週末の過ごし方

俳優・町田啓太と考える、装う美学。
「卯月」に新調したい、男のバッグとは?
【第二期】

2024.04.25

俳優・町田啓太と考える、装う美学。<br>「卯月」に新調したい、男のバッグとは?<br>【第二期】

日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。

本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」(第二期)としてつづっていく。

時代性のある、レザーのブリーフケース。

卯月に街を歩けば、フレッシャーズスーツに身を包む若者をよく見かける。筆者(40代後半)が新入社員だったころは、男性のスーツの色はネイビーが主流。現在の定番であるブラックは一部の業種をのぞいてほぼ見かけることはなく、むしろタブーという印象だった。いやはや、時代は流れゆくものであり、その変化は興味深い。

町田啓太02

スーツの色よりも、ある意味で劇的に変わったのは新卒採用者たちが持つバッグかもしれない。かつては、男性フレッシャーズのバッグといえばブリーフケースの一択。広義にはアタッシェケースやダレスバッグも含まれるが、一般的には薄マチで持ち手が2本、開口部はファスナータイプ、もしくはよりクラシカルなかぶせタイプ。ショルダーストラップが付くものもあり、A4用紙を折らずに収納できるサイズのものが好まれた。

翻って、現代。働き方が多様化したこともあってか、いまやブリーフケースの存在感は薄まり、リュックサックやトートバッグを選ぶ若者を多く見る。スーツの仕立てや着こなしが構築的なものではなく、軽やかさを好む傾向にあるのも、バッグの選択肢を広げる後押しをしているのかもしれない。

町田啓太03

「それでも、やっぱりブリーフケースはいい」と、町田啓太。「特にレザーで端正につくられたものは、スーツ姿で持つと気持ちが引き締まり、自信や誇りをまとわせてくれる。そこから取り出す書類は“大切”なものであるに違いなく、その扱いは相手への誠意であり、信頼へとつながるはず」と続けた。

今回、われわれが町田に預けたブリーフケースは、モンブランの「マイスターシュテュック ドキュメントケース」。ハンドルの結合部やボトムのステッチ、ジッププルなどの意匠に、ブランドの“象徴”である万年筆があしらわれた、上質な知性と品格が漂う逸品だ。注目すべきは、その色。王道のブラックやブラウン、あるいは既に定番の座にあるネイビーではなく、あえてグリーンのグラデーションを選んだ。本格派のたたずまいを保ちつつも、いまという時代の“多様性”と“軽やか”な空気が、ややヒネリの利いたその色に込められていると感じたからだ。

町田啓太04

「抵抗感はない。むしろ、幼いころから他人と違う色を選びがちな自分には、不思議としっくりくるものがある。恥ずかしながら以前は、中身を入れ替える作業をいとうきらいがあり、ひとつのバッグをいつでもどこでもずっと使うことがほとんどだった。でもいまは違っていて、その日の予定や気分でバッグを変える。バッグからのインスピレーションで、靴や小物を選ぶこともある。それは、自分にとってとても楽しく、豊かな時間に思える」

男性の装いにおいて、バッグはあくまでも脇役であることが多い。だがしかし、道具として、スタイルとして納得できるかという視点が垣間見えるだけに、携える者の仕事観、ひいては人生観を雄弁に物語るアイテムと言えよう。ある意味で自身の分身という役目を担うであろうことにも留意して、いまを生きる自分にふさわしい逸品をこの春に新調したい。

町田啓太05
バッグ¥314,600/モンブラン(モンブランお客様サポート 0800-333-0102)、スーツ¥190,300/タリアトーレ、シャツ¥27,500/バグッタ(ともにトレメッツォ 03-5464-1158)、タイ¥19,800/ステファノ カウ(バインド ピーアール 03-6416-0441

FROM EDITOR
現在発売中のアエラスタイルマガジンvol.56は、もうご覧いただけましたか? 掲載したどのコンテンツにも並々ならぬ思い入れはありますが、町田啓太さんとご一緒した「韓国ロケ」は特に感慨深いものがあります。
訪れたインスパイア・エンターテインメント・リゾートは、至るところがまばゆくきらびやかで、圧倒的なスケール感で「非日常」をこれでもかと打ち出しているような施設。町田さんが仕度をしているあいだにフォトグラファーとロケハンをしていた際、そのあまりにも強いインパクトにほんの少しだけ「被写体が負けかねない……」とふと頭をよぎったことをここに告白します。
もちろん、誌面をご覧いただいた方には一目瞭然。そんなことはまったくの杞憂で、強烈な背景に負けない、いやむしろ圧勝のオーラを放つ俳優がそこにはいました。町田さんへの非礼を人知れず深くお詫びするとともに、どんどん磨かれていくスター性に心から感激した瞬間でした。
今年度も、町田さんとはいろいろな取り組みを計画しています。きっとお会いするたびに、僕の想像を軽やかに超える輝きを放ってくださることでしょう。読者のみなさまとともに、心待ちにしていたいと思います。

アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾

町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。大河ドラマ『光る君へ』の出演も要チェック!

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Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)

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