週末の過ごし方
『ブラック・ミラー』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #12
2022.02.10
エミー賞を受賞した作品から観てゆくのもいいかもしれない。S3『サン・ジュニペロ』は唯一と言っていいほど後味が悪くなく感動できる内容だ。
1980年代の“サン・ジュニペロ”という街で性格も服装も真逆なふたりのヨーキーとケリーは出会い、ひかれ合い、恋に落ちる。このサン・ジュニペロという場所には、ある理由があり、限られた時間しか居られない……。時間も空間も飛び超えた感動の恋愛ドラマである。
S1エピソード(以下、ep)3『人生の軌跡のすべて』では、自分の記憶を常に録画できるチップを身体に埋め込むのが主流になった近未来を描く。その記憶は全ての判断基準になり、例えば就職試験や空港でもチェックされる。社会的信頼のために適用されたはずのシステムを、本来の使い方ではない使い方を人は考え出してしまうのだ……。
S4 ep 2『アークエンジェル』では、ジョディ・フォスターが監督を務めた。わが子が迷子にならないようにと埋め込んだGPS機能付きマイクロチップは、視覚もタブレットに反映させることができるため、いつしかわが子を常に監視するようになってしまった。すべてを知っておきたいと願う母親の愛が、思わぬ方向へと転がってゆく……。
S3ep1『ランク社会』では、「いいね」の数で人の価値が決まる世界を描いた。レンタカーを借りるにも、飛行機に搭乗するにも、すべて☆の数によって定まるランクに左右される。「いいね」稼ぎのために必死になる姿は、まさに現代社会への風刺だ。
そのほかにもスタートレックのようなゲーム世界に閉じ込められたり、アニメのキャラクターが選挙に立候補したり、亡き夫をデバイスでよみがえらせたり、運命の人をAIに見つけさせるシステムなどなど、発想の豊かさに圧倒される。
しかもそれが“起こり得るかもしれない未来”なのだから、背筋が凍る。もちろん便利になるに越したことはないのだが、そのシステムを使って悪用する者が現れるのは容易に想像がつく。人の欲望は計り知れないというのはもちろん承知のうえのことだが、倫理観を持ち合わせてテクノロジーを受け入れてゆきたいものだ。
「何話が好き?」という話で盛り上がれそうなこのハイセンスなブラックユーモアたっぷりのSFアンソロジードラマは、現在シーズン5までがNetflixにて配信中。合計22話あるなかからぜひお気に入りの作品を見つけてほしい。
ちなみに、映画版『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、視聴者が選ぶ選択肢によってエンディングが変わる“インタラクティブシネマ”。配信映画だからこそできるこのエンターテインメントを体感しないわけにはいかない。ゲームのように楽しめる仕様になっているので、ドラマ鑑賞後に体感してみるのもオススメだ。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo