週末の過ごし方
ピッティで見た、ファッションとサステイナブルのゆくえ。
2022.02.14
第101回「ピッティ・イマージネ・ウオモ」トレード・フェア(以下ピッティ)が、1月11日よりフィレンツェのバッソ要塞にて開催された。コロナ後のリアル開催2回目を終え「この3日間、盛況のうちに無事終了したことを関係者の皆さまに心より感謝申し上げます」と語るラファエロ・ナポレオーネ会長による関係者をねぎらう閉会あいさつには特別な重みがあった。
というのはオミクロン株が1月初頭から荒れ狂い、フェア初日には1日の感染者数が22万人という数値に跳ね上がってロックダウン寸前の事態であったからだ。会場は土壇場になってメインイベントやブルネロ クチネリなど約60社ものキャンセルが相次ぎ、関係者は対応に追われながら戦々恐々と現場に臨んだのであった。
幸いにもふたを開けてみたら出展社数548ブランド(海外企業30%含む)で前回比38%増、総来場者数も約8000人を超え同33%増、そのうちバイヤーは4900人でヨーロッパを中心に約60カ国からの参加数を記録。冬の青空に縁取られた派手な特設ブースが広場のそこかしこを彩り、前回よりも活況に満ちたフェアとなった。そんななか、今回群を抜いて目立ったのがサステイナブルに特化した新興ブランドの台頭である。
合言葉はリサイクルとサステイナブル
会場の広々とした中庭には、サステイナブル・ブランドの派手なブースが林立する。「地球環境を守るために服をつくる」スペインのEcoalf、その向かいには環境保護とアニマル・フリー100%で急成長し、今年創業10年目を迎えたイタリアのSave The Duck。社会責任とサステイナブルを目指すドイツのMarc’Opolo、サステイナブル経営のパイオニアHernoの大ブースは前回同様のポジションに鎮座しシルバーミラーに輝いている。コロナ前とは大きく様変わりした光景である。
「グリーン・モーダ」は足かせか金脈か
クラシコ系が主流のメインパビリオンでもサステイナブル系のブースは目立つ。ハイテク&エコ素材で2023年は売り上げ2000万ユーロを見込むPeaple of Shibuya、2年前からサステイナブルと機能デザインの融合を目指し、今回も飛躍的な商品展開を見せたピクアドロなど、コロナ下でも順調に成長しているブランドだ。いずれもグローバル市場相手にAI導入やD2Cを徹底するなどイノベーションに抜かりがないのは言うまでもない。
その背景には、世界のデジタル化の加速に加えて、「グリーン・モーダ」をキャッチフレーズにEU委員会や各国がコロナ下に次々と発布している最重要課題の「掟」がある。既存のアパレル企業の多くはその対応に必死だが、それをビジネスチャンスと捉えたプレーヤーには最新の「金脈」となったわけだ。
ヨーロッパのファッション業界に課せられた、まったなしの体質改善
その「掟」とは環境保護のための循環型経済を目指して、まず2025年までに各社で廃棄物回収とリサイクルシステムを構築するなど、環境汚染の原因ワースト2と言われるファッション業界にとっては耳の痛い、構造的改革を求められる内容ばかり。
今回のピッティは各社の最新の取り組みがクローズアップされる機会ともなり、やはりビジュアル優先の新興ブランドが目立ってしまっていたが、老舗ブランドも未来を見据えたサステイナブル戦略を確実に進めていた。では実際にどのような取り組みを展開しているのか。イタリアの代表的な4社にその奮闘ぶりを聞いてみた。