特別インタビュー
ジャケットがこんなに楽しいなんて。
[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。]
2020.05.08
多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。
若いころから、ジャケットを着るのは少し背伸びした、照れ臭い感覚があって苦手でした。大人になっても、職業柄もあってか、ほぼ冠婚葬祭でしかスーツも着ませんし、ずっとジャケットには慣れないまま。違和感なく着ることができるようになったのはここ数年。40代に入ってからです。自分も若くない年齢に入ったことで、単純に抵抗がなくなったのでしょう。それもまた楽しいことで。
でも若いときから憧れていた人たちは、いつもジャケットをカッコよく着こなしていた印象があります。たとえば安西水丸さん。サラっとアイビーっぽく着こなすジャケット姿はとてもオシャレでカッコよく、画風ともマッチしていました。
藤子不二雄Ⓐ先生もお会いしたとき、ピンクのマンモスが描かれたセーターにジャケットをはおっていて、ダンディーかつかわいさがあってすてきでした。
でも自分がジャケットを着るときに最も脳裏をよぎるのは、映画『恋愛小説家』のジャック・ニコルソンです。レストランで、ヒロインのヘレン・ハントとようやく二人きりでディナーをするシーン。それまでヨレヨレの格好だったのに、このときばかりはネイビーのジャケットにネクタイでビシッとキメてきた。そのジャック・ニコルソンがすごくカッコよくて! 観たのはずいぶん前ですが、本当に好きな人とのデートにジャケットを着て、おいしい食事を楽しむんだ、すてきなことが起きるぞという期待感や高揚感。自分もジャケットを着るとき、あのジャック・ニコルソンを思い出して、なぜかテンションが上がるのです(映画ではこのデート、大失敗に終わるのですが)。
今年は派手めのジャケットが欲しい。より明るい気分になって、外出が楽しくなると思うからです。ずっと着てこなかったぶん、余計にジャケットはウキウキするアイテムなのです。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)