特別インタビュー
株式会社 ビーグリー
代表取締役社長
吉田仁平インタビュー[前編]
[ニッポンの社長、イマを斬る。]
2022.04.22
売上高は前期比1・5倍、会員数は600万人突破!電子コミックの黎明期に誕生した「まんが王国」の勢いが止まらない。2006年にスタートしたサービスは今や国内最大級へ。エンタメ業界が注視する上場企業はどこに向かうのか。ビーグリーの吉田仁平社長に話を聞く。

ITをけん引するのはコンテンツ!
日本のマンガをグローバルに
クリエイターとファンをつなぎ、 新たな価値を創造する。そんなミッションを掲げるビーグリーは電子コミック業界の歴史を切り開いてきた。「ネットやSNSの普及で個人の才能は出ていきやすくなりましたし、業界特有の関所や既得権益も薄くなってはいます。とはいっても……、以前よりは、という段階でまだまだこの先があると思っています。炎上や分断などのデメリットが少なくないなか、才能を埋もれさせず作品を読みたい人のもとへ正しく届ける。それをグローバルベースで作っていきたいんですね」、同社代表取締役社長の吉田仁平は言う。
『まんが王国』はビーグリーの前身であるビービーエムエフが2006年にスタート。当初は業界内でまったく相手にされなかった。作品を掲載しようにも許諾が下りず、作家との直接契約に踏み切ったこともある。現在、電子コミックといえばアプリだが、それすらない時代だったから展開はブラウザで始めた。また、広告出稿では外部の代理店を介さず、ノウハウ蓄積のため戦略的に自前で行ってきたという。地道なトライ&エラーが結果的に中間マージンの圧縮にもつながり、他社に先んじたお得感へと結びついてもいる。
「僕自身は火中の栗を拾ってしまうタイプなんですね(笑)。反対されればされるほど燃えてしまうクセが幸いしたというのか」。ビーグリーは17年にマザーズに上場し、翌年、東証一部に市場変更した。その成長の過程は中途入社ながら13年に社長に就任した吉田とともにある。経営者に必要な資質を尋ねると「諦めないメンタリティー、ですかね」と返ってきた。
「社長の周辺はなんていうんでしょう、簡単じゃないことばかりが起きるわけです(笑)。めげず、諦めず、粘着質にやっていこうと自分自身を励ましてきたところがあ
りますね」
就任後に社名をビーグリーに変え(『進化論』のダーウィンが乗った船名に由来する)、外苑前にほど近いオフィスに移転した。『まんが王国』の累計ダウンロード数は単行本換算にして当時の5倍以上となる16億冊を超えている。