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近藤真彦、走り続ける男の美学。
マッチ、還暦! これまでとこれから──。【後編】

2025.01.24

近藤真彦、走り続ける男の美学。<br>マッチ、還暦! これまでとこれから──。【後編】

還暦で迎えた日本武道館。
そこには僕じゃない、違う生き物がいたようだ。

2020年春に始まった世界的なパンデミック、自身の不祥事、44年在籍した事務所からの退所と、21年は、マッチにとって大きな転換の年だった。マッチは、自らの手でリセットボタンを押し、個人事務所を立ち上げた。

「最初は、マッチにどう連絡を取ればいいのかと、事務所の電話番号から調べてくるような感じだったと思います。弱小プロダクションなんで。前の事務所では契約もあって自分勝手な行動は取れなかった。こんな仕事をやってみたいと思っても、僕自身は動けないし、ただ待っているしかなかった。周年の仕事とか全力でサポートしてくれたし、もちろん感謝の気持ちは変わらない。ただ、自分の足で外に出てみて、試しにいろんなことをやり始めたら、また新しい世界が見えてきて新鮮でした」

いつも全力、還暦ダッシュ!

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21年11月の中野サンプラザでのリスタート・コンサートを皮切りに、地道にコンサートを重ね、ファンとの交流を深め、自らの足で少しずつ道を開いていった。そして、そんな積み重ねのひとつのゴールがまさに60歳を迎えた2024719日に行われた日本武道館でのコンサートだった。何十年にもわたって伴走してきた1万人のファンたちは、声を枯らして還暦の誕生日を祝った。

「ステージに立って、1曲目が始まったときからもう僕じゃない、違う生き物が動きだしていた。お客さんの磁力というかパワーで動かされているみたいな。最後のほうは、体力100パーセント使い切っていて電池切れで充電はゼロなんだけど、そこからそのパワーで3曲歌えちゃうんです。1万人の目と声援が全部僕に向けられていて、それを吸収して充電しているような感じだった」

そして、マッチはこう続けた。

20歳、30歳のときだったら、そういうお客さんの声援を弾き飛ばしちゃうようなところもあったと思う。でも、60になって、デビューから45年もずっと応援してきてくれたファンがあそこに集まってくれた。グループでもバンドでもなく、ソロでやってきたこんな僕に、60のおっさんに、付いてきてくれたということに本当に感謝の気持ちしかなかった」

2024年はマッチにとって、新たな躍進の2024年はマッチにとって、新たな躍進の年となった。1月、ドラマ『不適切にもほどがある』(脚本 宮藤官九郎)に、「ムッチ先輩」として、明らかにアイドルのマッチをイメージしたキャラクターが登場、ACジャパンの広告キャンペーンへの起用、還暦ツアーの日本武道館と続き、年末には34年ぶりの主演舞台『ギンギラ学園物語』(脚本 鈴木おさむ 大阪・新歌舞伎座、名古屋・御園座、東京・明治座)が控えている。

<本文は続きます>

60歳は大きなターニングポイント。だけど、
“マッチは格好よく生きる”だけは常に貫きたい。

「たしかに60歳は大きなターニングポイントになった。60歳に向かう過程でさまざまな出来事があって、こんな大きな山のターニングポイントを迎える人っているのかなというぐらいの重さだった。でも、僕はそれを前向きに受け止めて、これを生かさない手はないとも思っていた」

この日のマッチとの撮影・インタビューは2時間を超えた。スタジオでの撮影を終えたマッチは、カメラマンやスタイリストらその場にいた全員を「上映会、上映会」と言って招集した。そして、おもむろにタブレットを開く。映し出されたのは、マッチが出場してきたいくつものトライアスロンレースの編集映像だった。

「これは宮古島で一番きついレースでゴールしたところ」「44歳で始めたんだけど、これはUSENの宇野(康秀)さんと一緒に50歳で出た世界選手権」「これは伊豆のトレイル・ラン、76キロ」と喜々とした様子で解説していく。

マッチは、「3.8キロのスイムをこなすため、先生について習った。出るからには負けたくなかったから」とも言った。映像が終わると、満面の笑みで「これが僕のすべてです」と結んだ。

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「アイドルなんて23年で終わっちまうよと言われて何くそっと思って頑張り、芸能人がレースをやってらと笑われて奮起した。ここまで頑張ってこれたのは、やっぱり負けず嫌いなんでしょう」

60歳のアイドルは、そう言葉を残し、スタジオを後にした。「格好よく生きる」のは、そんなに簡単じゃないよ、とその背中が語っていた。

<<前編はこちら

近藤真彦(こんどう・まさひこ)
1964年生まれ。歌手、俳優、レーシングチームオーナー兼監督、実業家。1979年テレビドラマ『3年B組金八先生』でデビュー。1980年以降はソロ歌手として、『スニーカーぶる~す』『ギンギラギンにさりげなく』『ハイティーン・ブギ』『ケジメなさい』『愚か者』などなど、ヒット曲を多数発表。現在もコンサートやディナーショーで多くの観客を魅了し、そのスター性は健在。202412月には自身が演出・出演するThank you very マッチ de SHOW『ギンギラ学園物語』(構成・脚本:鈴木おさむ)の公演が控える。

「アエラスタイルマガジンVOL.57 AUTUMN / WINTER 2024」より転載
ここには載せきれなかった写真は、アエラススタイルマガジン VOL.57にてお楽しみください!

Photograph: Akira Maeda(MAETTICO)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: GONTA(weather)
Text: Haruo Isshi

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