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『THE DAYS』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #51

2023.07.06

『THE DAYS』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #51

「スポンサーがつく地上波ドラマや映画では不可能なくらい、事故の真相/深層をギリギリまで追求しました」

そう語るのは監督を務めた中田秀夫氏(ワーナーブラザーズHPより)。特定の企業が題材になる「福島原発事故」を描くことができたのは、Netflixだからこそ。

あれから12年経った今でも、廃炉作業は続いている。終わっていないのだ。

風化させてはならない、日本で起きたことだからこそ観てほしい。そう強く思い、今回は番外編として日本から世界に向けて発信するドラマ『THE DAYS』を紹介したい。

3.11――東北地方を中心に、甚大な被害をもたらした東日本大震災。地震発生から約50分後、予想をはるかに超えた13m以上の津波が福島第一原発を襲い、発電所の全電源喪失。稼働していた3つの原子炉の核燃料は冷却機能を失い、メルトダウンを起こしはじめた。

翌日12日に1号機が、続いて14日には3号機が水素爆発を起こし、旧ソ連チェルノブイリ原発事故と並び、最も深刻な原子力事故とされる“レベル7”に分類される「福島原発事故」は起きてしまった。

本作は事故収束作業の指揮官を務めた吉田昌郎氏の調書と、東電がまとめた「福島原子力事故調査報告書」、ジャーナリストの門田隆将氏が関係者にインタビューしてまとめた「死の淵を見た男」を参考に脚本が構成された。監督を務めたのは『コード・ブルー - ドクターヘリ緊急救命』などで知られる西浦正記氏、そして『リング』『灰暗い水の底から』の中田秀夫氏だ。

なぜ起きたのか?ということよりも、電力会社組織、政府、原発所内で対峙した人々がどのように連携し対応していたかを、時系列順に物語は進んでゆく。

中央制御室や建屋内では停電のため懐中電灯などの少しの光を頼りに、事態を把握しなくてはならない。執拗に暗い描写や、電気がショートした際に発する火花で一瞬状況がわかるシーンなど、見えない恐怖を着実に表現し、緊張感を倍増させる。

状況は? 知る術がない、こうだと想定したら次は? 手探りで未曾有の出来事に対応しなければならない。災害により文明を失った状態で、いかに文明が作り出した暴走する核燃料を制御するのが困難なことかを知ることとなる。

実際に起きた事故だからこそ「忠実さ」を求められる題材なだけに、俳優陣は相当なプレッシャーであったに違いない。吉田所長を演じた役所広司を筆頭に、小林 薫、竹野内 豊、小日向文世など、名優たちが勢ぞろいし、迫真の演技に魅せられた。決して山場などなく、淡々と対応しているなかにも、憤り、恐怖、混沌たる感情が感じられ、大きな感動を生み出す。

当時を振り返れば、不明瞭な言い回しが多く、日々更新されていく情報に振り回されるばかりだった。水素爆発の映像を観て、200km以上離れた首都圏でも、他県に避難する人たちも見かけるなか、「本当にここにいて大丈夫なのか?」と日々不安を募らせる毎日を送っていた。しばらく風向きや、各地のモニタリングポストの放射線量が報道され、見えない恐怖と誰もが闘っていた。

そんななかで被災しながらも、政府や本店の指示を受け入れながら、命をも奪いかねない状況のなか、事態の収束に向けて立ち向かっていた人たちがいたことを、私たちは知らなければならない。

Netflix世界総合ランキングでも見事トップ10入りを果たした『THE DAYS』。世界をも震撼させたこの話題作を、ぜひお見逃しなく。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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