週末の過ごし方
北欧3カ国の個性豊かなスモールラグジュアリーホテルを巡る旅。
2026.05.15
スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ワールド(以下SLH)と呼ばれる、ホテルブランドグループをご存じだろうか? SLHには家族経営をはじめとするインスピレーションにあふれた独立系ラグジュアリーブティックホテルが加盟。一人ひとりのゲストが目的を持って世界各地を訪れ、その土地ならではの価値を大切にしながら、未来へとつなぐ旅の在り方を追求してきた。
SLHに加盟するホテルは、2026年5月現在で世界100カ国以上にわたり、700軒を超える。しかもその数は年々増え続けているという。それはつまり、時代がスモールラグジュアリーなホテルを求めているということにほかならない。
具体的にはどのようなホテルが加盟し、どのような特別な体験をもたらしてくれるのか? 今回、フィンランド、スウェーデン、デンマークにある6軒のSLH加盟ホテルを訪れ、その魅力を体感した。
北欧を訪れるために利用した航空会社は、フィンランドのフラッグ・キャリアであるフィンエアーだ。2026年3月29日から10月24日までの夏期スケジュールでは、羽田空港、成田空港、中部国際空港、関西空港からヘルシンキへの直行便があり、なかでも羽田、成田、関西からは毎日運航している。
プレミアムエコノミーやビジネスクラスでは、マリメッコのデザインによるアメニティやブランケットなどが用意されていたり、イッタラのグラスが使用されているなど機内から気分が一気にフィンランドモードに切り替わる。
フィンエアーでは、日本からのほとんどの便が21時以降に出発。機内で最初の食事を済ませた頃には日本時間の深夜帯となるため、眠りにつきやすい。
目が覚めて2度目の食事を済ませたら、ほどなく早朝のヘルシンキに到着するので時差ボケも感じにくい。さらにそこからほかの都市や近隣諸国に乗り継いだとしても、旅先での初日を早い時間からスタートしやすいため、限られた異国での時間を効率的に使える利便性の高さも魅力だ。
目的地に近づくと機内のモニターには乗り継ぎの案内が表示されるため、到着後も慌てずにすむ。実際、今回は出発が2時間ほど遅れ、乗り継ぎに間に合うか心配だったが、この案内によって事前に搭乗口までの動線が把握できていたため、空港内を落ち着いて移動することができた。
ヘルシンキ・ヴァンター国際空港から飛行機を乗り継ぎ、フィンランド北部にあるロヴァニエミ国際空港へ向かう。そこから車で20分ほど走るとラップランド地方ルヴァヤルヴィにある「スキーラ・リトリート」に到着した。ここは2025年12月にオープンした、湖と森に包まれた自然のリゾートだ。国土の75%以上が森で、19万もの湖があるフィンランドの魅力をたっぷりと味わえるホテルであり、より静かで深く、本物の何かを求める人々のために作られた。
「スキーラ・リトリート」は、1950年代に建てられた村の学校を改装したメイン棟を中心に、ログハウスタイプのログスイートや、隣接するノルヴァヤルヴィ湖畔にたたずむ広さ130㎡のモダンなプライベートレイクサイドヴィラ、さらにはシグネチャー・ノルディック・スパを備えている。
特徴は、施設内でのウェルネスプログラムが宿泊に含まれていて、ヨガやサウナ、森の散策などに参加しながら、主体的に一日を過ごすことができることだ。
ブレックファースト、ランチ、ディナーはすべてパインホールレストランで提供される。レストランの明かりは最小限の明るさに抑えられ、昼間は大きな窓から差し込む自然光を生かした、やさしい雰囲気。元学校らしい牧歌的なたたずまいに癒やされる。
料理は、時間帯を問わず、フィンランドやラップランド地方の伝統料理や家庭料理をとびきり洗練させたようなものが多く、地域性をたっぷりと感じることができる。
どの料理もカラダにやさしい印象で、なにを食べても日本人の口に合うのがうれしい。
今回はログスイートに宿泊した。キャビンの広さは67平方メートル。サウナや暖炉、ロフトを備えた広々とした造りで、自宅のようにリラックスして過ごすことができる。
1階のリビングには森に面した専用のテラスがあり、運がよければキツネや野鳥などを見られることも。また、森とは逆側にあるベッドルームには、中庭に面した窓が備わっている。
ロフトにはデスクやヨガマット、ソファが用意され、窓から中庭を見渡しながら思い思いに過ごすことができる。
ログスイート内のサウナには大きな窓があり、日本人にとっては特にファンタジックな北欧らしい森の風景を眺めながら、ゆっくりと汗を流すことができる。常備されている森の香りのアロマオイルを使えば、外の風景に溶け込んでいるかのような気分を味わえるのも良い。
「スキーラ・リトリート」のだいごみとも言えるのがウェルネスプログラムだ。今回の宿泊では、タイムラインに沿って6つのプログラムが用意されていた。具体的に紹介すると、10時からはヨガを通して心身を目覚めさせることができる「モーニング フロー」。12時からの「ミッドデイ フォレスト バス」では、森を散策し、木々に直接触れたりしながら、自然の素晴らしさをあらためて実感できる。
13時からは「アフタヌーン ソーシャルアワー ウィズ ティー、コーヒー アンド フレッシュ ぺストリー」。フィンランド特有のコーヒー休憩を体験できるプログラムだ。17時からの「シグネチャー ノルディック サウナ」と「フォークロア サウナ」では、自然の中でサウナを楽しめる。20時30分からはシンギングボウル、ゴング、チャイムの音色による瞑想のような体験ができる「イヴニング サウンド バス」が始まる。
それぞれのプログラムに参加するかしないかは個人の自由。参加する場合はその旨をゲストサービスに伝えるだけでOKだ。
プログラムの中で最もフィンランドらしい体験は「シグネチャー ノルディック サウナ」と「フォークロア サウナ」だろう。雪が舞う極寒の冬でも外気浴をすることができ、さらには手袋とラバーシューズを着用して凍った湖に浸かる冷水浴も用意されている。
フィンランドの民俗学では、サウナは単なる入浴場所ではない。浄化、守護、そして静かな知恵を授かる神聖な空間だ。プログラムのひとつ「プライベート民俗サウナ」では、サウナホストのガイドによるプライベートなセレモニーを体験することができる。伝統的な呪文で迎えられ、ロウリュによる古来の儀式を学び、サウナと森の精霊、そして北欧の人々の暮らしの原点を繋ぐ物語を聞くことができるなど、文化に深く根差した、心身を癒す儀礼となっている。
せっかくなので凍った湖での冷水浴に挑戦してみたところ、冷たいという次元ではなく、痛みすら感じるレベルの冷たさだった。そのため肩まで浸かって5秒でギブアップ。湖から出たあとも少しの間、脚の痛みが続いたが、それが消えると心身がすっきりとして軽くなり、トライしてよかったと思うことができた。ただし、決して無理はしないこと。
「スキーラ・リトリート」は小規模なホテルのため、スタッフとの距離感が近く、ちょっとしたやりとりにも心が和む。例えば、今回このホテルから次の滞在先である「ガルドゥ ホテル&スパ」まではバスで移動したのだが、チケットの買い方などについて相談すると、その場にいた複数のスタッフがみんなでわちゃわちゃしながら調べてくれて、購入方法やバス停の場所などを丁寧に教えてくれた。
滞在して感じたのは、「スキーラ・リトリート」は、自然とふれあいながら自分自身の心身と向き合うことで、人間の根源的な喜びや感動をあらためて教えてくれるホテルだということ。真の贅沢とはなにか? このホテルなら、その答えがきっと見つかるはずだ。
スキーラ・リトリート
https://slh.com/hotels/skyra-retreat
3つのサウナと美食が導く、森の中でのリトリート
「スキーラ・リトリート」から長距離バスに乗り、およそ3時間20分。北極圏内、北ラップランド地方の中心部に位置するのが「ガルドゥ ホテル&スパ」だ。ウルホ・ケッコネン国立公園のすぐそばにあり、ラップランドに残る唯一無二の手付かずの大自然の中にひっそりと佇むホテルである。
オープンしたのは2025年11月。ホテル名が示すように、スパが充実していて、さらにレストランでは地元の新鮮な食材と世界中の料理のエッセンスが融合した本格的なコース料理を堪能できる。また、充実したオプションを選択するのもいいだろう。
「ガルドゥ ホテル&スパ」に到着すると、ロビーラウンジでコーヒーやシャンパンをはじめとする好みのウェルカムドリンクを飲みながら、チェックインを行う。目の前のガラス越しには森が広がり、冬場であれば雪化粧をまとった、夏場であれば緑に染まった木々の風景に到着早々圧倒される。
客室は、床から天井まである窓から絵本の世界のような森の絶景が眺められるフォレスト・ヘイブン、プライベートジャグジーを備えたシグネチャースイート、北の空を見渡せるステラー・ヘイブンルームの3タイプが用意されている。
いずれの部屋も大きな窓があるおかげで、室内に居ながらにして森との一体感を感じられるところが特別であり、それはつまりフィンランドらしさを四六時中楽しめるということだ。
部屋でひと息ついたら、このホテルの醍醐味のひとつであるスパに向かう。屋内と屋外のいいとこどりをしたかのような森林スパは、フィンランドだからこその開放感に満ちている。
そもそもホテル名のガルドゥはこの地の先住民族の言葉であるサーミ語で「冷たい泉」を意味し、伝統的なサウナの心地よい熱さと蒸気に冷水浴を掛け合わせることで、特に日本人にとっては、異文化を楽しむエンターテインメントのような心躍る体験が味わえる。
サウナは、電気ストーブを使った「ハヴ」、薪ストーブを使った「リエッキ」、スチームを使った「スオラ」の3タイプが用意されている。いずれも入り口に各サウナの特徴や手順、作法などが英語で書かれているので、初心者でも安心して楽しむことができる。
例えば、「ハヴ」では外気浴や冷水浴、「リエッキ」では外気浴と併せた入り方が推奨されていたり、「スオラ」では入り口に置かれたエプソムソルトを肌にやさしく塗り込むことで、心身が清められるという。
仕様の異なるこれら3つのサウナを均等にすべて体験するのもいいし、自分の好きなサウナにどっぷり浸って汗を流すのもいいだろう。
外気浴は雄大な森を眺めながら行える。サウナで温まったカラダを外の空気でクールダウン。日常のあれやこれやをすべて忘れ、無心で心地良さに身を任せる至福の時間だ。
サウナの側にはジャグジーも備わっている。日本人にとっては森の中の露天風呂のような感覚だ。一緒に入った仲間と語らいながら、体をゆっくり温めることができる。
サウナと冷水浴、外気浴を繰り返すことで“ととのった”あとは、併設のバーラウンジで、ドリンクで水分を補給しながらひと休み。落ち着いたら再びサウナを楽しむのもいいし、部屋に戻ってもいい。スパの営業時間中は、何度でも自由に利用することができる。
スパですっきりしたあとは「レストラン ガルドゥ」で、極上のディナーを楽しみたい。こちらの料理は、厳選された地元産の食材のみを使用するラップランド料理の伝統を尊重しつつ、モダンなアレンジと世界中の料理のエッセンスを加えた、このレストランならではの味わいが魅力だ。
前菜に選んだのは、冷燻した北極イワナのタルタルや、カリカリのヴェステルボッテン・チーズが入ったキングクラブのスープ。濃厚な味わいで、すべての素材のうま味をたっぷりと堪能することができた。
メイン料理にはビーフテンダーロインをチョイス。牛フィレ肉はしっとりとしていてやわらかく、上に添えられた燻製トナカイとトリュフのバターによって、このレストランの個性が際立つ、特別感のある味わいになっている。付け合わせのマッシュルームのほっこりとした風味に心が和む。
これに合わせたワインは、アルゼンチン産のマルベック。果実味のある気品にあふれた味わいで、洗練された肉料理との相性は抜群だった。
日本人にとってはファンタジックな森に囲まれたロケーションからして感動もの。さらにはさまざまな楽しみ方ができるスパで、フィンランドらしさも存分に満喫できる。
食事はモダンでありながらもベースが郷土料理なので、自分が今、豊かな自然に恵まれた北ラップランド地方にいることを味覚から実感できるのも良い。
ここを訪れたら、まずはスパで心身をリフレッシュ。その後、絶品ディナーに舌鼓を打ち、運が良ければ、オーロラを鑑賞するというように、やることが明確でわかりやすいところも魅力だ。
館内でのさまざまな体験を通して心が踊り、多幸感に包まれる、まさに森の中のオアシスのような存在が「ガルドゥ ホテル&スパ」なのだ。
ガルドゥ ホテル&スパ
https://slh.com/hotels/galdu-hotel-and-spa/
SLH(スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド)https://www.slhhotels.jp/
https://slh.com/
Photo & Text:Hiroya Ishikawa