週末の過ごし方

奥深いジンの魅力を探る 第1回
ジンの発祥とオーソドックスなロンドン・ドライ・ジン

2020.04.24

写真・図版 小松宏子

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カクテルのベースとしてオールマイティであるばかりでなく、小さな蒸溜所で造られる個性豊かなクラフトジンの台頭で、世界的にジンの魅力が注目されて久しい。ジンの歴史からクラフトジンの潮流、カクテルの作り方まで、ジンの魅力をジンにこだわる「バー コパン」のジェーニャさんに解説してもらった。

ジンとはどんなお酒か?その定義は?

まずは、ジンの定義を見てみよう。「蒸留されてできたニュートラルスピリッツにジュニパーベリーを含む、ボタニカル(植物成分)を抽出した蒸溜酒」がそれである。風味付けのボタニカルには、コリアンダー、リコリス、オレンジピールなど、さまざまな植物が使われるが、ジュニパーベリーは必須であり、平たくいえば、ジュニパーベリーの風味がする蒸留酒ともいえる。

ジュニパー(西洋ネズの木)ベリーとは、北半球の比較的寒い地域に分布する、背の低い針葉樹の実で、古くから、外傷や病気の治療目的で使われていた。スパイスなどに比べて、手に入りやすいこともあって、欧州ではこぞってジュニパーベリーが使われたのである。ジンの語源もジュニパーに由来する。

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希少なジンも取り揃える「バー コパン」

オランダのジェネヴァからロンドン・ジンへの変遷

ロンドン生まれの世界的に有名なジンのブランドがいくつもあることから、ロンドンが発祥の酒と思いがちだが、実は、オランダで医療目的に用いられた、ジュニパーベリー入りの飲料がルーツだ。

欧州では、ジュニパーベリーの薬効は古くから知られており、14世紀の終わりにはジュニパーベリー入りの蒸留酒は医師の常備薬となっていった。16世紀になるとネーデルランド(現在のオランダトベルギーのあたり)では、20年間に及ぶぶどうの不作から、ライ麦や大麦で造られる蒸留酒にボタニカルで香りづけしたものが注目されるようになった。

なかでもジュニパーベリーで風味づけした「ジュネヴァ」がもてはやされ、嗜好品として飲まれるようになった。オランダの辞典に初めて「ジュネヴァ」の名が記されたのは1672年のことだ。

1688年にオランダ出身のウィリアムズ3世がイギリスで戴冠すると、ジュネヴァを奨励し、後のジンブームの下地ができた。また、同じくウィリアムズ3世の規制緩和により、イギリス国内で蒸留酒造りが広まり、ジュニパーベリーで風味をつけた「ジュネヴァ」が「ジン」と名を変え、人気を博すに至った。

ジンはジュネヴァに比べて甘味が少なく、きりっとした飲み口が特徴だが、あまりの人気に粗悪なジンが出回り、18世紀は”狂気のジン時代“と言われるまでになった。その後、政府により、粗悪なジンが禁止され、質を求める時代になっていった。1769年にはゴードン社が蒸留所を設立など、雑味の少ないシャープでライトな風味が信条のロンドン・ドライ・ジンに続く流れができたのだ。18世紀終盤にはジンのブランドが続々登場した。

代表的なロンドン・ドライ・ジン

こうして、ロンドンで造られるジンのクオリティが上がり、ロンドンはジンの本場として根付いていった。世界各国でジンが造られるようになった今も、この伝統的なロンドンのジンのことを、「ロンドン・ドライ・ジン」として特別にカテゴライズしている。都会的で洗練された切れ味のいい味わいが、ロンドン・ドライ・ジンの特徴。カクテルのベースとして最適だ。代表的なブランドに下記の通りである。

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写真左からビーフィーター、ボンベイドライジン、プリマス、ゴードン、タンカレー

ビーフィーター
1820年にロンドンで創業。今なおロンドンで蒸留を続け、創業以来のオリジナルレシピを守り続けている。ヨーロッパ中から厳選したボタニカルの豊かな香味が特徴。

ボンベイドライジン
1761年のレシピに基づく、ボンベイシリーズのスタンダードジン。厳選された8種のボタニカルを使用し、よりジュニパーベリーが感じられる仕上がりに。

プリマス
ジュニパーベリーの豊かでフレッシュな香りに、コリアンダーとカルダモンの香りが漂う。1896年「ドライマティーニ」のオリジナルレシピに使われたジンとして逸話が残る。

ゴードン 数あるロンドドライジンの中でも最も歴史のあるブランドの一つ。ジュニパーの風味を生かしながらも、華やかで軽快な飲み口。ジントニックを生んだブランドとしても名高い。

タンカレー
1830年にロンドンで創設以来、伝統的な製法が守られている。ボタニカルはジュニパーベリー、コリアンダー、アンジェリカルート、リコリスの伝統的な4種のみ。

伝統が息づくオランダ・ジン(ジュネヴァ)

現在も数多く作られているオランダのジン(ジュネヴァ)は、原料の一部に、穀物を原料とするモルトワインが使われているのが特徴。穀物の風味が強く残っていて、原料の風味を極限まで排したドライ・ジンとは、対極。いずれも、比較的甘口の濃厚な味わいが楽しめる。

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写真左からデ ボルゲン、ボルス ジュネヴァ、ノールド ジュネヴァ 15年

デ ボルゲン
最も高価な初期のジュネヴァ。またの名を「ダッチバーボン」。3回蒸留のジュニパーベリースピリッツとモルトワインのブレンドをシェリー樽でフィニッシュ。

ボルス ジュネヴァ
1664年、最も古くジュネヴァを商品化した、世界最古のスピリッツブランド。クラシックカクテルの再現を望むバーテンダー達の声から、1820年代のレシピをもとに蘇った名品。

ノールド ジュネヴァ 15年
原酒をホワイトオーク樽で15年熟成させることで、樽由来の甘い香りとジュニパーの香りが複雑にからむ芳醇な味わい。

第2回「クラフトジン」ブームの台頭 はこちら>>

Text: Hiroko Komatsu
Photograph: Sho Ueda

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