調べ・見立て(見立て)

いまどきビジネスバッグの選び方、使い方。
編集長の「見立て」。#27

2020.01.17

山本 晃弘 山本 晃弘

バッグ01

ビジネスで使うべきバッグは、ブリーフケースのみ。数年前まで、そのように申し上げてきました。「ブリーフとは英語で書類のこと。ビジネスマンであれば、書類入れを意味するブリーフケースを使うのが当然」と、着こなしルールを規定していたのです。

最初にブリーフケースの座を脅かしたのは、ビジネストート。そもそものトートバッグは、道具を運んだり、食材を入れたりするのに使われたもので、ビジネス用途のバッグではありませんでした。最初にビジネスに活用しはじめたのは、日本のビジネスマンであると私は考えています。営業で外回り中も携帯電話でアポイントメントを取り、手帳を確認し、商談用の荷物を抱えて。そのようなタフな仕事をこなす日本のビジネスマンが、多くの荷物を収納できて、しかもサッと取り出せるトートバッグをビジネスに活用しはじめたのです。いまでは、黒、茶、ネイビーなどのレザー素材を用いたビジネストートと呼ばれるジャンルがしっかりと確立されて、コーチやフルラなどの海外のブランドからも発売されています。

次に、ここ1~2年で主役に躍り出たのがリュックサックです。そもそもはアウトドアのイメージが強いアイテムで、こちらもビジネス向けのバッグだとは考えられていませんでした。真っ先に活用しはじめたのは、自転車通勤のクリエイターたち。それが、スニーカー通勤などの提唱もあって、一般のビジネスマンにも一気に広がりました。アンケート結果を見ると、リュックサックを活用しているのは23%で、ビジネストートの21%を凌駕(りょうが)しています。それどころか、通勤時にはリュックとして背負うのを前提にした3way(2way)バッグ14%の数字をリュックサックの23%に加えると、37%となって、ブリーフケースさえも抜き、いまやいちばん使われているビジネスバッグなのです。

バッグ02

PCを保護するパッドの有り無し、携帯などを収納しやすい外付けポケットなど、まずは機能性でバッグを選ぶのがビジネスマンの特徴。多くの荷物を持ち運ぶ営業マンにとっては、容量や重量感も気になってきます。では、デザインではどのようなポイントをチェックすべきでしょうか。ビジネストートもリュックサックも、ビジネスでの活用を考えると、ブランドのロゴが目立つものは避けてください。ブランド名が入ったチャームやキーホルダーを付けたままのビジネストートを使っている方を見かけることがありますが、仕事に支障をきたす前にやめておきましょう。スポーツやアウトドアのブランド名が大きく入ったリュックも同様です。そういったものを仕事用として使っていいのは、そのブランドのスポンサードを受けたアスリートだけだと考えたほうがいいでしょう。

さらに、ビジネストートもリュックサックも気をつけてほしいのが色です。レザーのブリーフケースを持つときには黒か茶を選んで、ベルトや靴などの小物の色とそろえる。これが着こなしのルールでした。ビジネストートやリュックを持つときにも、この基本ルールは生きてきます。身につけるベルトや靴の色によって、その日に持つバッグを使い分けるのが望ましい。ネイビーやグレーといった色のビジネストートやリュックサックはどんな色の小物にも合わせられて万能であると考える方もいますが、バッグを長持ちさせる観点からも、複数を使い分けるほうがいいでしょう。

とはいえ、出勤前に別のバッグに荷物を入れ替えるのは面倒なもの。そういったビジネスマンのために、簡単なテクニックをここで伝授します。それは、ポーチや小袋をバッグインバッグとして活用すること。そうすれば、さっと入れ替えができて、手間取る面倒が避けられます。ベルトや靴などの小物と色合わせするだけでなく、その日のアポイントメントや会う人によってバッグを使い分けるおしゃれ上級者を目指してください。

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プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE
WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター

「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に編集長として「アエラスタイルマガジン」を創刊。ファッションやライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツを制作している。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。2019年4月にヤマモトカンパニーを設立し、現職に就任。執筆書籍に、「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。

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