週末の過ごし方
80s&90sのヒップホップカルチャー
コミカルデバイスでよみがえる
【センスの因数分解】
2026.07.27
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
「昔は音楽の志向によっていろいろなデザインがありました。そのおもしろさが僕は今でも好きなんですよね」
下嶋一洋さんは、ずらりと並んだポータブルカセットプレイヤーを前に話を始めました。彼は1980〜90年代のデバイスをリペアし「コミカルデバイス」と名づけ現代によみがえらせる、Stabilityというレーベルを立ち上げています。
「かつてアウトドアブランドで働いていたんですが、自分の個性を抑えながら仕事をすることに疑問を持ち、会社を辞めたんです。その後いろいろと模索しているときに、ふと昔愛用していたショックウェーブで音楽を聴きたいと思ったんです」
パナソニックのショックウェーブはG-ショックに通じるデザインテイストで、当時ストリートカルチャーに心酔していた下嶋さんは常にこれで音楽を聴いていました。「フリマサイトで見つけましたが、ちゃんと作動しないものばかり。けれど修理方法が動画でアップされていたんです。それで“いけるかも”と、6台購入しました」
動画を参考に修理したら、無事に作動。しかしそんなに数はいらないからと販売してみると、すぐに買い手がついたのです。
「これは誰かの役に立っているということだな、と考え、もう少し遊びの延長でやってみようと思いました。まず3台分の売上で仕入れをしたんです。集まってきたものをまた直して、また集めてくるを繰り返しました。そしてどんどん種類を増やしていったんです」
それをまたフリマサイトで販売しながら「もっと攻めの姿勢でいきたい」と、週末にポップアップでの販売をスタート。2024年には年間45回と、ほぼ毎週対面での販売を続けたそうです。
「外からのデータではなく、自ら行動した経験値や数字をもとに企業さんとつながったところで、会場数を絞って(出店)期間を延ばしました。場所を借りて10日間から2週間という形にシフトしたんです。そうすると、いろいろな人とつながりはじめたんです」
現場で知り合ったPR会社へのプロモーション委託が実現し、取材のオファーをもらえるようになりました。「コネは使わず、自分で人脈を広げること」がポリシーという下嶋さん。強い個性を放つStabilityのコミカルデバイスは、今やラグジュアリーブランドのクリエイティブ・ディレクターをするミュージシャンのような、世界のセレブリティにまで届いている!とか。
「僕は若い頃、ストリートカルチャーに心酔していました。コミカルデバイスは、1990年代のカルチャーがベースとなりますが、自分の価値とは何かと考えたとき、その当時に勉強もせずにスケボーをしていたことだと思ったんです。ストリートカルチャーの原点をリアルに体現したことは、唯一の財産だと感じています」
時を忘れて夢中になった経験こそが強みで財産。ビジネスパーソンの基本ながらつい忘れてしまいそうな真実を、「Stability流家元」は、コミカルデバイスで伝えます。