週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
山に親しむ、「葉月」の機能派ウエア。
2023.08.10
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」としてつづっていく。
木々の「葉」が生い茂る山が好き。
町田啓太の夏の思い出とは――?
「自分は山っ子」
町田啓太へのインタビューで幼少期に話が及ぶとき、よくこのフレーズを耳にする。山河が織りなす風土に生まれ、そこここを駆け巡って遊び、のびのびと育ってきたであろう町田少年に思いをはせると、「言い得て妙」と感じるのは筆者だけだろうか。
大人になった今も、山が好きだと言う。ここ数年は仕事のスケジュールがハードでなかなか時間を割けないようだが、やはり夏になると山でのアクティビティが恋しくなるようだ。
「木々の葉が生い茂る山に足を踏み入れるのが好き。登るほどに景色が変わり、植物の表情や空気の微妙な変化に意識が向く。山ではイレギュラーなことも起こりやすいが、自分としては危険にならない範囲でそれらも楽しみたい。例えば、天気。以前、友人たちとのキャンプでテント泊をした明け方、パラパラと雨が降りはじめた。テントを打つその音と、周囲に霧が立ち込めるムードが本当に気持ち良かった。忘れられない夏の思い出のひとつだ」
アウトドアウエアをまとい、
まばゆい夏の山を謳歌する。
明日、8月11日は「山の日」である。この日が制定されたのは2014年で、国民の祝日となったのは2016年のこと。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としているが、由来の規定はない。漢数字の「八」が山の形に見えることや、「11」に木々が立ち並ぶイメージが重なることからそう呼ぶという説を耳にするが、あくまでも後付けの説明のようだ。
由来はさておき、この比較的に新しい祝日とその素晴らしい趣旨にふさわしい装いとして、われわれが町田のために用意したのがゴールドウインの現代的なスタイリングだ。同ブランドは、1950年に富山県で創業。以来、70年以上も「自然と一体化する瞬間を最も純粋な体験にするためのブランド」として進化を続ける。ここ数年は、都市生活者の合理的な快適性を追求するラインアップも拡充。幅広い層から支持されている。
「きちんとドレスアップするスタイルは大好きだが、ふだんは着用していてストレスのない、リラックス感のあるアイテムを選ぶ傾向にある。機能性を重視したアウトドアウエアは着ていて“楽”。職業柄、移動の多い自分には合っていると思う」
さて、8月を指す「葉月(はづき)」の由来は、「葉落ち月」を略したという説が有力のようだ。葉が落ちる、つまりは秋の訪れを告げる和風月名ではあるが、まだまだうだるように暑く、その到来を遠く感じてしまうのが本音だろう。だがしかし、機能性に富むアウトドアウエアに身を包み、生い茂る葉がまばゆい夏の山を謳歌(おうか)するのも悪くない。「紅葉の山も好きだ」という町田と共に、秋の訪れを少しだけ心待ちにしながら――。
FROM EDITOR
Voicyチャンネル「アエラスタイルマガジンの談話室」での、町田啓太さんとの“おしゃべり”はお聞きいただけましたか? そこで町田さんに語っていただいたとおり、この連載は本当に「いいチーム」によって支えられていると思います。それぞれが緊張感をもってプロフェッショナルな仕事をしつつも、全体的に和やかなムードが絶えません。回を重ねるごとにチームの結束は強くなり、さらに “いい仕事”ができそうです。昨年12月の「師走」からスタートして、あと3カ月でまる一年。もっともっと皆さまに楽しんでいただけるよう、チーム一丸となって頑張ります!
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。9月15日公開映画「ミステリと言う勿れ」、来年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)