接待と手土産
「三輪山本」の白龍と白髪
すべて実食! 自慢の手土産 #113
2023.08.03
素麺界の革命児が造る、つるつるの極細素麺
私は元来の麺好きで、特に夏場は素麺の登場頻度がかなり高い。名の知れたメーカーの製品であれば、総じてどれもおいしいが、「三輪山本」の素麺は、明らかにほかとは違っている。主力商品の「白龍」は、直径約0.6ミリの極細麺だが、一本一本の存在感が半端ない。口あたりは絹のようになめらかで、コシの強さとのど越しのよさがあり、つるっと跳ねる躍動感がなんとも心地よいのだ。
超極細麺の「白髪」は、約0.3ミリと驚きの細さだが、繊細でありながら、同様にしっかりとした弾力とコシがある。もともと高級料亭の椀物用の特注品だったそうで、どこか気品もある。三輪山本の素麺は、10gが何本分にあたるかによって太さを表しているが、白龍は約130本、白髪はなんと約300本、すべて手延べのため、太さは微妙に異なると聞いたが、私からすると反対に手延べとは思えない均一さに驚かされる。
白龍のゆで上がり時間は60秒、白髪は30秒。冷水で洗ったら出来上がり。さっと食べられるのも、この猛暑の中ではうれしい限りだ。
奈良県桜井市は手延べそうめん発祥の地として知られるが、そのなかにあって、三輪山本は独自路線を行く。小麦粉は大手の製粉メーカーに、専用のオリジナルブレンドをわざわざ作ってもらっている。そんな厳選した材料に加えて、素麺づくりに欠かせないのが、人間の“勘”だそうだ。もちろん経験があってのことで、工場には熟練のそうめん師がいて、天候や湿気、温度に合わせて、水分や塩分を調整している。製造時間は平均36時間。完成後1年間熟成させてから発送する。この熟成なくしては、独特のコシは生まれないそうだ。
三輪山本のこだわりは、書ききれないほどあるが、しゃれたパッケージもそのひとつ。創業300年を迎えた2017年に、社名を三輪そうめん山本から三輪山本に変更した際に一新。よくある贈答用の木箱を廃止した。ただ、新しい紙のパッケージは、贈る側の気持ちが伝わるようにと上質感にこだわった。デザインはあの佐藤可士和氏に依頼。品のよい純白のボックスに、カクカクとした文字がプリントされたモダンなデザインだ。これによって客の幅も広がったそう。300年超の老舗は時代に合わせて進化を続けているのだ。
素麺は日持ちするし、常備品としても優れている。それでいて日本人のDNAに刷り込まれた懐かしい食べ物。贈答品としても珍しくないからこそ、手土産の上級者は他とは一線を画す上質なものを選びたい。一番のおすすめは、定番の白龍と超極細の白髪の詰め合わせだ。白髪は製造に手間暇がかかることもあり、本店と通販のみの販売だが、食べ比べてみると三輪山本が素麺にかける情熱までも味わえるはずだから。
三輪山本
奈良県桜井市箸中880
営業時間/(4月~8月)10:00~17:00 (9月~翌年3月)10:00~16:30 ※売店
定休日/不定休
価格/白龍・白髪詰合せ340g(白龍50g×5、白髪45g×2)2160円・980g(白龍50g×16、白髪45g×4)5940円など ※税込み
問/0744-43-6662(売店・食事処)
https://www.miwayama.co.jp/