特別インタビュー
株式会社SCOグループ
代表取締役会長 玉井雄介 インタビュー[前編]
[ニッポンの社長、イマを斬る。]
2026.03.02
歯科医院向けの決済サービスで飛ぶ鳥を落とす勢いのSCOグループ。口腔ケアへの意識を高め「日本人の健康寿命に貢献したい」と構えは大きい。社員2人で始めた事業を8年で急成長させ、25年6月に会長に就任した玉井雄介氏に伺った。
テクノロジーで105年の健康寿命を
「歯医者というのは医療のゲートウェイです。定期的な口腔ケアでリスクの減る疾病は少なくありませんし、メンテナンスの習慣で健康の第一歩は担保できるはず。高齢化社会で大事なのは『挑戦』だと思っているんですけど、元気な身体あってこそです。その環境づくりがわれわれの使命だと思っています」
同社代表取締役会長の玉井雄介は言う。SCOグループ(旧スマートチェックアウト)の母体はメディカルとは無縁の会社だったが、2017年、玉井の社長就任をきっかけにヘルステックの注目企業へと成長した。長くカード決済の進まなかった歯科業界に向け、20年、従来の手数料の半額となる決済システム『ペイライト』をスタート。現在は日本の歯科の約4院に1院が利用する。歯科医院の多大な業務量の削減や日本人のデンタルIQの向上等々、歯科医師、患者双方よしの仕組みづくりを目指している。
「25年には予約から決済、カルテ機能まで搭載した『ペイライト・エックス』をスタートしました。
歯科医院に通いやすい環境を作ることで日本人の健康をサポートしていきたいですね」
東京駅徒歩1分のJPタワーに位置する見晴らしの良いオフィスに仕切りはない。玉井自身のデスクもほかの社員同様、フラットに並べられている。今冬、社内有志たちとキリマンジャロ登頂を目指す氏は「健康とチャレンジは両輪の関係です」と語る。
40歳、軽い気持ちで会社を買う
当時は一大決心というほどのものではなかった。2017年、玉井はファイナンス系企業に従事する会社員だった。サラリーマン生活に限界を感じ、故郷の松山に帰ろうかとの思いがよぎることもあったという。そんな頃合いで気心知れた取引先の社長が言った。
「うちの会社を買わないか」
「会社といっても社員はいないし顧客もいない、オンラインの決済システムだけ。とはいえ、ずっと携わってきた領域ですし人脈もノウハウもある、自分でやってみるのも面白いかなと思ったんですね。貯蓄がたくさんあったわけじゃないですけど、食べるのには困らないだろうくらいの気持ちでしたね」
このとき玉井は40歳。最初はアシスタントと2人のみ。資金繰りでの四苦八苦などよくある創業時の困難とは無縁でもあり、のんび
りモードで事業は順調だった。
「だけど、チャレンジしたくなったんです。経営を始めたのなら、人が自然と集まるような大きな事業を作ってみたい。軽いノリで始めても次第に何かやりたくなるのがパターンというのか(笑)」
フォーカスしたのは、DXがまだ浸透していない業界であること。公共性のある業界であること。やがて歯科領域に目が向いた。歯科医院はコンビニよりも日本に多く全国に約6万6000医院、3兆円市場とも言われる。一方でカード決済率はまだ低く、高額な自費診療などをローンでまかなえる環境が整っているとは言い難かった。全国の歯科医院のリストを作り、片っ端から電話を掛けた。『カード決済を導入していますか?』『分割払いできるソリューションはいりませんか?』──。
アポが取れたらレンタルの赤い自転車で歯科医院を訪問した。
「DX化の遅れもそうでしたが、何より衝撃だったのが患者さんと歯医者さんとの情報リテラシーの差です。このギャップを埋めることこそ日本人の健康寿命につながるのではと、直感しましたね」
SCOグループの『決済を通じて健康増進を図る』の礎になったわけだが、同時に歯科医院の苦しい経営事情も見えてきた。
「僕が子どもの頃、家が歯医者さんだったクラスメートがいましたけどファミコンの新しいソフトは必ず持っていた(笑)。歯医者さんってお金持ちなんだと思っていましたが、今は勤務医の歯科医師の平均年収は700万~800万円台、歯科衛生士で300万~400万円程度なんです。ちなみに、アメリカの歯科医師の年収は円安前でも3000万円ほど。けれど業務量は日本の6分の1とも言われているんです」
クレジット決済が普及しない日本の事情も見えた。従来の加盟店手数料は高すぎて歯科医院の経営を圧迫しかねなかったのだ。
<<インタビュー後編につづく
プロフィル
玉井雄介(たまい・ゆうすけ)
1977年、愛媛県松山市出身。2000年からの株式会社日商システム勤務を経て05年保証会社AGIを設立。以降、カード決済や信販事業など金融事業におけるさまざまな分野を経験。17年に株式会社スマートチェックアウト(現SCOグループ)の代表取締役社長となり、同社をヘルステックの先鋭企業へと導く。25年6月より会長就任。「健康寿命105年」を掲げるグループのトップとして自身の健康管理にも余念がない。趣味はトライアスロン、登山。今冬は社内の登山部の面々と共にキリマンジャロを目指す。
Photograph: Kentaro Kase
Text: Mariko Terashima