週末の過ごし方
俳優・板垣李光人、「SIMOSE」で過ごす休日
世界で最も美しいと言われる美術館を訪ねて。
2024.12.13
映画、テレビで出演作が相次ぐ板垣李光人。10歳でデビューし、着実にキャリアを積んできた。旅に出るとき、必ず現地にある美術館を確かめるほどアート好きの彼が訪れたのは広島。気鋭の建築家が手がけたミュージアムとオーベルジュの融合が、これまでにないアート体験をもたらした。
ドイツ語の光に由来する名にふさわしく、板垣李光人は2歳の頃からモデルとしてスタジオのライトを浴びてきた。主に子ども向けファッション雑誌や広告グラビアだったが、小学生になると写真家や編集者が世界観をつくりあげることに魅了されていったという。ただ服を見せる素体ではなく、キャラクターに命を吹き込む演技者として目覚める源となったようだ。
「モデルをしていたブランドのカタログがコンセプチュアルなもので、そこで撮られるときにどう動いたらいいか、少しずつ考えはじめるようになりましたね」
当時、板垣李光人が誌面を飾っていたキッズ向けファッション誌の編集者は、当時から垣間見ていた才能の萌芽をこう称賛する。
「素晴らしいモデルでしたね。とにかく普段からおしゃれで、どんなコーディネートでも楽しんで着てくれました。小学生の男の子だと騒いだり、また撮影に飽きてしまったりすることが多いのですが、李光人君はおとなしかったうえに勘が良く、こちらの意図をすぐに理解してくれました」
写真から映像へ。夢中になって観ていたドラマの影響もあり、関心は次第に演技の世界へ向けられるようになった。
「映画などの撮影では多くの人と関われます。交友関係が限られている学校よりも楽しかった」
12歳でテレビ、翌年には映画でデビューを果たす。その後、本人も大好きだったという仮面ライダーシリーズやNHK大河ドラマなどで着実にキャリアを積み上げてきた。今年も映画で『陰陽師0』『ブルーピリオド』『八犬伝』でキーとなる役を演じ、12月には『はたらく細胞』の公開を控えるとい
う売れっ子ぶりだ。
人気の理由のひとつとして挙げられるのが、「透明感のある力強さ」という矛盾した形容がふさわしい個性にある。『陰陽師0』では平安京の帝、『八犬伝』では女旅芸人に身をやつした八犬士の犬坂毛野を演じたが、それぞれ長くはない出演ながら、高貴なニュアンスで強い印象を残した。ベテラン俳優と対峙しても見劣りしない存在感は、まさに天性といっていいだろう。
板垣李光人は俳優だけではなく、アーティストとしての横顔を持つ。もともと子どもの頃から絵が好きで、中学校では美術部に所属。ファッションフリークでもあることから、服のデザイン画も描いてい
るという。今年は東京、名古屋、大阪のパルコで個展『愛と渇きと。』を開き、話題を呼んだ。
「美術部の顧問から教えてもらったデジタルアートが好きで、ずっとパソコンで描いてきましたが、それに油彩を組み合わせました」
油絵のトライアルは『ブルーピリオド』で天才的な画学生を演じるにあたって学んだことがきっかけだが、簡単にひとつ前の絵に戻れるデジタルにはないリアルさが刺激的だったようだ。
「油絵ならではのナマ感やつや感に引かれました」
描くことと演じることの違いはどんなところにあるだろうか。
「俳優では役という人間に向き合いますが、絵は自分に向き合いながら、見えないものの輪郭をつくる感じです。無の境地ですね」
インタビュー後編に続く[近日公開予定]>>
取材協力/SIMOSE
掲載した商品はすべて税込み価格です。
Photograph: Yuji Kawata(Riverta Inc.)
Styling: Kohei Kubo(QUILT)
Hair & Make-up: KATO(Tron)
Text: Mitsuhide Sako(KATANA)