カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ81
グレージャケットが休日デートでパートナーから高評価。
トレンドに返り咲いたジャケットのポイントは柄!
2020.10.08
大切な人と一緒に休日お出かけするときの服選びに悩んでいる人は多いはず。以前こちらのファッショントレンドスナップで、夏バージョンでネイビーのジャケットに白パンのスタイルをおすすめしましたが、今回は秋バージョン。超定番のグレージャケットにフォーカスし、その使い勝手のよさとスタイリングのコツを解説します。
今回のカップルは、気負いのない自然体のスタイルがとてもすてきだったので、お声掛けをしてスナップ。もちろん、新型コロナの感染拡大前でしたので、このようにお二人のディスタンスも密。場所は、ロンドンのなかでも最もファッショナブルな通りと言われるニューボンド・ストリート。
実は、イタリアではグレーのジャケットを着ている人は、あまり見かけません。ネイビーの一強と言っても過言ではありません。しかし、これがイギリスとなるとかなりグレー率がグッと高くなります。
スーツを生み、近代の男性ファッションの基礎を作ったイギリスでは、昼間の礼装はグレー、夜はブラックというのがフォーマルのルール。もちろんそれをいま厳格に守っている人を見かけるのは、王室式典や大学行事、ジェントルマンクラブなど特別な集まりのときなどに限られますが、そうした服の基本的なルールはヨーロッパのなかでもいちばん浸透していると言えます。
要するに何が言いたいのかというと、グレーは品格がある由緒正しい色で昼間の王道カラーだということ。
スナップに戻りますね。
このジェントルマンが着ているものは、遠目に見るとグレーの無地に見えますが、よく見るとV字と逆V字の織柄が縦に走るヘリンボーンと言われる柄。イギリスがルーツと言われています。ここ10年以上日本ではカラフルで繊細なイタリア産生地の人気が続いたので、この手の骨太のクラシックな生地を目新しく感じた方も少なくないのではないでしょうか。
事実、日本の30〜40代の百貨店やセレクトショップのバイヤーも同じ感覚を持っているのか、今季はこの生地を使ったジャケットやスーツが昨年に比べてかなり増えている気がします。
ヘリンボーンのうんちくを軽く書きましたが、本来のこの生地ならではの魅力があります。それはこの全身の画像に答えが。
このジャケットは、パンツはデニムやチノパン、ウールパンツともなんでも合わせられ、靴も茶や黒の革靴から白のスニーカーまで簡単にコーディネートできてしまうこと。とにかく、グレーのへリンボーンジャケットは、合わせるものを選ばず、パートナーを引き立てるという超優等生なのです。
こちらは、お二人が乗ってきた車。なんと1961〜1975年のあいだイギリスの名門ジャガーで販売されていた型で、Eタイプというマニアックな車種。しかし、よくもまあこんなデザインを考え出したもんですね。イギリスの工業デザインはスーツのように厳格で重厚なものが多いようですが、これはそのなかでもかなり異端なデザイン。そのため世界中のコレクターが探している激レアモデルでした。
今回のコーディネートは、足元を茶靴から黒靴に替えています。ここを白のレザースニーカーにするとちょっとスポーティーに仕上がります。ほかは白BDシャツにデニムという超定番ですから、ジャケットだけ買い足せばこのスタイルを再現可能。
今回、再現コーディネートで使ったジャケットの生地アップがこちら。イタリアのタリアトーレは、正統派のヘリンボーン柄を使いながらも、生地は毛×コットンのミックス素材にしてソフトで軽いものをチョイス。作りもカーディガンのように着られる楽ちん仕様というトレンド満載モデル。
ちなみにスナップのジェントルマンが着ていたヘリンボーン生地は、ゴワゴワしたちょっと毛羽立った正統派のイギリス生地でした。数年着ると体になじみ、生地もやわらかくなり味わいが出るのですが……。
足元は、ジェントルマンにならいクラシックなウィングチップに。ただし色は、汎用性のある黒に変更。このデザインはイギリスの伝統的なもので、昔はこれがゴルフシューズになったりハイキングしたりするときに履くカントリーシューズと言われるもの。つまりいまで言うカジュアル&スポーツシューズだったのですが、いまはビジネスシューズとしてのほうが知名度高いですね。
このクラシックな靴の解説をなぜ最後に付け加えたかというと、このつま先の表情が大切だから。最近メンズの革靴は、全体的に丸っこくちょっとクラシックなものがトレンドとなってきているからです。ここを先のとがったシャープな靴にすると、この独特のかわいさとヌケ感が消えてしまうのでお気をつけください!
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
トレンドスナップのまとめはこちら
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi