週末の過ごし方
東京から約1時間。ディナーのために軽井沢へ向かう、大人の逃避行
2026.07.29
金曜の夕方、東京駅から北陸新幹線に乗る。約1時間後には、軽井沢に着いている。
目的は観光でも、ショッピングでもなく、一軒のレストランで夕食を味わうこと。意識しなければ余白が生まれないこの時代には、そんなぜいたくなひとときこそが、いまの大人に必要だから。
森の中に生まれた、新たな目的地
森に抱かれるようにたたずむグランメゾン「L'inflexion(ランフレクション)」は、2025年のプレオープンを経て、この春グランドオープンを迎えた。
店名の「L'inflexion」は、フランス語で「抑揚」を意味する。柏木暢介シェフが目指すのは、ひと皿ごとの強弱を積み重ね、コース全体で心地よい余韻を描くこと。フランスでの経験を経てたどり着いたのは、日本料理が育んできた五味や五色といった美意識を、フランス料理の技法で表現するという考え方だった。
軽井沢という土地を味わう
コースの序盤に供された「蕎麦 鼈」は、すっぽんの澄んだだしに、そばや山芋を重ねた穏やかな味わい。メニュー名から想像できない一品に、ふたを開けた瞬間驚きが広がる。
続く「根野菜 実野菜 葉野菜」は、この店を象徴する料理。軽井沢の畑を思わせる器の中には、フレッシュなもの含め、それぞれ異なる火入れを施した野菜が重なり、寒暖差の大きな土地が育んだ力強さを感じさせる。
メインの「特産松阪牛 葉玉葱」は、肉のうま味を真っすぐに味わうためのひと皿。香りを添えるソースと、付け合わせも控えめ。その潔さにシェフのストイックさを感じられる。
コースの締めは目にも軽やかな「さくらんぼ 西洋夏雪草」。軽快な余韻が、ディナーをやさしく閉じていく。
また、この夜を過ごしたくなる
森に包まれた店内で過ごすうち、いつのまにかスマホを手に取る回数が減っていく。せっかくなら通知や情報から少し離れ、つかの間の逃避行に身をゆだねたい。メニュー名からは想像できないサプライズ続きのコースは、次は何が登場するのだろうと考える時間さえ楽しい。
「おいしかった。また来たい」。柏木シェフは、それだけ思ってもらえれば十分だと言う。
料理だけではなく、森へ向かう時間も、静けさに満ちた空間も、食後の余韻も含めて、このレストランの体験なのだろう。週末、新幹線に乗ってディナーへ向かう。軽井沢には、そんな新しい目的地が生まれていた。
L'inflexion(ランフレクション)
住所/長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1203-6
北陸新幹線・軽井沢駅から徒歩約12分(約900m)。東京駅から軽井沢駅まで最速約60〜70分
電話/0267-46-9955(完全予約制)
営業/ランチは「L'inf-tech(ランフテック)」として営業 11:30〜14:00(L.O.12:30)、ディナー 17:30〜21:30(料理L.O.19:00)
定休日/水曜ほか不定休(休業日は公式サイトのニュース欄にて告知)
席数/42席(個室5〜10名・個室料無料)
料金/ディナーコース ¥29,700〜(別途サービス料10%)
予約/https://linflexion.com/
Instagram/@linflexion.official
※電話番号・営業時間・定休日などは取材時点の情報です。掲載前に店舗公式サイト等で最終確認をお願いします
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text: Isme Akamatsu