特別インタビュー
四季折々の美味を求め、ここへの再訪を誓う。
軽井沢の森と語らう、町田啓太の優雅な時間。【後編】
2023.11.22
多忙を極めるわれらが町田啓太と、つかの間のリトリートを求め旅へ。
向かった先は、星のや軽井沢。
日本であり、異国のような空間が、町田の五感に何かを語りかける。
そして、いまや30代に突入した町田には、これまでとはまた一段違うステージが求められ始めている。しばしば主役級の役を任されるようになってきたのだ。
「一瞬、怖いなと思っちゃうときもありました。僕はもともと先陣を切ってみんなを引き連れてやるタイプではないので、自分がメインじゃないほうが現場がうまくいくんじゃないかと思ってしまったり。本当は芝居だけに集中すればいいんですけど、みんなは大丈夫かなとかつい気にしてしまって、自分で自分の首を絞めていくようなところもあったんです。でも、そんな自分の性質も踏まえたうえで、もう少し周りを頼って、楽しくやっていくことも最近はだんだんできるようになってきた」
隙間なく入ってくる仕事、真摯に向き合う先には――
年明けからは、大河ドラマ『光る君へ』(脚本・大石静)がスタートする。町田にとっては、『西郷どん』『青天を衝け』についで3作目の大河だ。
今回演じるのは平安時代中期に生きた藤原公任という公卿。歌人として秀で、百人一首にも登場する人物だ。主人公紫式部との接点も多い。
「いろんな資料を読んだり人物像を調べていくとめちゃめちゃ面白い人だということがわかってきた。わりと言いたいことを言う人で、そこは僕とも結構共通していたりして。75歳まで生きた長命の人だったので、おそらく10代から老いていくまでを演じることになるのだと思う。30代の自分がどう年を重ね、老いを表現していけるのか、それもすごく楽しみです」
町田の仕事は、なおも広がり続ける。たとえば、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』では教養番組の進行役という新たな分野にチャレンジしている。「半導体」「ゲノム編集」といった毎回異なるテーマを、膨大なセリフ量で町田が解説していく15分番組なのだが、これもまた血肉となっている。
「毎回スタッフさんたちが時間をかけて準備して、ものすごい量の情報から面白いところをピックアップして詰め込んだ番組です。ただ読んでいるだけにならないように僕自身もできるだけ調べてやるようにしている。毎回違うテーマを学ばせてもらってますが、本当に学びは楽しいなって思う。どこか倍速で喋(しゃべ)っているようなところもあって、毎回ハアハア言いながら収録しているんですけどね」
隙間なく入ってくる多様な仕事に、町田はこうしてひとつひとつ丁寧に向き合い続ける。その密度は増していく一方だ。
だからこそ、今回のような旅の仕事は、撮影がともなうとはいえ、町田にとってはご褒美のようなものでもあるのだろう。
「今回の軽井沢もそうですが、旅は、いろんな見方や世界観をファーっと広げてくれる。日常生活の中で、ちょっと視野が狭くなっていたりするのを俯瞰(ふかん)させてくれるんですね。僕にとっては、本当に貴重な時間なんです」
インタビューを終えてベランダに出た町田啓太は、軽井沢の秋を確認するかのように森に向かって両手を広げ、大きく深呼吸した。33歳の俳優の背中は、「さあ、明日への英気は十分に養われたぞ」と語っているようだった。
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)、『フィクサー』(WOWOW連続ドラマW)など話題作に多数出演。11/24(金)には『ファミリーヒストリー』(NHK)、来年には大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
「アエラスタイルマガジンVOL.55 AUTUMN/WINTER 2023」より転載
ここには載せきれなかった町田啓太さんの写真はアエラススタイルマガジン Vol.55にてお楽しみください!
取材協力/星のや軽井沢
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Text: Haruo Isshi