週末の過ごし方

稲見萌寧は「不安」が原動力、2020東京五輪銀メダルでも
海外メジャー大会に出ない理由とは。

2022.07.13

女子ゴルフの今季国内ツアーは、ニッポンハムレディスクラシックで前半戦の19試合を終了した。今季から賞金ランキングに代わってポイント制のメルセデス・ランキングが優位性を持ち、1位には20歳で5勝を飾った西郷真央が立っている。2位は同じく20歳で2勝の山下美夢有で、3位には21歳で2勝の西村優菜がつけている。22歳で昨季(2020-21年統合シーズン)の賞金女王である稲見萌寧は4位。1勝を飾っているものの、昨季9勝(21年8勝)の実績を考えると物足りなさは否めない。

しかし、上位4人のなかではただひとり全試合に出場。11試合でトップ10入りしており、パーオン率1位(75.3296%)と安定感に変わりはない。シーズン当初は、オフの間に契約した新トレーナーとのトレーニングがフィットせずに苦労していた。「アドレス(ボールを打つ際の構え)で重心の位置が変わった感じがある」と言い、4月までに契約を解除した。続いて週交代で3人のトレーナーから指導を受けたが、改善には至らなかった。そのうえで、5月に入った段階で昨季までのトレーナーと再契約。デビュー時の2018年からの関係で、稲見も「少しずつ、私のゴルフができそうな雰囲気です。ハマるのは夏ぐらいだと思います」と話していた。

言葉どおり、以降は調子が上向き、14戦目で6月のリシャール・ミル ヨネックスレディスで優勝。表彰式のスピーチでは「今年も勝てるかなって、すごく不安でした。なかなか勝てないんじゃないかと、ちょっと弱気になっていた部分もありました。本当に大きい(今季)初優勝です」と声を弾ませた。

「不安」。それは、稲見の生きざまを示すキーワードになっている。昨年の中京テレビ・ブリヂストンレディスで優勝を飾った後、稲見のキャディーを務めた奥嶋誠昭コーチは「常に彼女は不安だし、だから練習する」と話しているが、とにかく無休で練習をするのが稲見だ。

通常、男女を通じてツアープロたちは試合を終えた日曜日に帰宅し、月曜日は休養に充てる。同日の夕方から次の試合開催地に入り、翌日から会場で練習ラウンドとなるが、稲見は月曜日もクラブを握って練習をし、キックボクシングなどのトレーニングも重ねている。さらに試合が始まってからも細かくスイングをチェック。パット練習にも多くの時間を費やす。シーズンオフはさすがに体を休めるかと思いきや、最終戦の翌日から練習。今季もニッポンハムレディスクラシックの翌週は、試合のないオープンウィークとなったが、稲見は「練習漬けです。今年の目標は複数回勝ちたいってことなので、そこへ向けて頑張りたいです。休む意味が分からないです」と話している。

現在でツアー通算11勝。押しも押されもせぬトッププロで、昨夏の東京五輪では銀メダルを獲得している。当然、世界最高峰の米女子ツアーでの活躍も期待されるが、稲見は海外メジャー大会への出場に興味を示さなくなった。理由は「今の力で行っても上位で戦える自信はないし、自分が決めた目標は日本での永久シード。だから、勝てるうちに勝っておきたい」からだという。

永久シードとは、国内女子ツアー30勝以上の選手に与えられる試合出場権を指す。過去の獲得者は、樋口久子、大迫たつ子、涂 阿玉、岡本綾子、森口祐子、不動裕理の6人のみ。不動は2004年シーズンに史上最年少の27歳285日で30勝へ到達している。7月29日に23歳になる稲見もかなりのハイペースだが、残り19勝を「勝てるうちに」という発想も理解できる。

昨今の国内女子ツアーでは、1998年度生まれ「黄金世代」以下の若手が席けんしている。さらには、プロテスト合格間もない18、19歳の選手も上位に入りはじめているなど、入れ替わりが激しく、油断をすればすぐにランクを落としかねない厳しさがある。そして、ひとたびスランプに陥れば簡単に復調できないのがゴルフ。トッププロが瞬く間に上位ランクから消えるケースがあり、23歳で年間1億2667万5049万円を獲得して2013年の賞金女王になった森田理香子は、28歳となった2018年には年間104万円。同年で一線を退いている。

そうした怖さを知る稲見は、選手として成長・充実期にある今、「国内に専念して優勝を狙っていく」ことを選んだ。ネット上では「世界を目指さないのはプロとしてどうなのか」といった批判もあるが、早期に30勝に到達すれば、将来への不安も消え、そこから海外挑戦もできる。軸のしっかりとしたスイングのごとく、稲見はブレずにわが道を行く。

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