週末の過ごし方

本州最西端の海峡都市へ。【後編】

2026.04.20

俳優・岸谷五朗が綴(つづ)る小説に、そこからインスパイアされたビジュアルストーリーを添えるシリーズ企画。関門海峡を行き交う船を眺め、男が顧みたものとは―。

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圧倒的な存在感を放つ関門海峡との遭遇。本州と九州の間を力強く切り裂く海峡の流れの速さと勢い、海水の厚みに、絶句させられた。その関門海峡に挑むように見事な調和で君臨する「リゾナーレ下関」が現れた。牧歌的な街並みとは対照的な優雅さ、異次元の存在感に心が高揚する。自然の山、空、海峡と人が創造したリゾートコラボの癒合は想像を超えた。

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楽しみなディナーのふぐは、なんとイタリア料理の完璧なコースに姿を変えていた。名産であるからこそ、そこに甘んじることなく創作されていく「ふく料理」。人生初めての味と食感に様々な酒たちが「待ってました」と融合してくる。吟味されたシェフとソムリエのコラボで酒は「美酒」となる。ふぐ皮をサイコロ状の煮こごりにし、全てのふぐの部位を煮込んだスープで口の中で溶かし頂く美味! ここにも、素材だけに甘えない「目的と挑戦」があった。

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多いときには一日千隻の船が潮の流れに挑むように行き交う。戦うように力強く日本列島を切り裂き、海峡の海を突き進む。その姿は逞(たくま)しく、とてつもないエネルギーを感じるとともに私を興奮させた。

数十年前、ぼんやりと見ていた日比谷線の対照的な女性たち。視線が囚われたのは、何も飾らずわが子を見つめる女性だった。彼女は子を育て上げるという未来へ挑む「勇気と目的」に満ち溢れ輝いていた。

私は、社会という大海に慣れ順応し肩書に満足し、ただ浮いているだけであった。大きな船、小さな船。「事の重さ」は様々であっても、懸命にその目的に責務を背負い突き進む! その強さが海峡を切り裂き、潮の流れまで変えてしまう。

「電車の女性」と「海峡の船」が時を超え重なった。不満ではないが、当たり前に送る日常に、どこか物足りなさを感じていたのは、この「目的、ターゲット」を忘れた自分にあったのだ!

空に浮かぶ関門橋が、「おまえならできる!」とエールを送ってくれているようだった。何でもいい……、小さくていい……。目標を立て向かう時、人生がまた少し魅力的に輝きだす。

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岸谷五朗(きしたに・ごろう)
東京都出身。1983年、大学在学中に劇団スーパー・エキセントリック・シアターに入団、舞台を中心に活動をスタート。ʼ94年に寺脇康文と共に演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成、すべての作品で演出を手がけるほか、ほとんどの作品で脚本も執筆、累計120万人の観客動員を超え、テレビ·映画でも多彩な活躍を見せる。4月からは金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS)に出演。

ジャケット¥138,600、パンツ¥64,900/ともにタリアトーレ(トレメッツオ 03-5464-1158)、シャツ¥33,000/ギ ローバー、スカーフ¥19,800/ステファノ カウ(ともにバインド ピーアール 03-6416-0441)、その他はスタイリスト私物

<<岸谷五朗さんが訪れた「リゾナーレ下関」はこちら

「アエラスタイルマガジンVOL.60 SPRING / SUMMER 2026」より転載

Photograph: Yuji Kawata(Riverta Inc)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: Taichi Nagase(VANITÈS)

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