週末の過ごし方
“生々しい創作”の舞台裏
漫画特化の江口寿史展覧会
【センスの因数分解】
2024.02.13
近年、各地でイラストレーション展が開催されていた江口寿史。初の漫画に特化したエキシビションが、来年2月まで世田谷文学館で開催されています。
展示されるのは、70年代の『すすめ!!パイレーツ』や80年代の『ストップ!!ひばりくん!』をはじめとした人気ギャグ漫画の生原稿や版下、そしてデビュー以前の創作ノートなど。創作の現場や裏側をうかがい知ることができるようになっています。
今回の展覧会のテーマを漫画に設定したのは、ほかでもない江口本人だといいます。彼が少年コミック誌で連載をしていた当初と現在では、漫画は描き方だけでなく、発表の仕方や見方に至るまで大きな変化がありました。
「今はタブレットとタッチペンを使って漫画を描くのが主流です。また発表の仕方としても、SNSにアップして人気が出る時代。そんななか、当時の生々しく、コツコツと(漫画を)作ってきた感じが伝わればうれしいです」と会期を前に語っています。
展示されている生原稿には、ホワイトの修正液で塗られた箇所や、たくさんのカラーチップと共に作者の手書きで指示された版下などがずらりと並んでいます。しかも江口自ら展示作業を行ったとか。自身いわく「初日を迎える前に、すでに直したい場所がありますから(展示も)来年2月まで変えながら“完成”に近づけたいと思っています」とのこと。諦めない創作への姿勢。これが漫画家江口寿史の実態かもしれません。
「宮崎駿さんもずっと作っていますが、僕も生きている限り、完成ということはないと思います」(江口)
他者が見ても気づかないような箇所を、自分が納得しないから変えていきたい。そんなものづくりの哲学を持っている人が過去に発表した漫画たち。韓流アイドルのビジュアルにも、ソースのひとつになっているのでは?と感じるイラストレーションの種は、そんなしつこく生々しい現場を通過して生まれたようです。
江口寿史展
ノット・コンプリーテッド
※現在終了
東京都世田谷区南烏山1-10-10
https://setabun.or.jp