紳士の雑学
スーツに合う靴とは?【色選びと靴の種類】
2019.08.01(最終更新:2022.03.17)
ビジネススタイルは靴を履いて完成します。欧米の有名ホテルでは、持ち物よりも靴で顧客を見ると言われるほど。ビジネスマナーとして忘れたくない正しい靴選びをマスターしましょう。
スーツに合わせる靴の種類~基本スタイル編~
靴のスタイルは甲の造りに表れます。大きく分けると内羽根式と外羽根式の2種類。さらにひもがなくレザー製のストラップ付きや一枚革などの仕様があります。それぞれの意匠の違いと醸し出す雰囲気の差を解説します。
内羽根式(バルモラル)
ハト目(ひもを通す穴)が付いたパーツが本体に縫い付けられ、ベロと呼ばれる一枚革がその下に取り付けられています。ジャケットにおけるポケットと同様、外側にパーツが出ないほうが上品とされるので、内羽根式のほうがフォーマルと言えます。
外羽根式(ブラッチャー)
ハト目のパーツが靴本体にかぶさるように縫い付けられています。軍靴に由来するという説が有力なだけあって、内羽根式に比べてやや武骨な印象がしますが、ひもが外付け部分にあるので、より調整しやすいのがメリット。
モンクストラップ
修道士(モンク)が履いていた靴に由来し、ひもの代わりにストラップを使って脱ぎ履きをします。もともとはシングルですが、後により装飾的なダブルもつくられようになりました。現在はひも靴の次にフォーマルなビジネス用靴として用いられ、より洒脱なスタイルとなります。
ホールカット
継ぎ目がなく、一枚革でつくられたもの。かなり熟練の技術が要求されます。さらにドレッシーな仕上がりで、冠婚葬祭といった儀式にも向いています。アッパーに入ったシワが目立つのがデメリット。
サドルオックスフォード
サドル(鞍)の名称どおり、甲からサイドにかけて切り返しがあるもの。2色使いのものはオフ向けですが、黒・茶などの同系色であればビジネスでも使用できます。
スーツに合わせる靴の種類~トウ編~
靴のトウはいくつかの種類があります。流行やパンツとの相性も考える必要がありますが、ここでは基本的なものを解説します。
ラウンドトウ
甲から先端が丸くなったオーソドックスなシルエット。この角度が緩やかなものほどフォーマルにふさわしいとされます。
ポインテッドトウ
親指の付け根から先端にかけて、とがっているように細くなったもの。かなり急な角度のものから緩やかなカーブのものまでありますが、先がかなり細くなっているのは共通しています。
オーバルトウ
楕円(だえん)形のラインのもの。流行を問わない定番なので使いやすいでしょう。
スクエアトウ
先端を水平にカットしたようなデザイン。主にロングノーズと呼ばれる爪先から先端までが長い靴に使われます。またカットした部分が短いものをセミスクエアトウと呼ぶことも。
スーツに合わせる靴の種類~装飾・デザイン編~
ストイックな印象が強いビジネス用シューズにも、よく見ればさまざまな装飾が施されています。その意味を把握すれば、靴選びのヒントになるはず。
ストレートチップ
本体とつま先を覆うパーツとの切り替えに一本のステッチのみ配したもの。かぶせたような形状から、キャップトウとも呼ばれる。最もオーソドックスでフォーマル、ビジネスで活用できるのが特徴。ビジネススタイルの王道シューズと言えます。
プレーントウ
本体に切り返しがないモデル。外羽根式が多いですが、フォーマルにもビジネスにも対応できます。ただし、タキシードの場合はオペラパンプスを履くのが通例です。
ブローグ
16世紀のゲール人が履いた作業靴に由来し、穴飾りは通気口の名残というのが有力な説。トウの部分がダブルになっており、そのまま靴全体に施されているのがフルブローグ。ストレートチップ状の横一文字に穴飾り、トウにメダリオンという装飾があるタイプがセミブローグ、穴飾りのみがクオーターブローグと呼ばれます。ちなみに、フルブローグの別名がウィングチップ。
アウトドアに由来するだけあり、装飾が多いほどカジュアルな傾向となるので、スーツに合わせるならなるべく飾りが控えめで黒のタイプを選ぶようにしましょう。もちろん、フォーマルな場では避けたほうが無難。
Uチップ
外羽根式、さらにモカシンをイメージさせるアッパーのつくりからもわかるとおり、こちらも本来はカジュアルな用途の靴です。黒であればスーツにもOKですが、ブローグと同様にきちんとした場所で履く靴ではありません。
スーツに合わせる靴の種類~製法編~
靴にはさまざまな製法があります。それによって見た目、耐久性、価格に違いが出てきます。ここでは代表的な3つを紹介します。
グッドイヤーウェルト製法
インソールに切り込まれた、または貼り込まれたリブと呼ばれる部分に甲革、裏革と帯状の細い革をすくい縫いし、さらにその細革とソールを縫い付ける。ソールと甲革が直接縫い付けられるので、ソール全体の交換が可能。丈夫だが足になじむのに時間がかかる。工程が多いため、ほかの製法に比べて高価。
マッケイ製法
イタリア靴によく見られる製法で、リブがなく、甲革、中敷き、アウトソール(底革)を直接縫い付けます。パーツが少ないため、軽量で足なじみが良く、履きやすいのが特徴。ソールの交換はできますが、耐久性ではグッドイヤーに比べると劣ります。
セメンテッド製法
甲革とアウトソールにインソールを挟み込み、接着剤で圧着したもの。縫製の過程を省くため、安価なのが一番のメリット。ただしソール交換はできないため、底がすり減ったらジ・エンド。購入時に確認しておきたいところ。
スーツに合わせる靴の種類~ソール編~
歩行を支えるソールは意外に見落としがちな部分。大きく分けるとレザーとラバーですが、どちらにも長所、短所があります。
オールレザー
通気性があり、足なじみがいいのが特徴。高級靴はほとんどこれでつくられており、ソーシャルな場では万能です。デメリットは濡れた場所だと滑りやすいことと耐久性に欠けること。日々の通勤で酷使すると思いのほか早く減ってしまいます。
ラバーソール
摩耗しにくく、グリップが利くので少々の雨でも安心です。鋲型の凹凸があるダイナイトソール、負担がかかる場所にあぜ道のような凸部を設けたリッジウェイソールなどのバリエーションがあります。その半面、通気性に劣ることとカジュアルに見えることが欠点。
ハーフラバー
その名のとおり、レザーソールの前半分にラバーを張ったもの。革の風合いを生かしつつ、摩耗を防ぎます。最初からこうなっている靴もありますが、リペア時にこの仕様に変える人も多いようです。
スーツに合わせる靴の色やデザインで、印象やニュアンスが変わる
革靴の色、デザインによって相手に与える印象が変わります。
社風や地位、会う相手などよって、柔軟に対応するようにしましょう。
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基本は黒×内羽根式×ストレートチップ
ビジネスシューズ不動の定番は内羽根式の黒ストレートチップ。ぜひクローゼットに加えておきたいモデルです。
次に無難なのがプレーントウですが、縫い目がない分、テンションが掛かりやすい甲の革のシワが目立つことに留意してください。
2足目はプラスアルファの靴を選ぶ
ストレートチップの次は、同じく黒でデザインが異なったものがいいでしょう。
たとえばモンクストラップや外羽根式、またはセミブローグなど、少しドレスダウンや装飾の要素が入ったタイプが合わせやすいはずです。
ビジネスシーンでNGな靴とは?
ローファーやモカシンといったカジュアルなタイプは避けてください。ブーツは短めでドレスタイプのチャッカーは許容範囲ですが、サイドゴアブーツなどのアウトドアなテイストのものも向きません。
スーツと靴のコーディネートで男の格を上げる
黒と茶、それぞれの靴とスーツのおすすめの組み合わせを具体的に解説します。それぞれの特徴をうまくマッチさせてください。
王道の黒×内羽根式×ストレートチップはフレッシャーズに最適
ストライプタイでVゾーンをまとめた同系色のネイビースーツは、就職活動からエグゼクティブのミーティングまで使えるオールラウンドプレーヤー。
特に若い人がフレッシュさをアピールするのにうってつけのコーディネートです。ここでは靴はあくまで脇役。主張しすぎない黒のストレートチップを選んでください。
英国調グレーストライプスーツにモダンなダブルモンクの意外性
落ち着いたチャコールグレーにほどよい幅のストライプ。典型的なブリティッシュスタイルのスーツに、黒のモンクストラップでスポーティーさを加えてみては。シングルもマッチしますが、ダブルならさらにおしゃれ度がアップします。
押し出しの強いダブルスーツに茶のセミブローグで控えめな個性を
茶はネイビーと好相性。ダークブラウンであれば無地、ストライプ入りにかかわらずマッチします。ただ胸元を強調するダブルスーツだけに、足元にあまり遊びがあるものは慎みたいところ。穴飾りが控えめなセミブローグがおすすめです。
茶の靴が醸し出すソフトな印象をクラシックなグレースーツに添える
茶色、特に濃いトーンは落ち着いた印象を与えます。ある程度のキャリアを重ねたら、ブラウンシューズとグレー無地スーツの着こなしも似合ってくるはず。それぞれの明度を合わせれば、よりシックにまとまります。写真は内羽根式セミブローグですが、ストレートチップ、外羽根式プレーントウもマッチ。
間違えない革靴購入ガイド
スーツのフィット感はビジネスでのパフォーマンスに影響します。足元の靴も同様に重要です。今回はビジネスシューズ購入にあたって気をつけることを解説します。
試し履きは足が最もむくむ時間帯を選ぶ
足のサイズは同じでも、その状態は時間帯によって異なります。足は朝よりも夕方のほうがむくみます。靴が痛くて履けないとならないように、ある程度遅い時間の試し履きがベターです。
薄手の靴下を履いて試着する
通常、ビジネスソックスは薄手です。スニーカーに合わせるようなカジュアルソックスでは、本当のフィット感とはズレがあります。ショップでサンプルを用意しているところが多いですから、履いていくか、もしくは持参するようにしましょう。
迷ったら少し小さめのサイズを選択する
革は生きています。履いているうちに自分の足の形に沿った形になっていきます。またグッドイヤーウェルト製法は、最初はきつく感じますが、次第にコルクが沈んでフィットしてきます。
履きはじめよりも伸びが出てきますから、少々きつく感じても小さめがおすすめです。ただし指があたるようであれば、小さすぎか足型が合っていない可能性があります。必ず店内を歩き、スタッフに見てもらうようにしましょう。
ちなみに、革靴には「捨て寸」と呼ばれる1~1.5cmほどの余裕があるため、スニーカーのサイズより小さくなるのが目安です。
大切な靴を長持ちさせる手入れの基本
手入れのしていない高級靴より、ちゃんとケアされたお手頃価格の靴のほうが見た目の印象は確実に上です。お気に入りの靴を長持ちさせるノウハウを解説します。
汚れは古いクリームと共にふき取る
靴全体のほこりをブラシで落としましょう。コバには専用ブラシ、ない場合は古くて柔らかない歯ブラシをかけてください。その後、布にクリーナーを薄くぬって汚れと前に塗ったクリームを拭います。強くこすりすぎないように注意。
クリームの塗りは薄く、まんべんなく
靴と同じ色のクリームを乾いた布に少量つけ、全体に伸ばすように塗布します。色が薄くなっているところに塗り込むのはOKですが、あまり多いとムラになるので注意。布ではなく、専用の塗布用ブラシも便利です。
クリームを染み込ませ、念入りにふきあげる
新しいクリームが革に浸透するまで5分ほど待ち、その後きれいな布で磨きあげてください。染み込まなかった余分なクリームをふき取るようにするといいでしょう。
靴は連続して履かず、ローテーションを心掛ける
人の足は1日でコップ一杯程度の汗をかくと言われます。外側もほこりや土が付くなど、毎日の汚れはかなりのもの。1日履いたら必ず2日程度は休ませ、続けて履かないようにしてください。複数の靴でローテーションを組むことが、長い目で見れば経済的です。また、シューツリーは必須アイテム。消臭・吸湿効果のあるヒノキなどの木製のものが理想です。
まとめ
靴が持つ個性を理解し、スーツとの相性を見ながら、少しずつレパートリーを増やしてください。靴の選び方、コーディネート、ケア方法をマスターすれば、ビジネススタイルの完成度はさらに高まります。
①まずは黒のストレートチップから。基本を押さえて2足目からバリエーションを増やす
②茶色の靴は色のトーンをうまく使いこなすのがコーディネートのコツ
③靴は使い捨てではない。ローテーションと日々のケアを忘れずに
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)