特別インタビュー

イースト・ヴィレッジが旅のはじまりだった。
石川次郎

2022.01.14

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若者向きのコンシューマー・マガジンの編集者になってまずやりたかったのが海外取材だった。1960年代の前半、外国はまだまだ遠く海外ネタの多くは通信社から買った情報であり、新聞社の外信部長のアルバイト原稿頼りだったので自分たちが本当に知りたいものとは程遠く、それが新米の雑誌記者には大いに不満だった。

自力で海外取材を敢行しようとまず向かったのはニューヨーク。そこには面白い人間がたくさん住んでいて毎日何かが起こっているに違いない、と思い込んで決めた旅先だった。

イースト・ヴィレッジはステーキ肉のような形の細長いマンハッタン島の南東にあり、北を東14丁目、南はハウストン通り、西をブロードウエイ、東はイースト・リバーを境にする長方形のエリアで、60年代の後半の頃は西側に隣接するグリニッチ・ヴィッレジの落ち着いて洒落(しゃれ)たスノビッシュな風情とは大きく異なり、どちらかといえば忘れ去られた町という感じが濃厚だった。そこに目をつけた金のない芸術家やミュージシャン、放浪の自由を求める若者たちが多く住みつき“ボヘミアンの街”になっていたのだが、そんな現象に面白い取材の可能性を直感した。

街に古いものと新しいものが混在することは世界中どこも同じだが、見え方は街によって随分と変わるものだ。東京は古いものは古くからの街並みの中にあるのが普通で、新しい物事はピカピカのガラスとコンクリートでできたエリアから生まれてくることが多い。

ところがニューヨークの場合、100年以上経った建物が街中に多く残っていて、それが大切に保存されながら使用されているから街の風景が大きくは変わらない。ソーホー地区に多く残っている19世紀に建てられたキャストアイアンの建物群がその好例だ。そしてそんな古びた建物の中から、とんでもなくアヴァンギャルドでモダンなものが飛び出してくる。それがこの街の面白さだということを知り、ニューヨークに来るたびにイースト・ヴィレッジに通うことになった。

次ページ60&70年代、街の痛快な変化の目撃者となって

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