週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
心を解き放つ、「皐月」のスーツ。
【第二期】
2024.05.17
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」(第二期)としてつづっていく。
初夏のリゾートに映える、“派手色”のスーツ。
今年のゴールデンウィークも、町田啓太は忙しかった。放映中の大河ドラマはもちろん、公開を控えている複数の作品の撮影、レギュラー出演をするテレビ番組の収録や、ファッション系の取材などなど……。休日返上で、文字どおり休む間がない。
「本当にありがたいことだと思っている。そもそも出かけるなら人混みを避けたいタイプなので、ゴールデンウィークだからといって、どこかに行きたいと考えたこともほとんどない。いまの自分には、これがいい」
そんな町田でも、5月の爽やかな気候に誘われ、時には気分転換をしたいこともあるという。ならば……と思い今回われわれが用意したのは、初夏のリゾート地に映えそうな解放感のあるスーツ(セットアップ)スタイルだ。
「こういう派手な色彩のスーツスタイルは、ふだん着ることがない。実際に袖を通すと気分が上がり、不思議と楽しくなってくる。たまには、こんなスタイルも悪くない」
町田のハートをつかんだこのスーツスタイルは、ポール・スミスによるもの。1970年代からいまなお現役で活躍し続ける大御所デザイナーの真骨頂は、なんと言っても“ひねりのあるクラシック”。その感性がしっかりと息づく洗練された華やぎを醸すリゾートスタイルには、まとう者の心を昂らせる“力”が確かにある。
実は町田には、ポール・スミスに対して少し特別な“思い入れ”があるという。それは初めて出演した大河ドラマ『西郷どん』の撮影後に行われた、豪華なパーティーでのことだ。
「有名ホテルの大きな宴会場には、赤いカーペットが敷かれ、たくさんの関係者が華やかに着飾って参加し、それまでに見たことがないようなきらびやかなムードであふれていた。自分もその中央の壇上であいさつをすることになっており、その“場”に負けない洋服が必要だった。パーティーの前、さんざん悩んだ末に最終的に足を運んだのはポール・スミスの渋谷店。そこにディスプレーされていた深緑色のセットアップが、とても輝いて見えた。実際、そのすてきな服のおかげで、パーティーを楽しめたことは言うまでもない」
いいスーツには“力”がある。気分を高揚させ、自信と誇りを授けてくれる。もしも町田が今回のスーツをまとい、皐月の休日にどこかへ向かうとしたら――? 船上のパーティーであれ、高原の瀟洒なレストランであれ、どこにいても凛々(りり)しく絵になる男の姿が目に浮かぶ。
FROM EDITOR
小欄で不定期に掲載している町田さんと僕のツーショット。「アエラスタイルマガジンでしかご覧いただけない、いつもと違う町田さんの表情を!」と思いながら撮影しています。僕自身は基本的に「裏方タイプ」の人間なので、カメラの前に立つと少なからず緊張しますし、どうしても照れが勝ちます。それでも、スタッフに背中を押してもらいながら、町田さんから「眼鏡を取り換えてみましょう」などと言われ、そしてこんな写真が撮れたのなら……もうすべてが OK! この先もしばらく慣れることはないでしょうが、引き続きご笑覧いただけますと幸いです。
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。大河ドラマ『光る君へ』の出演も要チェック!
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)