019.03.29

小松宏子 小松宏子

コレクター垂涎(すいぜん)。入手困難なカルトワイン<br>ブーケンハーツクルーフ シラー 2016<br>【今週の家飲みワイン】

インターナショナルに活躍するソムリエの梁 世柱さんによる、ワイン指南。自宅で気軽に飲める、お手頃でいて本格派な一本を紹介する。今月は「南アフリカ」のワインだ。

南アフリカの赤ワインと言えばまずシラーの名が挙がるほど、アイコニックなぶどうだ。渇いた大地や古い地層などの、テロワールのポテンシャルを見事に引き出すことができるのであろう。とはいえ、“南アのシラーで8000円”と言われれば、正直購入を迷う。しかし、実はこれ、梁さんが「本気で紹介しようかどうしようか悩みましたよ。これでまた手に入らなくなる(笑)」と言うほどのレアもの。南アフリカのワインが、世界にその評価を知らしめるきっかけとなったカルトワインのひとつでもある。

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ワイナリー名であるブーケンハーツとは、現地の言葉で「土着のブナの木」という意味だ。エチケットには、オランダ統治時代に盛んにブナ材で造られた、ケープオランダ様式の椅子が7つ描かれている。つまり、ケープタンの歴史へのオマージュが込められているのである。ワイナリーはケープタウンから東へ車で1~2時間ほどの美しい山々に囲まれたフランシュック地区にあり、創設は1776年にさかのぼる。長い歴史のなかで、欧州からの入植者が、代々ワインを醸造してきたのだ。しかし、現在の名声を勝ち得たのは、天才醸造家とも言われるマーク・ケントが就任してからのこと。初リリースは1995年。その後、年を追うごとに評価を上げ、2008年には、ロバート・パーカーのワインバイヤーズガイド(米国)とワインレポート(欧州)両誌で南アフリアNo.1のワイナリーに選ばれた。以来、カルトワインとしての評判は揺るぎないものになった。

成功の要因のひとつは、ブーケンハーツクルーフワイナリーの畑の立地にある。フランシュック地区でも最も古いエリアにあり、すべての畑が東に向いているため、日照時間が限られている。そこで育つシラーは、成熟に長い時間がかかり、うま味や複雑味が増すのだという。ワイナリーのトップラインである、ブーケンハーツクルーフ シラーは、現在世界60カ国に輸出されているが、そのすべてが全世界割当制という販売方法をとっている。自信の表れにほかならない。

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「醸造家のマーク・ケントは南アフリカのなかでもカリスマと言われるひとりです。彼の造るワインは、多くの人がニューワールドに求める、ガツンとくるパワフルな側面をしっかりと満たしながら、旧世界にも通じるエレガントさや洗練さも持ち合わせています。そうしたワインが造れる人はとても少ない。そのクオリティーが8000円で購入できるのは、奇跡に近いです」と梁さんは言う。合わせる料理は豊かな果実味や心地よいタンニンを生かして、上質な牛肉のステーキや、きれいにサシの入った牛ロースでのすき焼きなどと、ちょっと張り込みたい。

<<ウォータークルーフ・シリアスリークール・サンソー 2016

  エンデルレ・ウント・モル / ピノ・ノワール リエゾン [2016]>>

今週の家飲みワイン【まとめ】はこちら

Photograph:Makiko Doi

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