カジュアルウェア

SHOWCASE
ビームスが掲載拒否したすごいスーツ。

2023.05.25

ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

写真・図版
「ハンドライン」の仕立てを担当したのは、今や世界的に人気を集める大阪のファクトリー、リングヂャケット。
左から¥181,500、¥137,500、¥173,800、¥173,800/すべてビームスF(ビームスF 03-3470-3946

仕事柄、ショップスタッフのInstagramチェックは欠かせないのだが、最近気になって仕方ないのが、ビームスFのスタッフさんがこぞって着ている、「ハンドライン」と呼ばれるスーツ。ちょっと低めのゴージ(襟の刻み)とワイドなラペル、そしてゆとりのあるサイドアジャスター付きのパンツが特徴で、決してタイトではないものの、肩から首にかけて吸い付くように登っていくシルエットはまるでビスポークのようだ。おそらく英国製だと思うが、使っている生地もハイレベル。スマホの画面を通して見ただけだが、20万円という価格は相当安く感じてしまった。

昨年春、そんな「ハンドライン」を早速このページで紹介しようと試みたところ、なんとこちらは入荷後即完売を繰り返しているヒット作ということで、あえなく掲載NG! その後も同様の理由で断られつづけ、ようやく掲載にこぎつけたのが今回というわけだ。

そんなわけで実物を見たのは初めてだが、いやはや聞きしに勝る完成度。普通なら前身頃にあるダーツを脇に寄せて、アイロン処理でウエストシェイプをつくる技術は、フィレンツェのテーラーが得意とする仕立てで、まるで着流しのように粋なムード。「ハンドライン」というだけに随所に手縫いの技術が用いられていて、その真骨頂が上襟と下襟の接合部で、手かがりならではの微妙なカーブが、ジャケットに豊かな表情を与えている。生地は想像どおり英国ものだが、縫い代をぜいたくに取っているから、多少太ってもサイズ調整が可能だ。世界の本物を知るビームスFのスタッフさんに支持されるのも、当然だろう。

それにしてもこのクオリティーで20万円以下というのは驚きである。ジャーナリストの端くれとしてはもっと高くてもいいんじゃない? という締め方をしたいところだが、ぼく個人としては、やっぱり安いほうが絶対うれしい! というわけで、今のうちに買っておいたほうがいいよ、と言っておくことにした。

山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。『MENʼS Precious』などのメンズ誌の編集を経て、独立。現在は『文藝春秋』のファッションページ制作のほか、webマガジン『ぼくのおじさん』を運営。

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「アエラスタイルマガジンVOL.54」より転載

Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)

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