特別インタビュー
山あいの集落で、異国のようなニッポンを知る
軽井沢の森と語らう、町田啓太の優雅な時間。【前編】
2023.11.15
多忙を極めるわれらが町田啓太と、つかの間のリトリートを求め旅へ。
向かった先は、星のや軽井沢。
日本であり、異国のような空間が、町田の五感に何かを語りかける。
軽井沢には深い秋が迫っていた。
ここ「星のや軽井沢」の木々の表情もまた夏とは一変、一気に秋へと向かい始めていた。そんな秋の森へと一歩足を踏み入れた町田啓太は、思わず深呼吸を繰り返す。
近くの湯川から引き込まれた水がゆったりと流れ、何十もの樹種が育つ森と在来の草花たち。そうした自然を生かした広大な敷地の中に、谷の集落をイメージした建物が点在している。
実は、町田が少年時代を過ごした群馬県吾妻郡は、ここ軽井沢から車で1時間ほどの近さで、旧軽井沢をはじめ、家族と何度か訪れたことがあったという。ある意味でなじみある風土でもあるのだ。
ただ、「星のや軽井沢」を訪れたのは、この日が初めてで、そのすべてが町田には新鮮に映った。
「今年の夏は、味わったことがないような暑さだっただけに、こうやって軽井沢に来てみると、さらに特別感がありますね。清々(すがすが)しさというか、マイナスイオンの出方がもう全然違う。東京から新幹線で1時間ちょっとなのに本当に異国に来たのか、というぐらいの非日常感。そして、ここはとにかく自然との調和が素晴らしい。ゴージャスという感じではなくて、どこか懐かしさを感じるようなラグジュアリーさもあって、心からリラックスできる場所だということが入って来てすぐにわかりました」
敷地内で撮影が始まると、自身のファーストインプレッションが正しかったことを改めて認識する。時間が経過すればするほど、デザインされた自然と建物が身心になじんでくるのだ。その美しき調和に心が躍り、そして和む。
すべての撮影が終わった翌朝、「水波の部屋」でインタビューは始まった。町田の座るソファーの正面には、緑のグラデーションをたたえた森が鎮座する。
2010年のキャリアのスタートから話は始まる。町田はこの年、「第3回劇団EXILEオーディション」で約2000人の中からメンバーに選ばれていた。しかし、そのわずか4カ月後、町田は早くも試練にさらされる。初舞台『ろくでなしBLUES』の公演中に、ケガを負ってしまうのだ。それでも町田はその後の公演日程をこなそうとするが、周囲から引き留められ、いきなり数カ月の療養に入らざるを得なくなる。
「ターニングポイントはたくさんあると思うんですが、これから!みたいな20歳になりたてぐらいのときで、当時は受け止めきれないというか現実味がなかった。必死だったんで。いま思えば大きな分岐点だったなあと思います」
町田にとっては、重すぎる枷(かせ)でもあったのだろう、約13年前の出来事であっても、いろんな思いが伝わってくる。
「いまでも、あれがあったからいまがある、よかった、とは思えてない。いつか思うのかもしれないし、一生思えないのかもしれないけど、それぐらいのことでした。いまはようやく少し肩の力が抜けましたけど」
懸命のリハビリで復帰したのちも、ケガに見舞われたり、思うような軌道には乗れない日々が続いた。それでも、一作品また一作品と歩みを進めていくうちに徐々に町田啓太の名は浸透し始める。
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)、『フィクサー』(WOWOW連続ドラマW)など話題作に多数出演。11/24(金)には『ファミリーヒストリー』(NHK)、来年には大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
「アエラスタイルマガジンVOL.55 AUTUMN/WINTER 2023」より転載
ここには載せきれなかった町田啓太さんの写真はアエラススタイルマガジン Vol.55にてお楽しみください!
取材協力/星のや軽井沢
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Text: Haruo Isshi