紳士の雑学
ダブルスーツとは?(スーツの基本 第7回)
2019.07.11
シングルとダブル。スーツにさほど明るくないビジネスパーソンでも、フロントデザインの違いから大きく分けて2種類のジャケットがあることはご存じでしょう。前回はスリーピーススーツについて紹介しましたが、今回は前合わせが二重になったダブルスーツを取り上げます。シングルに比べてやや敷居が高そうに見えるかもしれませんが、実はそうでもないのです。
ダブルスーツの種類って?
そもそもスーツにおけるシングル、ダブルとはそれぞれシングルブレストとダブルブレストの略語で、ブレストは胸部のこと。見た目だけでなく出自も異なり、シングルは貴族の服、ダブルは軍の制服がオリジンと言われます。ダブルの場合、左右どちらからでもボタンを留めることができ、これは両方向から吹く風を防ぐためのディテールでもあったそうです。現在のダブルスーツは、そのボタンの付き方で数種類に分類されます。
<4つボタン>
二重になった前合わせを留めるボタンの並びが2列になっており、計4つのボタンが付いているタイプです。同じ4つボタンでも画像のように上下のボタンを留められる2つ掛けと、下のボタンだけ留める1つ掛けで仕様が異なります。なお、ボタンはすべて留めても、下1つだけ外してもマナー違反にはなりません。
<6つボタン>
ボタンの数が6つのパターンも存在します。こちらもボタンの留め方によって1つ掛け、2つ掛けと種類が異なりますが、画像は王道の2つ掛けタイプ。上2つのボタンはやや外側に配置され、Y時のような形状になっているのが一般的です。これはスプレッドアウトと呼ばれるスタイル。一方で、左右のボタン配置が直線状になっているものはオールインラインと呼ばれています。
ダブルスーツは〇〇じゃない!
重厚感のある仕立てからクラシックな印象を与えるダブルスーツですが、こと日本のビジネスシーンではあまり一般的ではありません。日本人の控えめな性格からか、より主張の少ないシングルスーツに押される格好といえます。しかも、一方的なイメージにより誤解されていることが少なくないのです。ここでは、2大誤解ともいうべきネガティブイメージを払拭すべく、現代のダブルスーツのメリットを解説しいていきます。
【誤解①時代遅れに見える】
確かにシングルに比べて風格のあるデザインなだけに、重役クラスが着るスーツの印象があるでしょう。昭和にダブルスーツが流行ったことで、当時の着こなしのイメージが強く、それも時代性を感じさせる要因となっているのかもしれません。
とはいえ、前述のとおりダブルスーツは軍服が出発点と言われ、貴族服を出自とするシングルに比べてある意味でカジュアルなスーツなのです。また、以前にダブルスーツが流行った時代は、太めのシルエットがもてはやされた時代でもあります。ダボっとしたサイズ感が、古めかしい印象を強くしているのでしょう。前合わせが2重になったデザインのため恰幅のいい男性が愛用していたことも、いわゆる”おじさん臭さ”を助長しているようです。
しかし、現在のダブルスーツはシングル同様にスリムなシルエットが主流。シングルよりもディテールが複雑になった分だけバリエーションも広がり、よりモダンなデザインも増えてきています。しかもトレンドはクラシック回帰。ファッションリーダーを担うような若手芸能人がダブルスーツを着るシーンも度々目にするはずです。
【誤解②幼く見える】
おじさん臭いと同時に、幼いとも捉えられる。この矛盾こそ、ダブルスーツに対する偏見を如実に物語っているのではないでしょうか。子どものように見られてしまう要因は、小柄な人が6つボタンを着た際にボタンの縱間隔が狭くなることにあるようです。言わずもがな、このネガティブイメージは体型に合ったサイズを選ぶことで払拭されます。Vゾーンに目が行くように工夫したり、ストライプデザインで縦のラインを意識するのも良いでしょう。いずれにせよ、フィッティングや着こなしでイメージは変わりますし、それはシングルでも同様です。
だたし一点気をつけたいのは、見る人にとってはイメージが最優先であること。自らの正義をひたすらに主張し、ビジネスシーンでダブルスーツを誇らしげに着るのは、それこそ”子どもっぽい”と捉えられてしまうかもしれません。
まとめ
①ダブルスーツはフロントデザインで数種類に分類される。
②時代遅れといった印象は、あくまで偏見。
③とはいえイメージは重要で、ことさらビジネスシーンでは慎重に。
Edit:Naoki Masuyama,Masashi Takamura
Text:Naoki Masuyama