一生モノの靴との出合い。 #4
誕生国のキャラクターが反映された名靴図鑑

2019.07.16

新しい元号となり、気持ちも新たに毎日を過ごしていきたい。その第一歩として、まずは足元から見つめ直してみてはいかがだろうか。作りもデザインも上質なマスターピースな一足とともに、令和の世の中をじっくりと踏みしめ闊歩(かっぽ)していただきたい。

紳士靴はその国の文化をはじめ、気候や歴史を通して独自の進化を遂げてきた。例えば英国靴は、その歴史的・地理的背景をベースに多くの名靴を生み出してきたことで知られるが、世界にはそれぞれに発展してきた一生モノの靴が存在する。

ヨーロッパでは、イタリアがイギリスと並ぶもうひとつの高級靴の勢力で、職人技を駆使したエレガントなスタイルとマッケイ製法を主とした軽い履き心地の靴が特徴だ。さらにはフランス、スペイン、ベルギーと各国のお国事情を反映した名靴がそろっている。

一方、アメリカはオールデンをはじめ、履き心地や機能性を重視した靴作りを行うブランドが多く、さらに日本では、職人技や技術力を生かし、日本人のライフスタイルに合わせて作られた名靴が存在する。

現在の日本では、世界中の名だたる高級靴がそろう。趣味嗜好や用途に応じて、じっくりと自分に合う好みの靴を選択したい。

フランス
PARABOOT パラブーツ
素材から製法に至るまでこだわり
「価値ある歩き」を作り出す

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MICHAEL
山岳民族のチロリアンシューズを原形とし、雨に強いノルウィージャンウェルト製法や天然ラテックスを使用して作られたオリジナルのラバーソールなど、タフな作りが特徴のミカエル。頑丈で劣化が少なく、フランスの宝石と呼ばれるリスレザーを使用している。¥65,000/パラブーツ(パラブーツ 青山店 03-5766-6688

自社でラバーソールを生産する世界唯一の靴メーカーで、ブランド名の由来にもなっているパラブーツ。良質なラテックスを使い、伝統的な秘法でラバーソールを作り、ソールにアッパーを合わせるという独自の手法で、1908年にパラブーツは誕生した。パラブーツの十八番であるノルウィージャンウェルト製法は、150以上もの工程を経て完成する手間のかかるものだが、これによって水の浸入を防ぐとともに、独特な外観と高いファッション性を実現し、人気を博すこととなっている。

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ブランド設立者は、レミー・リシャール・ポンヴェール。靴のアッパーを縫う作業が盛んだったフランス南東部イゾー出身で、最初はオーダーメイドが中心だった。

イタリア
ENZO BONAFE エンツォ ボナフェ
ほぼフルハンドで作り上げられる
イタリア・アルティジャーノの至宝

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ビットローファーで有名なラグジュアリーブランドのオリジナルモデルを生産していたことでも知られるのがエンツォ ボナフェだ。当時のオリジナルモデルとほぼ同じデザインで、トゥボラーレ製法で作られており、心地よいフィット感が得られる。¥95,000/エンツォ ボナフェ(オリエンタルシューズ 03-6804-3280

創業者エンツォ・ボナフェは10代のころからイタリア靴の名門ア・テストーニで修業。ハンドメイドによるボロネーゼ製法を学び、1963年にボローニャで工房を開いた。手縫いのグッドイヤーウェルトであるグッドイヤー・ア・マーノ製法でインソールをドブ起こししてウェルトを手で縫い上げる技術や、インソールに7mmの厚さの革を使用し充填材を使わない仕上げなど、高い技術力を誇る。故ローマ法王ヨハネ・パウロ2世をはじめヨーロッパのVIPが愛用し、イタリア国家からも表彰されている。

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最後の工程である出し縫いのみを機械で行っているエンツォボナフェ。イタリアが誇る職人の手によって作られる靴は、高いクオリティーを誇る。

日本
SANYO YAMACHO 三陽山長
伝統的な匠の職人技を
再評価した日本らしい靴

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勘三郎
外羽根のUチップシューズ勘三郎は、三陽山長らしさがよく出たモデル。ハンドソーンのスキンステッチは日本のきめ細やかな職人技が光る。2010年に顧客たちからの情報をフィードバックして誕生した2010ラストは、立体的なフィットを感じられる。¥90,000/三陽山長(三陽山長 日本橋髙島屋 S.C.店 03-6281-9857

2001年に前身の山長印靴本舗をリスタートし、誕生した三陽山長。日本の精巧なモノづくりを表現するため、匠の技を持つ職人の手により日本ならではの靴を生み出している。日本伝統のヤハズ掛けを見直し採り入れることで、ボリュームのあるダブルソールをシングルに見えるように工夫するなど、細部にわたる日本らしい仕上げが特徴だ。さらに最高級の素材を使ったべベルドウエストやヒールのシームレス仕様など、伝統的なビスポークの技による靴作りは、日本の手仕事のよさを再認識させてくれる。

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日本人ならではの繊細な感覚と、きめ細やかな仕事ぶりで、和の靴を生み出している。それぞれの靴のネーミングも独特で、日本名がつけられている。

アメリカ
ALLEN EDMONDS アレン・エドモンズ
実用本位に徹した
アメリカの歴代大統領が愛した靴

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PARK AVENUE
ブランドを代表するキャップトウモデルで、小さめのキャップや6穴アイレットなどアメリカの靴らしいディテールを搭載。やや長めのラウンドトウである65ラストにヒール部分はゴム張り仕様とし、ルックスと機能性が両立している。¥69,000/アレン・エドモンズ(トレーディングポスト青山本店 03-5474-8725

1922年、米国ウィスコンシン州のベルギーで創業。履き心地にこだわり、歩くたびに屈曲する足に合わせてフレキシブルに曲がるよう、釘や硬い鉄のシャンクを使っていないのが特徴だ。750人の熟練した靴職人が在籍し、5つの工場に分かれ、212もの工程を経て作られるグッドイヤーウェルト式の靴は、重厚で安定感のある履き心地。さらにサイズ展開が幅広く、ウィズもAAA~EEEまでそろえてあるのは多民族国家アメリカらしい。歴代大統領やハリウッドスターを顧客に持つ米国靴の代表だ。

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かたくなに自国生産を貫き、歴代大統領が初登庁時に履く靴としても知られる、米国の良心的靴ブランド。靴作りに関する独自のノウハウで、快適な履き心地を実現する

スペイン
CARMINA カルミーナ
きゃしゃなデザインと堅牢さを
両立した高バランス靴

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ダブルモンクストラップのキャップトウのエレガントなデザインで、カルミーナのベストセラーモデル。シャープなラウンドトウが特徴のラストDEIAを採用し、高いフィット感が味わえる。毛足の長い柔らかなスエードがエレガントさを強調する。¥69,000/カルミーナ(トレーディングポスト青山本店 03-5474-8725

スペインのマヨルカ島で誕生した小さなオーダーメイド靴工房をルーツとするカルミーナ。かつてヤンコで腕を振るったホセ・アルバラデホ・プハーダスが1997年にスタートし、現在ではスペイン国内とパリとニューヨークに店舗を有し、世界的にも展開されている。製法はグッドイヤーウェルトを採用し、英国靴的な履き心地のよさに、きゃしゃなデザインとステッチワークの美しさなどが詰め込まれている。手に取りやすい価格設定なのも良心的で、品質とのバランスが取れた、まさにいいとこ取りの靴である。

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伝統的な英国靴と同様のグッドイヤーウェルト製法で作られるが、ほかにはないエレガントさを感じられるのは、ディテールへのこだわりから生まれている。

ハンガリー
VASS ヴァーシュ
全工程ハンドソーンを守り抜き
カスタムメイドシューズ復興をリード

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BUDAPEST-OLD STYLE
100年以上前に使われていた道具をそのまま使用し、ハンドメイドならではの柔らかい履き心地を実現しているヴァーシュ。ブダペストモデルは、厚みと丸みのあるラウンドトウが特徴のFラストを採用し、大きめな穴のパーフォレーションが上品なアクセントに。¥140,000/ヴァーシュ(トゥモローランド 0120-983-522

19世紀オーストリア・ハンガリー帝国時代からのハンドメイドシューズ作りの伝統を受け継ぎ、1978年ブダペストで創業したヴァーシュ。現在でも全工程を伝統的な手作業で行い、エレガントで快適な履き心地の靴を生み出している。創業者のラズロ・ヴァーシュの靴作りへの姿勢が表れたコレクションは、世界屈指のクオリティーと賞賛されている。またラズロ・ヴァーシュは、靴マニアのバイブル本「HANDMADESHOES FOR MEN」の共同執筆者としても有名。BUDAPEST-OLD STYLE100年以上前に使われていた道具をそのまま使用し、ハンドメイドならではの柔らかい履き心地を実現しているヴァーシュ。ブダペストモデルは、厚みと丸みのあるラウンドトウが特徴のFラストを採用し、大きめな穴のパーフォレーションが上品なアクセントに。¥140,000/ヴァーシュ(トゥモローランド 0120-983-522)
ヴァーシュ

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ハプスブルク帝国時代のハンドメイドの靴作りの伝統を守るヴァーシュ。かつて靴王国として栄えたハンガリーの靴は、特に国外から熱い注目を集めている。

「アエラスタイルマガジンVOL.43 SUMMER 2019」より転載

<<一生モノの靴との出合い。 #3 はこちら

Still Photograph: Shouichi Muramoto
Styling: Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Edit&Text: Yasuhiro Okuyama(POW-DER)

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