週末の過ごし方

俳優・町田啓太と考える、装う美学。
「弥生」に、万年筆の特別感をまとう。
【第二期】

2024.03.22

俳優・町田啓太と考える、装う美学。<br>「弥生」に、万年筆の特別感をまとう。<br>【第二期】

日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。

本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」(第二期)としてつづっていく。

所有者に、知的であり、丁寧な印象を。

「万年筆は男の武器」とは、かの池波正太郎の言葉。多くの人にとって“書く”ことが端末を“打つ”ことになった現代、昭和の文筆家がそこに込めた趣は変わった。だがしかし、いまなお“武器”に成り得る価値はある。

「この時代、あえて万年筆を選択するという行為には“特別感”がある」とは、町田啓太。「所有者に、知的であり、丁寧な印象をまとわせる。そして何より、万年筆による手書きの文字は雄弁。筆圧やかすれ、ちょっとした書き癖から書き手の“思い”が強く伝わってくる」と続ける。

町田啓太02

放映中の大河ドラマ『光る君へ』では、文字を書くシーンが多い。だからこそ、書く文字にもこだわる。

「“文字は人を表す”とはよく言ったもので、そこに役のキャラクターがにじむ。きめ細かい性格だからこそ、筆先を繊細にしたい。そこには抑揚もある。そういうことも伝えたい」

町田啓太03

常日頃、筆記具を携行するという。「台本やノートに、よくメモをするほうだ。自分にとって、“書く”という行為はとても大切。ときに筆が走り、頭で考えるよりも“先”に進む」と語る。「そのあたりはアナログな人間で……」とはにかんだようにほほ笑むが、アナログか否かではないと感じるのは筆者だけではないだろう。

町田啓太04

「折々に届く母からの手紙には、ハッとさせられることが多い。離れて暮らしていても、自分のことを見ていてくれる。立ち返って“丁寧”で“謙虚”であることを諭し、身を引き締めてくれる。手書きの文字だからこそ、深く伝わることがある」

町田啓太05

3月は卒業シーズン。かつて、その旅立ちを祝う記念の贈り物の定番といえば万年筆だった。町田自身にはさほどなじみのない風習のようだったが、彼と話していて新たな門出を迎える若者にそれを贈りたくなった。手書きの文字を添え、特別感をまとわせる“武器”として。

町田啓太06
万年筆:RED¥57,200、BLUE¥75,900、GREEN¥217,800/すべてピナイダー、ジャケット¥137,500、パンツ¥39,600/ともにラルディーニ、パンツ¥39,600/ブリリア1949、ニットポロ¥42,900/チルコロ 1901(すべてトヨダトレーディング プレスルーム 03-5350-5567

FROM EDITOR
20代の駆け出し編集者だったころ、池波正太郎の『男の作法』(新潮社刊)と出合いました。寿司や蕎麦、天麩羅の食べ方から、シャツとネクタイのコーディネート、お金の使い方にちょっとした心遣い……。先人が考える「粋」に触れ、当時の自分なりにまねをしようとしたものです。万年筆を“武器”として積極的に使うようになったのも、この本の影響。あれから20年以上はたちますが、相変わらず字はキレイとは言い難いです。でもまぁ……、それも“味”ということで(笑)。いい“武器”には、そう思わせてくれる“力”があるのかもしれません。本稿をきっかけに、万年筆の愛好家が増えますように。

アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾

町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。大河ドラマ『光る君へ』の出演も要チェック!

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Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)

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