週末の過ごし方

小松美羽、時空を超える作品を描いて。
「ネクストマンダラ - 大調和」が公開中!

2022.07.05

写真・図版

展示準備のため、約4メートル×4メートルの巨大な作品が岡本太郎美術館の展示室の天井からゆっくりと降りてきたとき、小松美羽は、不思議な気持ちに包まれていた。自分が描いたものとは思えない、あたかも傍観者のような目で自身の作品を見ていたのだ。

「ネクストマンダラ - 大調和」と銘打たれた二幅一対の絵は、京都・東寺の食堂(じきどう)にこもり、没入し、一心不乱に描いた力作だった。

小松はこう振り返る。

「本当に私は東寺にいたのかな、本当に私は描いていたのかなという気持ちでした。確かに私が描いたのかもしれないけど、やっぱり、天からのいただき物で、描かせていただいたという思いが強かった」

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東寺での作業風景。その集中力は「神がかった」ものが。

二幅一対の「ネクストマンダラ - 大調和」には、東洋西洋の神獣、陰陽、生死、宇宙などがちりばめられ、2つの絵図をもってして大調和する2極の霊性の世界が表現されている。細部に踏み込めば、細部が何かを訴え、細部同士が共鳴し合い、物語るという重層の構造だ。

制作した曼荼羅は、岡本太郎美術館などで展示されたのちの来年10月、真言宗立教開宗1200年を記念し、真言宗総本山「東寺」に奉納される。そして、そののち、小松の作品は、何百年、何千年という歳月をこの東寺の境内でひっそりと過ごすこととなる。公開されるのも、ごくごく限られた期間だ。それらのことだけで、この作品が実に特異なアートであるということがわかってくる。

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左右に鎮座するのが「ネクストマンダラ - 大調和」。

当然、小松もまた、その時空を超えた歳月を念頭に置いている。

「年数を意識して描いたというわけではないのですが、1000年先の人にとっても魂は魂ですからね。いつでも、どんなときでも、そのたったいま生きている時代の日を起点にして、未来形であるようにということを考えています。もちろん、1000年ということで言えば、絵具がひび割れたりしないようにリスクを減らすとか、金箔を工夫してもらったりとか、劣化させないような技術は意識しました」

「ネクストマンダラ - 大調和」は、すでにアーティストとしての集大成、ゴールという気すらしてくるが、37歳の小松にとっては、もちろん通過点に過ぎない。

小松の原点にあるのは、生まれ育った自然豊かな長野県での日々だ。動植物に触れ、見えないものを見て感じとっていた幼い頃の体験がいまなお五感の源流として脈々と流れているのだ。

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岡本太郎美術館での展示入り口にて。

作品の制作に入る前、小松は、必ず瞑想を行う。

「一点に集中し、自我をなくし、無邪気な精神状態となると描くべきビジョンが見えてくる。その意識の状態を私は、『ミニシアター』と呼んでいるのですが、そこで見えてきたものを指針に描いていくのです」

「瞑想と祈り」が小松の中で欠くことのできないものとなったのは、2015年にタイの鍾乳洞に行ってから。鍾乳洞の中で瞑想を始めると、荘厳な世界に導かれるのを感じたのだ。

小松の作品は、世界的にも高い評価を受け、有田焼の狛犬「天地の守護獣」が大英博物館に収蔵されたり、各国で開催された個展で観客動員、セールス記録を塗り替えたりしている。現代アートを求める人々、心の渇きを癒やさんとする人、国内外のコレクターとさまざまな人々がいま小松美羽に秋波を送る。

銅版画、アクリル画、有田焼とさまざまな表現手段で作品を生み出してきた小松だが、新たなフィールドも見据えている。

「美術館で展示するのもいいことなんですが、普通にみんなが生活している環境の中にアートがあることもすごく大切なことだと思う。意志を持って見に行くというのではなく、街でたまたま出合う私の作品が、ちゃんと生活の中に溶け込んでいて、ある日ふと関係性が持てるような作品づくりを私はしてこなかったな、と。パブリックアートというのがこれからのひとつのテーマです」

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小松が見据えるビジョンとは――? 期待が募る。

現在、小松の作品を網羅した展覧会「小松美羽展 岡本太郎に挑む - 霊性とマンダラ」が川崎市の「岡本太郎美術館」で開催されている(~8月28日)。小松は傑人への畏敬の念を隠さない。

「太陽の塔にしても、あの場所にしかるべくして呼ばれてつくられている。あるいは、井の頭線の渋谷駅に行けば、『明日の神話』がある。そんなパブリックアートをちゃんとやってきた岡本太郎さんって、やっぱりすごいなと思う。岡本太郎さんの拓(ひら)いてくれた道は大きい」

パブリックアートを意識するのは、「アートは、人の心や魂を救う薬だと思ってやってきたけれど、まだまだ形にできてはいない」と思うからでもある。

あらゆる世界の大調和に向けて、小松美羽は、ひたすら祈り、描き、つくりつづける。

小松美羽展 岡本太郎に挑む - 霊性とマンダラ
期間/2022年6月25日(土)~8月28日(日)
場所/川崎市岡本太郎美術館
開館時間/9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館/月曜(7月18日を除く)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料/一般1000円、高・大学生・65歳以上800円、中学生以下無料
https://www.taromuseum.jp/

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プロフィル
小松美羽(こまつ・みわ)
1984年長野県生まれ。銅版画からスタートし、アクリル画、有田焼などに制作領域を拡大。202024時間テレビ『愛は地球を救う』でのライブペイントによる作品が、2000万円で落札されたのは記憶に新しい。

Text: Haruo Isshi
Photograph: Yuji Kawata(Riverta Inc.)

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