週末の過ごし方

ウィンドー ドレッサー 谷口勝彦が、6畳ワンルームをアトリエに刷新!
豪華クリエイターが自由に部屋をデザインする「TOKYOROOMS展」が開催。

2026.04.30

ウィンドー ドレッサー 谷口勝彦が、6畳ワンルームをアトリエに刷新!<br>豪華クリエイターが自由に部屋をデザインする「TOKYOROOMS展」が開催。
谷口勝彦氏

メディアアーティストの落合陽一やお笑い芸人のくっきー!、佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)など、各界で活躍するクリエイターが、6畳の空間におのおのの世界観を表現する体験型展覧会「TOKYOROOMS展」が、東京・虎ノ門にあるTOKYO NODEにて5月17日(日)まで開催中。参加クリエイターのひとりであり、長年、バーニーズ ニューヨークのクリエイティブ部門を指揮した谷口勝彦氏と、本展の総合プロデューサーを務める町野 健氏に話を伺った。

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総合プロデューサーを務める町野 健氏(左)と谷口勝彦氏(右)

「本展は『インテリアが一番面白い』という世界観を広く伝えるための企画です。ただ、インテリアの魅力や楽しさを言葉だけで伝え切ることは難しく、極端な展示で見せる必要がありました。通常、うちのようなスタートアップの規模なら10部屋程度が相応ですし、インテリア関連の企業が部屋を作る企画はどうしても既視感がある。それでは何も変わらないと思ったので、思い切って40部屋を作ることにしたんです」(町野氏)

「40の部屋、40通りの生き方。」を主題とした本展は、会場内に広さ6畳のボックス型の空間を40個設置。「落ち着いたプロローグから始まって、クライマックスでラスボスを倒して終わるという映画的な演出を意識した」と町野氏が語るように、巧妙に計算された動線と部屋の配置が、ストーリー性をかき立てる。物語が動きはじめる “心の揺らぎ”を意識したゾーンの一番手を託されたのが、本誌でもおなじみのウィンドードレッサー、谷口勝彦氏だ。

「谷口さんには、インテリアコーディネートというより、6畳の中で自由に表現したらどんなものが生まれるのか? インテリアの枠組みを飛び越えるようなぶっ飛んだものを期待しました」(町野氏)

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谷口氏の手書きのラフスケッチ。

「師匠のサイモン・ドゥーナンと、彼のパートナーである陶芸作家、ジョナサン・アドラー、それにミューラル アーティストのジョン=ポール・フィリピやイラストレーターのソリマチアキラさんなど、もちろんほかにもたくさんいるのですが、私がこれまで関わってきた人たちへの思いであったり、オマージュがコンセプトになっています。彼らから直接的にインスピレーションを受けるし、そこから妄想したり、アイデアをひらめいたりするためのアトリエ兼ラボラトリーです」(谷口氏)

「シンプルで静謐(せいひつ)なインテリアがトレンドなら、逆行したくなるんです」と語るように、部屋の中には谷口氏のパーソナルな記憶が刻まれた雑貨や小物類が雑然と並ぶ。なかでもひときわ目を引くのが、ワンルームに異形の存在感を放つマネキンである。

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マルセル・デュシャンの作品『ボトルラック』について説明する谷口氏。1940年代、フランスの家庭ではどこにでもあった日用品をモチーフにしたアート『レディメイド』の代表的作品である。
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本文内でも紹介したマネキンがこちら。ボディには、谷口氏の師であるサイモン・ドゥーナンの著作『コンフェッション・オブ・ア・ウィンドウドレッサー』の書き出しの一節が貼られている。また、各パーツを繋ぐ軟鉄のバンドは、日本屈指の“金物の町”燕三条で製作したオリジナルパーツを使用。

「サイモンがアメリカの『INTERVIE』誌に依頼されて作った、マルセル・デュシャンを彼なりに解釈したオブジェを再現いたしました。93年だからLGBTQって言葉すらなかったはずですが、ボディが男性、手足のパーツは女性と男性が組み合わせてあったり、足には、人工的な美意識を尊ぶクィアカルチャーの概念“CAMP”(注:1)について、サイモン流に解釈した定義が記されています。サイモンは、33年も前にこんなものを作っていたんだから、まさしく“今”の感性ですよね」(谷口氏)

マネキンの頭部にかぶせられた鉄製のオブジェは、1941年にデュシャンが発表した作品『ボトルラック』のオマージュとして、谷口氏が近所の園芸店で格安で購入したアンティークを再利用したもの。大量生産された既製品をアートのモチーフにした『レディメイド』の代表的作品ではあるが、谷口氏は遊び心を添えて、こっそり自身のサインを入れたという。あえて日用品も用いることで“無関心性”や“好悪の欠如”を表現したアートピースに、文脈から外れた付加価値と記号性を加味するあたりに谷口氏らしいユーモアがうかがえる。こうしたアイロニカルなセンスや独自の視点は、ものづくりにおける谷口氏の真骨頂であり、かつて修行時代に培われたものだと回想する。

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大判のドロッピングアートは谷口さんが描いたもの。「(ジャクソン・)ポロックを意識したなんて言ったら怒られそうだな(笑)」。実際には、別の場所で制作したものを運び入れているが、アトリエの空気感を再現するために、部屋の床や壁にもインクが飛び散っている。

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谷口氏が座っているのが、デンマークの家具ブランド「マスプロダクションズ」の『4PM』という商品。寸法や図解が載ったマニュアル自体が商品で、購入者はそれを基に素材や色などを考え、DIYで作り上げる。
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    『4PM』のマニュアルには、こうしたピクトグラムが手順の一部として掲載されている。ちなみに、谷口氏は今回、ラーチ合板で制作。
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    キャンバスに見立てたファブリックを留めるパーツにもドロッピングの痕跡が意図的に演出されている。

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絞り染めのラグは、「川島織物セルコン」が協力したオリジナル品。谷口氏が15年前に仕事で関わった同社の熟練職人たちが、今回の展示のために再集結したという。

「英語もできないのに91年に初めてニューヨークを訪れて、カルチャーショックを受けました。50人以上いるチームのほとんどがセクシャルマイノリティの人たちだったのですが、皆さんにすごくかわいがってもらいましたね。そこで働いているスタッフ全員『好きだから、この仕事をやっているんだ』って強い信念を持った連中が集まっていて、それぞれの生き方も含めてすごく刺激をもらいました。でも、そういう貴重な体験がなければ、ものづくりの過程でデニムを使うならヒッピーについて調べようとか、タイダイ柄をイチから自分で染めようっていう発想にはたどり着かなかったでしょうね」

“心揺さぶられる”空間を期待して谷口氏に依頼した町野氏も、その独創性にも思わず舌を巻く。

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写真中央の人形は、バーニーズ・ニューヨーク福岡店のウィンドーを彩ったソリマチアキラ氏のイラストを立体化した作品。右側の男性は谷口氏がモデルとなっている。

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小物などを収納した段ボール製のラックも本展のために制作したオリジナル品。フォークリフトのパレットや被災地の簡易ベッドなどに用いられる高い強度を備えており、リサイクルも可能。
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    バーニーズ・ニューヨークのクリエイティブ・ディレクターを務めたサイモン・ドゥーナンの仕事を紹介した作品集。谷口氏が手がけたウィンドー ディスプレイが、ニューヨーク本店の作品として誤って掲載されているのだとか。「これって、横浜店だよなって後から気付いたんです(笑)」(谷口氏)
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    サイモン・ドゥーナンの著書『ワッキー・チックス』(青土社)。ニューヨークで暮らすエキセントリックかつたくましい女性たちを取材したインタビュー集で、パーティプロデューサーであり、LGBTQコミュニティのアイコン的存在、スザンヌ・バーチなどが紹介されている。

「こういった発想は、まずインテリア業界からは出てこないと思いますね(笑)。部屋を作るとなって、テレビをどこに置こうかなんて、もはやどうでもいいというか。結局、おしゃれかどうかってあまり重要じゃないんですよ。昔は周りがどう見るかが基準だったけど、今は自分がいいと思うかっていう時代なんです。谷口さんが作った部屋って、お金をかけたからいいってものではないのが証明されているんですよね」(町野氏)

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アメリカ版『VOGUE』編集長アナ・ウィンターがお墨付きを与えたことで一躍有名になったドールアーティスト、アンドリュー・ヤンの作品。谷口氏をイメージした人形が着用しているジャケットは、実際に着ていたラングラー製アイテムをミニマルサイズに仕上げた。

谷口氏が主戦場とするウィンドーディスプレイは、街行く人々の足を止め、いかにより多くの関心を持たせるかが重要だ。対して、部屋は極めて個人的な空間であるゆえに、他者に見せることを前提としない。今回、部屋をデザインするうえでどんなことを意識したのだろうか。

「例えば、ファインアートの作家や建築家が、最初に描くエスキス(※フランス語で下書きやラフスケッチのこと)ってありますよね。なんとも言えない線の強弱の筆致というか、それを描くときの本人の状態ってすごくリラックスしていると思うんです。シャープで洗練されたものではなく、普段着というか、気張っていない状態。人間って誰しも素の状態があるから、一見ミスマッチに思うようなものが混在していたり、雑然とした空間にその人なりのムードや雰囲気が出るんですよね。そういう状況をこの部屋では表現しました。 だから訪れる人にもあまり構えないで気軽に見てほしいですね。好きか嫌いかは鑑賞者に委ねるというか。『なんだ、これ?』って思ってもらえればいいかなって」(谷口氏)

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手を模したオブジェは、陶芸作家のジョナサン・アドラーによる作品。ほかにも、シューズデザイナーのマノロ・ブラニク直筆のイラストあしらったピローなど、谷口氏思い出のアイテムが、数多く並べられている。

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誕生50周年を記念して作られたスペシャルなバービー人形は、ジョナサン・アドラーがデザインしたもの。

来場者に自由に感じてほしいという願いは、主催者である町野氏も同じだ。

「それぞれの部屋に足を踏み入れたときの気持ちの変容を感じてほしいですね。どの部屋も違うから好き嫌いがあっていいんですよ。今まで気づかなかったけど意外とこういう部屋が好きなんだなとか、自分の好きって概念って固定的だったんだなとか、そういうのを感じてもらえるとうれしいですね。インテリアって楽しいんだとか、自分の部屋はこう変えたいなって友達同士で話すとか、見て終わるっていうより、何かしら行動変容を促せたらと思います」

ウィンドーディスプレイの世界において、谷口氏は紛れもない先駆者である。一方、町野氏は、インテリア業界の異端者であり、その視線の先には、未来が見据えられている。

「弊社のミッションとして、“インテリアの世界を変える。インテリアで世界を変える。”を掲げています。例えば、受発注のシステムなど、古い慣習が根強く残っている業界なので、DX化の遅れによる過重労働は社会問題にもなっています。日本にフリーのインテリアコーディネーターって6万人ほどいるのですが、十分に稼げている人って恐らく1000人にも満たない。それは業者と契約してないと受発注もできないっていう縛りも理由のひとつです。弊社は、日本最大級の家具の受発注プラットフォームを持っており、旧弊な縛りから解放してみんなが稼げるようになれば、日本のインテリアのレベルも自然と上がる。それは、インテリアの世界を内部から変えることにつながります。また、インテリアで世界を変えるという点では、お金のあるなし関係なく、『部屋にこだわることが一番のトレンド』って思われるような世界を目指しています。そのためには規格外なことに挑戦することが、スタートアップであるわれわれのミッション。このイベントくらい振り切らないと何も起きないですから」(町野氏)

注1:誇張されたものや、大げさで様式化された人工的な美意識を愛する態度・スタイルを指す。クィアカルチャー(性的マイノリティの文化)の中で育まれたもので、主流的な社会規範をパロディ化することで、社会的な生きづらさを笑い飛ばすユーモアを内包する。

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TOKYOROOMS展 〜40の部屋、40通りの生き方〜

会期:4/18(土)〜5/17(日)
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C 東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45F
観覧料:一般 1900円、小人(3歳〜小学生) 950円 ※2歳以下は無料です ※こどもの日(5月5日)限定で、小人は無料になります。 ※障がい者手帳をお持ちの方とその介助者(1名まで)は無料です。
主催:株式会社ソーシャルインテリア
オンラインチケットサイト:https://artsticker.app/events/105971
特設サイト:https://subsclife.com/tokyorooms/exhibition

Photograph: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
Text:Tetsuya Sato

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