週末の過ごし方

上白石萌歌さんと巡る、横浜“昭和クラシック”紀行。
第1回 ホテルニューグランド

2022.12.01

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時流にそぐわない言動や古い慣習を指して“昭和的”や“昭和っぽい”などと揶揄(やゆ)される現代。一方で、どこか懐かしい面影を残す建造物やデザイン、さらにあえて手間を楽しむアナログ機器などが“昭和レトロ”として、SNSを中心に若者世代から厚い支持を集めています。そこで、古くから諸外国との貿易の中心であり、クラシカルなたたずまいと異国情緒あふれるレトロスペクティブな街・横浜を俳優の上白石萌歌さんと巡ります。2000年生まれの彼女にとって、長い歴史や伝統が息づく港町とそこに根差す文化はどのように映ったのでしょうか。

連載第1回は、横浜・山下公園前のランドマークであり、過去にはマッカーサー元帥やチャップリン、ジャン・コクトーといった世界的なゲストを迎えるとともに、池波正太郎や松田優作らも愛した日本有数のクラシックホテルであるホテルニューグランドにお邪魔します。

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「企画の詳細が決まる前に、マネージャーさんに『ここへ行きたいな』って話していたので、(訪問先の)リストに入っていてすごくビックリしました」

プライベートでもホテル内にあるコーヒーハウス「ザ・カフェ」に何度か訪れたことがあるという上白石さん。「横浜は電車で来ることが多いのですが、ちょっとした遠出感があるから好きなんです」と語るように、つい先日も関内ホールで行われた大好きなヨーロッパ企画の舞台を観劇するなど、横浜には何かと訪れる機会も多いようです。

1927年開業のホテルニューグランドは、銀座和光や第一生命館などを設計した、日本の近代建築を代表する建築家・渡辺 仁が設計を担当。今回、ガイドを担当していただいた営業企画部の横山さんによると、関東大震災の復興のシンボルとして建築されたもので、シンプルな西洋風の外観とジャポニズムを巧みに採り入れた内装との和洋折衷的な意匠が特徴です。

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「照明のデザインもすごくすてきですし、この場所に居るだけでどこか背筋がピンと伸びるような気がしますね」と、ハリボテのセットでは決して再現できない、重厚かつノーブルな空間に圧倒された様子。“横浜家具”と呼ばれる開業当時から使われている趣のあるテーブルや椅子、建物の外側に見える山下公園や海辺を額縁に収めたような借景を演出する大判のガラス窓など、ひとつひとつに宿るストーリーや逸話に耳を傾けながら、真剣な表情で質問する姿が印象的です。

上白石さん自身も普段からフィルムカメラを愛用するとあって、今回用意したライカのカメラを操作するのも実に手慣れています。大学では美術史を学び、つい先日もアメリカの現代写真をリードする、アレック・ソスの個展に赴くなど、その興味の対象は時代やジャンルを問わず多方面に向けられているようです。

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撮影が始まる前、「昭和って聞くとどんなイメージですか?」と随分ざっくりした質問をぶつけると……。

「昔のことはみんなよく思うのかもしれませんが、例えば、私の好きな昭和歌謡のようにいろいろな文化のエッジが利いていて、エネルギーあふれる元気な時代というイメージがありますね。それに、今ははやり廃りが個々人の中だけで完結している気がしますが、その時代その時代に誰もが知る流行があるってすごくすてきなことだと思います」

ここホテルニューグランドも、2007年、経済産業省が選んだ近代文化産業遺産に認定されるなど、年月を重ねるごとに歴史的な価値を高めています。ただ、開業当時の「ボールルーム(舞踏室)」は、横浜のしゃれた大人たちが集うサロンとしての機能を併せ持つなど、最先端の社交場だったとか。当時の流行やトレンドを象徴するメインストリームな場所が、クラシックとして後世に名を残していることを考えれば、“昭和”をただの古い時代の象徴に押し込めるのは間違っているのかもしれません。

撮影終了後には、「いつか必ず泊まりに来ますね!」と、ガイドを務めた横山さんと固く握手を交わした上白石さん。見えすいた社交辞令やリップサービスを口にするタイプでないことは今回の取材を通して強く感じていただけに、その言葉にも説得力が帯びています。触れると幸せが訪れるとうわさされるホテルのキングススチェアの天使像をめでる屈託のない笑顔を見ていると、再訪する願いはすぐにかなうと思わずにはいられません。

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〈上白石萌歌(かみしらいし・もか)〉
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年、第7回「東宝『シンデレラ』オーディション」グランプリ受賞をきっかけに芸能界入り。2018年、『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『子供はわかってあげない』(21/主演)、『アキラとあきら』(22)、ドラマ『金田一少年の事件簿』(22)、連続テレビ小説『ちむどんどん』(22)などがある。アーティスト名義adieu(アデュー)として音楽活動も行う。2023年1月スタートのテレビ朝日系木曜ドラマ『警視庁アウトサイダー』への出演が決定している。

〈訪れた場所〉
ホテルニューグランド
1927年(昭和2年)に開業した横浜唯一のクラシックホテル。今回の撮影で使用した本館は、開業より変わらぬ豪奢なたたずまいをそのまま残しており、1992年に横浜市認定歴史建造物に、2007年には経済産業省が選ぶ近代化産業遺産の認定を受けるなど、山下公園前のランドマークとして横浜市民に親しまれつづけている。また、1991年にオープンした18階建てのタワー棟は、客室からベイブリッジや大桟橋を見渡せる眺望が人気。終戦直後にはアメリカのマッカーサー元帥が最高司令官の宿舎として使用をしたのをはじめ、国際都市・横浜の迎賓館として世界中のVIPを数多く迎えたことでも知られている。

神奈川県横浜市中区山下町10番地
TEL:045-681-1841(代表)
https://www.hotel-newgrand.co.jp

ワンピース¥59,400、リブトップス¥28,600/ともにタン(タン contact@tanteam.jp)、ロングブーツ¥30,800/カミナンド(グラビテート 03-3464-6588)、リング¥59,400/ヤヌカ(ヤヌカ https://www.januka.jp/)、カメラ「ライカQ2」¥792,000/ライカ(ライカカスタマーケア 0570-055-844)

【上白石萌歌さんと巡る、横浜“昭和クラシック”紀行。】まとめ

Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling:Ami Michihata
Hair & Make-up:Maiko Inomata(TRON)
Text:Tetsuya Sato

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