AERA STYLE MARKET
アエラススタイルマガジンがカミチャニスタにBDシャツを別注!
フィレンツェのシャツ職人、
レオナルド・ブジェッリ氏に聞く、シャツの現在地。
2023.03.15
最近はビジネススタイルのカジュアル化や多様化などが影響して、Tシャツやニットなどのいわゆる襟なしトップスの需要が伸びているそうだ。ただ、男性にとってシャツがマストアイテムであることは変わらない。時にエレガントに、時に誠実に―――。シャツは着こなしによってさまざまな表情を覗かせる、柔軟性が高いアイテムでもある。これまでの日常に戻りつつある今。シャツの存在はどのように変化しているのだろうか。
そこで小誌エグゼクティブディレクター兼Web編集長の山本晃弘がインタビューを実施。お話を伺ったのは、1990年からシャツづくりを開始し、94年に自らの工房を設立したシャツ職人レオナルド・ブジェッリ氏だ。彼が手がけるカミチャニスタはオンラインストア専門のシャツブランドで、まさにイタリアの美学が体現されている。クラシックなスタイルをベースに、最高のフィッティングが生み出す美しいシルエット。さらに生地から縫い糸にいたるまでの素材選びにもとことんこだわっていながら、手に取りやすい価格帯で提供している。そんなイタリア・シャツ界の名手が考える、シャツの現在地とは?
シャツは男性の象徴的なアイテム。
山本晃弘(以下、山本) レオナルドさんは、印刷職人からシャツ職人になったとお聞きしました。ファッションアイテムの中でシャツを選ばれたのは、なにか理由があったんですか?
レオナルド・ブジェッリ氏(以下、レオナルド氏) その答えは単純明快で、シャツは男性のシンボルだからです。
山本 まさにその話を聞こうと思っていました。男性のファッションで、シャツはどういうアイテムなのかということを。すごく大事なものですよね。
レオナルド氏 シャツもネクタイも男性の象徴的なアイテムですよね。女性は男性がシャツを着たり、脱いだりする姿を見るのが好きですし。
山本 その所作そのものも男性のセクシーさだって考えは、すごくイタリア的ですね。
レオナルド氏 あと、シャツはコットンなどの天然素材を使っていますよね。皮膚と呼吸をしながら纏うという感覚も好きなんです。
山本 そもそも歴史においてシャツは、下着の位置付けでしたよね。
レオナルド氏 700〜800年代は下着と一体化されていて、男性は襟だけ変えて過ごしていました。また、シャツはパジャマでもあり、一緒くたなアイテムでもあったんです。
山本 ファッションにおいて、シャツがエレガントな役割を果たすように変わってきていると感じますか?
レオナルド氏 現代では完全にそうですね。特にシャツとネクタイは、エレガントな着こなしに欠かせない組み合わせです。
目指しているのは、ス・ミズーラのようなシャツ。
山本 来日して日本の顧客の方たちと触れ合っていると思います。ビスポークオーダーイベントを通して、日本人は特に素材にこだわるとか、サイズ感にこだわるとか、イタリアの方と違いを感じることはありますか?
レオナルド氏 まず、ほとんどのイタリア人は自分のスタイルを持っています。オーダーする際にやりたいことの90%は決まっていて、私に任せるのは残りの10%。日本の方は完全にその逆です。自分のやりたいことは10%程度で、90%はなにがいいのか私に委ねる感じですね。
山本 それは面白いですね。ちなみにレオナルドさんが提案する場合、相手のスタイリングを見て考えるのか。それとも今までオーダーしたデータを見て考えるのか。サジェストのポイントはありますか?
レオナルド氏 その方のファッションと心を見て、さらには会話をしていく中でなにを求めているのかを理解して提案を重ねていきます。だから私に過去のデータは必要ないですね。
山本 データで考えるのは日本的な発想ですよね。そんなレオナルドさんが手がけるカミチャニスタのシャツのこだわりポイントを教えてください。
レオナルド氏 いろいろありますが、一番は仕立てですかね。商業的にしたくなかったので、人間の身体の動きに合うように袖を後付けにしています。手間はかかりますが、腕の可動域が広がって快適な着心地を味わうことができます。さらに身体に自然に沿って、かつ後ろ姿もすっきり見えるようにバックダーツを入れたり、肩のアーチに沿うよう2枚の生地で構成したスプリットヨークにしたり……。もちろん素材も細番手の上質なものを選んでいるので、個人的にはコストパフォーマンが高いシャツだと思っています。
山本 プライスは日本のビジネスパーソンにとっても、すごく大事なポイントです。これだけこだわっていて、¥10,000以下で手に入るのは嬉しい限りです。
レオナルド氏 お客様にス・ミズーラ(オーダーメイド)で作ったようなシャツを提供したかったんです。そして、その人にとって高品質で価値観が感じられるようなモノづくりを常に意識しています。
山本 素晴らしい! レオナルドさんのこだわりは、ファッションをもっと楽しみたいと思う気持ちの入り口にもなりますね。
これまでもこれからもシャツの存在は永遠。
山本 イタリアの男性はタイドアップであってもノータイであっても、シャツの着こなしが上手ですよね。レオナルドさんから見て、日本男性の着こなしはどうですか?
レオナルド氏 私は日本の方のほうが、イタリア人よりエレガントだと思いますよ。山本さんの今日の着こなしもとっても素敵です。
山本 イタリアの方に褒められるのはすごく嬉しいです。日本にはストラスブルゴのような感度の高いセレクトショップも多いので、レベルは上がってきているかもしれませんね。
レオナルド氏 日本のほうがファッションの流れが激しいですよね。最近はシャツにネクタイを締めるスタイルに戻ってきているのは、日本の方たちを見て感じます。
山本 イタリアはどうですか?
レオナルド氏 世界的にコンフォートがトレンドになっているので、イタリア人もスポーティなシャツを好む傾向です。それはパンデミックで働き方が変わってきたことも影響しているかもしれません。ただ、少しずつちゃんとしたシャツを着ていこうという流れも見られます。私の息子もスポーティなものしか着なかったですが、彼女とのデートはシャツにネクタイでビシッと決めることが増えましたから。
山本 せっかく外に出かけるなら、きちんとドレスアップしたい気持ちに変わってきたということですか?
レオナルド氏 そうですね。通常の生活に回帰してきているので、シャツとネクタイというスタイルも多くなっていると思います。
山本 となると、今回別注で作ったボタンダウンシャツはどうでしょう。日本人はすごく好きなデザインでビジネスでも取り入れています。レオナルドさんはどういったイメージを持っていますか?
レオナルド氏 イギリスのポロ競技から生まれた襟型なので、スポーティなイメージですね。職種によってはイタリア人も仕事で着ていますが、ビジネスウェアとしては少ないかもしれません。ただ、シャツを着ていると基本的にきちんとした印象がとても強くなります。Tシャツやニットを着ている人に比べると、スポーティなボタンダウンでもプロフェッショナルに見えると思いますよ。
山本 襟がついているものを着ていると、その人はきちんと見えるという原稿をちょうど書いていたので強く共感します。やはりシャツはビジネスパーソンにとって、一番大切なアイテムということですね。
レオナルド氏 たとえ働き方が変わってもシャツは永久的に残っていくと思います。そして、セクシーにもプロフェッショナルにも見える稀有なアイテムです。だからこそ日本のビジネスマンも積極的に着てもらいたいですね。
山本 シャツにはセクシーとプロフェッショナルの両面性があるというのは新鮮でした。イタリアのシャツ職人の方からお話を聞くと、やはり新しい視点が生まれますね。
カミチャニスタの別注BDシャツが
アエラスタイルマーケットにて発売決定!
Text: Kyoko Chikama
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)