週末の過ごし方
『キラー・ビー』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #46
2023.04.27
この社会問題から目が離せない。
そんな異常な心理状態を示唆するかのように、4話では実際に存在したカルト集団「NXIVM」のエピソードが描かれる。カルト集団の代表を演じたのは、なんとあのビリー・アイリッシュ。ドラマ初出演とは思えないほど、神秘的で、思わず洗脳されてしまいそうなほどの怪演を見せた。
この作品のショーランナーを務めたのは、チャイルディッシュ・ガンビーノとして音楽活動も行っているドナルド・クローヴァー。『This is America』でアメリカの社会問題を痛烈に描き、世界に衝撃を与えたことで知られる。MVにおいても真相は定かではないが、実際に起きた数々の事件や、人物をモチーフにしていると多くの憶測を呼び、たびたび議論されてきた。本作でも彼の痛烈な批判は続いているのだ。
ドレが殺人を続けていったように、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷の言葉たちは、ナイフや銃になり、人を殺めているのだと言わんばかりに過激な描写が続く。ほかにも、マイケル・ジャクソンの娘であるパリス・ジャクソンがストリッパー役で出演しているが、リアルでの問題発言をセリフに採り入れていたり、6話で急にモキュメンタリー式にガラッと作風が変わったり、と全7話と少ないなかに語りたくなる見どころが満載なのだ。
『キラー・ビー』はAmazon Prime Videoにて全7話配信中。怖い! 本当に怖い! ホラー作品なのだから当たり前なのだが、目を背けてはならない社会問題が、そこにはある……(18+)。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo