調べ・見立て(見立て)
ビジネススタイルのカジュアル化が進む。
それでもスーツはなくならない!?
編集長の「見立て」。#77
2024.05.27
2005年にクールビズがスタートして数年前までは、会社で期間を定めて実施する夏季の取り組みでした。コロナ禍の影響で、出社するか否かも含めて、働き方は大きく変化しました。それに伴ってオフィスの在り方もビジネスウエアの着こなしも変わったのは、多くのビジネスパーソンが実感しているとおりです。
改めて、アエラスタイルマガジンの「調べ」アンケートで「あなたの職場でカジュアルデーの取り組みがありますか?」を尋ねてみました。その結果、「毎日がカジュアルデー」の回答が53%にも上りました。2023年4月に同じ質問をしたときには「毎日」という回答は20%だったのと比較すると、かなり状況は変わっています。「取り組みは実施されていない」との回答が27%ありますが、こちらも「毎日スーツがマスト」といった従来の考え方ではなく「スーツでもカジュアルでも本人の裁量に任せる」の意味であると推測されます。
カジュアル化の流れは、「10年前に比べてビジネススタイルがカジュアルになっていると感じますか?」という質問に対する回答からもわかります。「とても感じる」73%と「少し感じる」22%を加えると、95%のビジネスパーソンがカジュアル化を実感しているのです。
クールビズがスタートした2000年代には「ネクタイを外すか否か」が話題になり、その後2010年代には「ポロシャツはアリかナシか」が議論されました。ここ数年では「Tシャツはアリかナシか」の問い掛けに応えて、セットアップスーツやジャケットのインナーとして着用する襟の高いTシャツが夏のヒットアイテムになっています。
ビジネスパーソンがスーツを着用する頻度は、かなり減少しています。2023年春の「調べ」アンケートで「週5日(毎日)」と回答した人が45%であったのに対し、今年のアンケートでは10%となりました。「週2、3日程度」20%や「週1日程度」10%を加えても、習慣としてスーツを着用しているビジネスパーソンは半数に満たないようです。これに対して、ビジネスウエアの製造や販売を生業にする関係者は大きな危機感を感じています。機能性素材を使ったセットアップスーツなどの提案は、新しい働き方に求められる快適な着心地のニーズに応えようとして開発されたものです。
そして、スーツ業界の有志の声掛けによって、スーツを着用する楽しさを伝えるための取り組みも始まっています。「背広散歩」というイベントは、ファッション業界の関係者だけでなく一般のスーツ愛好家も含めて、背広を着て散歩するイベント。4月末に浅草で第3回が開催されて、ズラリと90人も勢ぞろいしました。いい素材、美しいシルエットのスーツを着たときの高揚感、ドレスアップする楽しさは普遍のものです。「スーツはなくなりますか?」と問われることがありますが、改めて「スーツはなくなりません」と申し上げておきます。