週末の過ごし方
町田啓太、秘境の楼閣を訪ねて。【後編】
星のやグーグァンが誘う、洗練と癒やしのひと時
2026.04.08
Netflixの世界配信システムは、明らかに新たなマーケットを開拓しつつある。
「グローバルにお見せできる作品というのが増えてきたことは間違いないですよね。それは本当にありがたいし、いろんな人からお声がけもいただくようになった。その広がりはうれしい。ただ、僕は日本育ちだし、日本のカルチャーに囲まれて生きてきたわけで、そこは消せない。それと、まだまだ学ばなきゃいけないこともたくさんある。だから、無理くり『世界に!』みたいな飛躍は僕の中にないんです。素晴らしい作品と出合い、それが結果として世界に広がっていったらいいなと思います」
「ただ、その先にはハリウッドだってあるのでは」とかぶせると、こう返された。
「ハリウッドはハリウッドに行って戦わなければならないですよね。どんなに有名な方でもオーディションを受けてのゼロからのスタート。それはそれで面白いと思いますが、僕の中では、日本を代表してとなると、いまの自分には荷が重い。自分のペースで、自分らしく頑張ってやっていった先に何かがある、活動が広がる、そんなスタイルでいまはまだいたいんです」
俳優デビューから15年。種まきと収穫のリズムは合ってきたようにも見える。現在地をどうとらえているのか。
「失敗もたくさんありましたが、それは失敗するぐらい挑戦してきたからだと思っています。毎回毎回、大小さまざまな失敗があって、それをプラスに転じる、苦手をなくしていくみたいなことをやってきました。その経験は実際大きいと思います。でも逆に、成功から学べるものもいっぱいあって、そういう経験をもっと大事にしていかなきゃいけないな、と最近は思っています。さっき言ったように無茶な挑戦、無茶な役柄とかでも結構いけると思ったのは、その成功体験から来ているんです。成功をもっと磨いてあげるというのも大事だなと思うようになってきたんです。反省ばかりしててもダメなんだ、と」
インタビューをしている部屋には全面ガラスの窓越しに連なる山脈が迫る。眼下には手入れの行き届いた森の庭園。秘境の楼閣では、実にゆったりとした時間が流れ続けている。
前夜、町田は、「星のやグーグァン」が誇る露天大浴場を満喫したという。
「木々に囲まれた自然の中の大きな露天風呂。湯舟の中を散歩したのは初めて(笑)。いままで入ったなかでもベストの、ずっといられるような安らげる場所でした」
そしてこう結んだ。
「たったいま、こうして台中の渓谷に来てすてきな温泉に入ることなんて、ちょっと前には想像もしてなかった。そんなふうに想像もしないことが次々と起こる。それがこの仕事の楽しみなんです。それは起こそうと思って起こせるものではないけど、一生懸命やっていたら、あるとき視野がパコーンと広がることもあるんだな、と。まだ15年だけですが、やってきたことはそんなに間違っていなかったんだなとも改めて思います。それは大事にしつつ、でも、現状維持は停滞だと思うので、さらにブラッシュアップして、こっちに進むべきと思ったら切り替えて挑戦していく。これからどんなことが起こるのか、待ち受けているのか、どんな道を歩いていくのか、いまは楽しみで仕方ないんです」
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ、俳優。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『失踪人捜索班 消えた真実』(テレビ東京)、大河ドラマ『光る君へ』『青天を衝け』(NHK)など話題作に多数出演。Netflixシリーズ『グラスハート』やNetflix映画『10DANCE』、連続ドラマW池井戸潤スペシャル『かばん屋の相続』に続き、4月2日にはNetflixシリーズ『九条の大罪』が配信予定。4月11日からスタートする、日本テレビ系4月期新土曜ドラマ『タツキ先生は甘すぎる!』では主演を務める。
Photograph: Yuji Kawata(Riverta Inc),Kota Uemura
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Text: Haruo Isshi
Coordinate: Sophie Chen & Friends