特別インタビュー
知的好奇心を解放する癒やしの旅に出る──。
上白石萌歌、アイヌ文化に触れる北海道へ。【前編】
2023.11.20
北海道の中南部にある白老町。
古くから先住の民であるアイヌ民族が暮らし、いまもアイヌ民族が多く住む町として、その文化や伝統を継承している。
俳優の上白石萌歌さんとアイヌ文化に触れる旅へ──。
小川のせせらぎに木の葉の揺れる音、土や深い緑の香りを感じながら白樺の木々が連なるアプローチを通り抜けると、世界がまるで変わった。「ここに足を踏み入れた瞬間からとても癒やされて、 来てよかったなと思いました」。到着早々そう感じたと言う上白石萌歌さんは、北海道白老郡にある宿「界 ポロト」を訪れた。
白老はかつてアイヌ民族のコタン(集落)があった場所。ポロトはアイヌ語で「大きな湖」を意味するように、界 ポロトはポロト湖畔に位置する。設計はアイヌ文化を尊重し、異なる民族との共生を体験できるよう、建築家の中村拓志氏が手がけた。計算された角度にあるロビーの窓からは気持ちのいい光が差し込み、ポロト湖の先には樽たる前まえ山さんも一望できる。
「私はお水の近くに癒やしを求めがちで、でも湖畔にあるお宿ってなかなかなかったりするので、こんなに近くに湖を感じられてうれしいです」。客室棟とつながるように架けられたカヌーの船着場で、この地とつながるかのように深呼吸する上白石さん。その向こうに見えるのは、銅ぶきのとんがり屋根の湯小屋。界 ポロトには趣の異なる2つの湯屋があり、ひとつがアイヌ民族の建築構造のとんがり湯小屋の「△ 湯(さんかくのゆ)」、もうひとつは洞窟や地中にいるかのような空間の「○湯(まるのゆ)」。世界的にも珍しい、太古の植物由来の有機物を含有したモール温泉が湧出する。
客室の戸を開けた瞬間、上白石さんの顔にぱっと花が咲いた。
「目の前にバーンと広がる湖、なんてぜいたくなお部屋! すごくモダンだけど気取っていない雰囲気にほっとしますね。もう、身を置くだけでいい、ここで本を読んだりするだけで満たされそうです。都会では感じられない静寂が心地いいです」と喜ぶ。
洗練と温かみのある客室インテリアは、壁紙、木彫りのオール・アート、クッションなどにアイヌ文様が採り入れられている。囲炉裏で語り合うアイヌ民族の家族観を継承し、囲炉裏型のローテーブルを囲む配置や集落の森を再現した白樺の丸太もあり、それらが外に広がる自然との一体感を与え、おのずと安らぎをくれる。
聞けば大の旅好きだという彼女。理想の旅は?と尋ねたら1日は宿におこもり、2日目に周りを観光して2泊はしたいと返ってきた。
「結構、欲張りなので、宿の隅々まで知りたいのと、周りもちゃんと見たいんです。その土地のことを全部知りたいし、名産品を使ったお料理も食べてみたい。でも計画どおりじゃない旅も楽しいのでいいですね。それから、どちらかというと寒い季節の旅が好きです。お部屋の中と外で空気感が全然違うところや、寒い日の早朝のちょっとパリッとした空気の中で出かけるのが好きなんです。お食事もおいしいですし、大好きな温泉が染みるのは冬かなと思いまして」
上白石萌歌(かみしらいし・もか)
2000年、鹿児島県生まれ。第7回「東宝シンデレラ」オーディション、グランプリ受賞をきっかけにデビュー。2018年、第42回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。ドラマ『パリピ孔明』(フジテレビ)に出演中。『義母と娘のブルース FINAL』が2024年1月2日放送。
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「アエラスタイルマガジンVOL.55 AUTUMN/WINTER 2023」より転載
ここには載せきれなかった上白石萌歌さんの写真はアエラススタイルマガジン Vol.55にてお楽しみください!
取材協力/界 ポロト
北海道観光振興機構
Photograph: Kentaro Oshio
Styling: Ami Michihata
Hair & Make-up: Tomomi Shibusawa(beauty direction)
Edit & Text: Tomoko Komiyama