週末の過ごし方

世界的なトラベルガイドが認めた
五つ星モダンフレンチ。

2024.04.05

世界的なトラベルガイドが認めた<br>五つ星モダンフレンチ。
和を現代風に解釈したヘリテージウイングのロビーから、シームレスにエントランスへつながる。

ベル・エポック──19世紀末から20世紀初頭、パリが繁栄を極めた時代は、天才料理人オーギュスト・エスコフィエがレシピからサービスまでフランス料理のスタイルを完成させた黄金期でもあった。

往時にちなむ名を冠したホテルオークラ東京のレストラン「ラ・ベル・エポック」は、長く日本におけるフレンチの旗頭だった。その伝統を引き継ぎながら生まれ変わったのが「ヌーヴェル・エポック」。新しい時代というネーミングにふさわしく、よりコンテンポラリーにアップデートされた。たとえば牡丹海老のマリネ。フランス産キャビアやエディブルフラワーが鮮やかなオードブルだが、甲殻類のジュレと雲丹のクリームが味にコクを与えている。これはかつてコース料理の定番だったスープの進化形という位置づけでもあり、通常の冷菜以上の食べ応え。他のメニューもフランス料理の王道を踏まえながら、旬な和の食材をあしらい、軽やかさがプラスされた。それでいて肉、魚、野菜に至るまで味の輪郭ははっきりしており、コース全体はもちろんのこと、ひと皿ごとの満足感は申し分ない。

  • article1_ボタン海老のマリネ 1050_1
    スープを現代風にアレンジした牡丹海老のマリネはシェフのスペシャリテ。
  • article1_クレープシュゼット 1050_2
    目の前でフランベをして供されるクレープシュゼット。新鮮なオレンジの香りがかぐわしい。

もうひとつ見逃せないのは空間設計だろう。手がけたのは建築家・谷口吉生氏。ホテルオークラ東京創業時の建築家である谷口吉郎を父に持つが、自らの持ち味である和のモダニズムを遺憾なく発揮。淡いベージュが基調のカラーコーディネートながら、壁に金糸の美術織物をあしらうなど、さりげない贅が気品を感じさせる。さらに庭園の緑を障子のような乳白色のガラスで適度に遮り、開放感と包まれるような心地よさを両立。凝った意匠と奥行きのある空間のたたずまいで、食する姿を美しく見せてくれるはず。料理に通底する洗練との見事な共鳴を感じる。『フォーブス・トラベルガイド2024』で、先ごろ「ヌーヴェル・エポック」は日本初の五つ星を獲得した。料理やサービスで高い評価を集めたのが理由だが、定型化したフランス料理を日本ならではの感覚で新しいフェイズに押し上げたことも大きいだろう。世界が認めたモダンフレンチを、美味と美観、そして空気感で満喫したい。

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ヌーヴェル・エポック
東京都港区虎ノ門2-10-4 オークラ東京 オークラ ヘリテージウイング5階
TEL/03-3505-6073(直通)
営業時間/朝食7:00~9:30 ランチ11:30 ~14:30 ディナー17:30~20:30(LO)

「アエラスタイルマガジンVOL.56 SPRING/SUMMER 2024」より転載

Text: Mitsuhide Sako(KATANA)

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