週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
少年の心と「皐月」のショートパンツ。
2023.05.15
二十四節気(にじゅうしせっき)における「立夏(りっか/5月6日ごろ)」とは、「夏が始まる日」とされている。皐月(さつき)の異称のひとつに「仲夏(ちゅうか)」ともあるように、暦の上ではいまはもう、「夏」真っ盛りなのである。
そんな「夏」らしさと、撮影場所としてお借りした海辺のリゾートホテルに漂うムードを意識して、われわれが町田啓太のために用意したのが写真の「ショートパンツ」スタイルだ。
「個人的にショートパンツが好き。元々“山っ子”なので、野山を駆け回るようなラフなイメージがすぐに湧くが、このスタイルは違う。生地も、コーディネートもエレガント。リラックスした雰囲気を醸しつつも、ある種の“正装”を思わせるような凛々(りり)しさが気に入った」
ともすれば「子ども」っぽいイメージになりがちなショートパンツだが、素材感と着こなしに気を使えば、品のいい大人の装いとして十分に成立する。実際、北大西洋に浮かぶ英国領・バミューダ諸島では、膝あたりまでの長さのショートパンツ、つまりはバミューダパンツの公式の場での着用を認めており、いわゆる正装と同じ扱いに定義しているほどだ(正装としては、膝下までの長さの靴下の着用なども必須)。
さて、5月は「こどもの日」(端午の節句)を有する月でもある。“わんぱく”なショートパンツ姿が似合っていたであろう町田少年を想像しながら、このあたりの思い出を尋ねると――。
「姉と妹に挟まれ育った自分にとって、5月5日は『ボクの日』みたいなもの。おもちゃの兜(かぶと)をかぶり、2本の刀を手に、桃太郎のように仁王立ちする写真を母親が持っていた。それはもう、誇らしげで。幼少期は祖父母と過ごす時間が長く、一緒によく時代劇を見ていた。武将に憧れを抱いていたのは、おそらくその影響だと思う」
俳優としての町田の真骨頂はさまざまな役柄で発揮されるが、時代劇で際立つ存在感を評価する声も多い。本人も冗談交じりで「小さいころから『大河(ドラマ)』に出る準備ができていた」と言うが、確かに町田少年に与えた家族とその環境の影響は計り知れない。
「祖父と鯉のぼりを揚げたり、片づけたりするのも楽しかった。これもまた、家族の歴史。いま改めて四季折々の行事について親たちから学び、甥(おい)っ子に伝えてあげたい――」
この夏も、町田啓太は忙しい。おそらく、実家に戻ることもままならないだろう。だがしかし、願はくは少しだけ、ほんの少しだけでもいい……。ショートパンツ姿で心を解放し、家族と過ごす豊かな夏休みを彼に! いちファンは、ひそかに祈る。
FROM EDITOR
少し前の話になりますが、3月に行われたエルメスの2023年春夏メンズコレクション ショー IN TOKYOには胸が熱くなりました。ランウェイを闊歩(かっぽ)する町田さんが、本当に本当にカッコよくて……。そこには、ASMのファッション特集を飾るモデルの山田さんや朝比奈さんの姿も。軽やかにスケールアップする彼らの姿に、おじさん編集者は勝手に“親心”のようなものを抱き、そして、もっともっと彼らを応援したいと思った次第です。
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。現在、テレビ朝日『unknown』、WOWOW連続ドラマW『フィクサー』が放送および配信中。来年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)