カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ58
スーツだけじゃない!タートルネックセーターはオンオフで大活躍
2019.11.19(最終更新:2020.05.14)
前回は白のタートルネックセーターが休日のスタイリングに万能だということを解説させていただきました。今回はビジネスシーンや年末のパーティーなどで活躍する!というタートルネックセーターを着用したジェントルマンのスナップを厳選。
実は、タートルネックセーターは、首まわりが空いていないのでノータイのシャツスタイルよりは格式が上と言われています。なかでも白のシルク素材で作られたものは、フォーマルな服の一員と考えられているほど。指揮者の小澤征爾氏は、若かりしころよくタキシードなどと組み合わせていました。
ベートーベンなどの肖像画を見ると首のまわりに白い布がくるくるまかれていて、首まわりをエレガントに見せていましたが、実はこの古典的なネックスタイルは遠目に見ると、現代のタートルネック近い見え方になるのです。
回りくどい話をしましたが、何を言いたいかというと、丸首、Vネック、カーディガンというセーターのなかではいちばんフォーマル度が高いということ。なので、多様化してきた日本のビジネスシーンでは、もっと着用者が増えてもいいのではと思うアイテムです。
また書き出しが長くなってしまいましたね……、早速本題に戻ります。
この方はロンドンのスーツの聖地、サビルロー通りの近くでスナップしたもの。この通りの周辺は、老舗の仕立て屋や靴屋などが立ち並んでいるのでほとんどの人がスーツにビシッとネクタイという王道スタイルですが、最近はこのジェントルマンのようなジャケパンにタートルネックセーターというスタイルの人も見かけるようになりました。
このジェントルマンのタートルネックセーターは、ベージュとグレーの中間的な色。これが髪の色と絶妙にマッチしていてエレガントですね。そしてジャケットのポケットにはシルクのチーフを入れ、きちんと感をアップさせています。
ただ、よくよく見るとヘアスタイルは、サイドを超刈り上げにした攻め攻めのツーブロック。そんなトレンディーな彼ですが、ベルギーの漫画「タンタンの冒険旅行」に出てくるタンタン少年のような親近感を覚えてしまいますね……。
全身はこんな感じです。パンツはオフ白のコットンパンツ。清潔感が漂うトレンディーな組み合わせですが、この色のパンツで出勤できる日本の会社は多くないはず。私のアドバイスとしては、ライトグレーのウールパンツに替えれば、この雰囲気に近い感じが演出でき、通勤中も浮かないはずです。
足元は、スエードのタッセルスリップオン。この足の甲に房飾りがついた靴は、ヨーロッパや日本のファッション関係者が好んで履いていますが、日本ではなかなか浸透しません。さりげなくソックスとチーフの色を合わせているところがにくいですね!
久々の日本人の登場!! この御仁を見てもらえれば、タートルネックセーターがいかに万能選手であるかがわかっていただけると思います。実はセレクトショップのビームスにお勤めの方で、インスタグラムでは世界中にフォロワーがいるというその筋では名のしれたジェントルマン。
タートルネックセーターは、ブラックを選んでいますね。日本のビジネスシーンでは、ブラック、ネイビー、ダークグレーなどを選べば間違いないはず。
見落としてはいけないのが、首元にシャツの襟がちらっと出ているところ。実はタートルネックセーターの下にシャツを着て、襟を立てて、その先をちらっと見せる着方は、ピッティではよく見かけるテクニック。こうすると、ややもするとお坊ちゃま風になるか、のっぺりした貧弱な首元になりがちなところをうまくカバーできます。
それと、タートルネックセーターは首まわりがチクチクしたり、汗をかいたときに首まわりが蒸れて気持ち悪いから着ないという方も、この方法を使えば悩みが解決。
上着は金ボタンのWブレザーで、パンツはジーンズでした。Wブレザーは今年リバイバルしていて、有名女性ブローガーたちもこぞってこれを着て写真をアップしています。
ここでひとつポイントがあります。ブレザーと言ってもシングルのブレザーはほとんど注目されていないというところ。
これは、昨今のミリタリーブームからの流れで自然とそうなったのではないかと、個人的には解釈しています。ミリタリーでシングルの場合は、スタンドカラー(詰め襟の学生服のようなデザイン)が一般的ですから。
足元は昨年くらいから注目されているルームシューズタイプのローファー。底が薄くとてもしなやかな革を使っているので履き心地がとても軽く、履きはじめからストレスを感じないのがこの靴の特徴。
ルームシューズを普段履きに使うコーディネートは、80年代にニューヨークのファッションデザイナーがはやらせた記憶があります。ソックスの色がパープルというのも粋ですね。マイケル・ジャクソンは黒ローファーに白ソックスを履いていましたが、あれはまねしないほうが無難です。
次回は、本格的な真冬仕様のトレンドを取り上げる予定です。
乞うご期待!
トレンドスナップのまとめはこちら
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi