特別インタビュー

宇垣美里が「時代」になる。[前編]

2021.05.07

だれかのために戦える女性の仕事と人生論

その柔らかで落ち着いた第一印象は、芯の強さと卓越した言語化能力にすぐさま塗り替えられた。すごく楽しそうにアニメの話をする、「これ好き!」と言いながら差し入れのお菓子をおかわりする。その同じまなざしで、現実社会の難問に切り込む。気負わず正直に、世界に向けて自分を開く。いま最も目が離せない、宇垣美里が時代のミューズである理由。

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怒りを人生の「ガソリン」に変えて

「怒り」の表明ほど、難しいものはないかもしれない。空気を、関係性を壊したくない。そうして見過ごしがちな感情を、はっきりと言葉にして伝えてくれる女性である。アナウンス業はもちろん、文筆業でも才能をきらめかせる宇垣美里。2019年のTBS退社は大きなニュースにもなった。20代でフリーになるという選択肢に迷いはなかったのだろうか。

「そこまで大きな決断ではなかったですね。私の年齢で考えれば当たり前にある選択肢のひとつでした。仕事が一個も来なかろうと何年かは暮らしていける準備はしていたし、仕事が来なければそれは単に向いてないということだから違う仕事をすればいいと。この選択が間違っていたら人生が終わるみたいな気持ちはなかった。仕事に対してそこまでこだわりがなかったし、期待もしていなかったと思います」

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マンガや小説や映画……
宇垣美里を助ける「物語」の世界

セクハラ、女性差別、歴史問題……出演するTBSラジオ『アフター6ジャンクション』での、宇垣の発言は常に注目を集め、瞬く間にネットに拡散されていく。その発言に多くの人が勇気づけられる一方で、「正しさ」を期待されることにはしんどさがつきまといはしないか。宇垣は静かな笑みで言う。

「たまたま私がパートナーとしてそのタイミングに居合わせたから考えを言葉にする、というだけのことです。またそういう発言が許される土壌の番組ですし。ただその発言をあとから自分が恥ずかしいと思わないかというのは考えますね。それを言わなかったことで自分を嫌いになるくらいだったら言ったほうがいい。だれかにどう思われるとかじゃなく『あぁ自分、日和ったな』と後悔するぐらいだったら言ったほうがいいなと思います」

「こういうことは、言える人が言えばいい。私はあまり気に病むタイプではないので(笑)。発言することは、心が強かったりそういう立場にいる人のひとつの責務なのかなと」

「私自身、マンガとか小説とか舞台とか映画とか、好きなものにいろいろな面で助けられてきました。本のなかでは何でもアリじゃないですか。生まれや育ちも違えば、中世や異世界に行くことだってあるし、登場人物が様々な壁にぶち当たっては立ち上がっていく姿を見ているだけで勇気をもらえます」

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ジャケット ¥61,600、ワンピース ¥63,800/ともにエズミ(リ デザイン03-6447-1264)、ネックレス ¥42,900/スワロフスキー・ジュエリー(スワロフスキー・ジャパン コンシューマーサービス 0120-10-8700)、 イヤリング ¥8,800/ジュエッテ(ジュエッテ0120-10-6616)、リング ¥19,800/ジジ(ホワイトオフィス 03-5545-5164)、シューズ ¥128,700/クリスチャン ルブタン(クリスチャン ルブタン ジャパン 03-6804-2855

宇垣美里(うがき・みさと)
1991年4月16日生まれ。2014年4月にTBSに入社。アナウンサーとして数々の人気番組に出演。2019年3月にTBSを退社し、同年4月よりオスカープロモーションに所属。フリーアナウンサーとしてテレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。昨年11月には自身初の美容本「宇垣美里のコスメ愛 BEAUTY BOOK」(小学館)を発売。

掲載した商品はすべて税込み価格です。

インタビュー後編はこちら>>

「アエラスタイルマガジンVOL.50 SPRING / SUMMER 2021」より転載

Photograph:Kentaro Oshio
Styling:Mana Takizawa
Hair & Make-up:Miho Matsuda
Text:Chihiro Nishizawa
Edit:Tetsuya Sato

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